第1回 新ブログ「数字が語る事業の潮時、変わり時」 始めます
2020年7月31日
(はじめに)
不透明な先行きを出来る限り予測し、その上で、日々起こる現象から「予測」を柔軟に変更して誤りのない針路を見付ける必要があります。
コロナと付き合いながら感染を避けつつ、時代の先行きからブレないように舵取りすることが重要です。そのためのお役に少しでも立てば何よりと思っています。
Q:では、どのような点に気を付ければ良いのでしょうか
A:大事なことは経済の動きです。この動きがすべてを動かします。政治も経済に連れて動きます。
事業の先行きを見るためには経済がどう変わってゆくかを身近なところから材料を拾ってご自分の頭で考え、先を見極めることに慣れることです。
その際注意しなければならない点は、他人の情報を鵜呑みにしないことです。国がこう言った、大新聞がこう書いてた、大学のエライ先生がこうおっしゃっていた、著名な文化人や評論家さんがTVでこう言った、などです。「他人の見解や評論」を先に立てるとすべてその色に染まってしまいます。
上記の情報発信される方々には色んな立場があり、その立場は外国を含む政治的な影響のもとにある場合もあります。
Q:では、そのためには何をよりどころにすれば良いのでしょうか。
A:事実か事実でないか、それだけです。事実は数字で示されることが多いです。また映像でも見れます。これらには「概ね」ウソはないでしょう。
なかなか我々庶民は報道や意見の裏づけになる事実を知るには限界があります。それでもエライ人達が仰ることが「事実でないかもしれない、事実からズレているのでは」との疑問を持つことです。新聞もTVも雑誌の記事も他人が書いたことは鵜呑みにしないことです。
今ハッキリしていることは、コロナの補償や給付金などで国も地方も財政が厳しいし、これからも厳しくなることです。これは「事実」です。給付金などの補償額の総額は新聞でも読み取れます。そうすると、こうなれば、次はどうなる?ココが考えどころです。
これから一緒に先行きをみて予測してゆきましょう。
<チェックリスト>
□コロナ対策の補償額は国の予算と比べてどれくらいの規模でしょうか
□地元の府県についても同じように比べましょう
□財源は何処から出されるのでしょうか
□国の借金はGDPの何倍ですか、このことでどんな影響が出てくるのでしょうか
第2回 足もとも見ましょう
2020年8月3日
気を付けたいニュース・・・事実
1、アメリカのGDPが過去最大のマイナス32.9%減→米国での失業者増と日本への影響
2、日本の4-6月期決算は赤字拡大又は減益→雇用の流動化(配置転換や早期退職)
以上の事実から銀行の対応がどうなるのかが気になります。
現在はコロナ対応で資金が行き渡っていますが、これから先において収入減が原因でのマンションなどの個人ローンの滞留と事業者事業会社の返済猶予の要請が増加するとみられます。
今年のどこかで、銀行融資が厳しくなると予測して対応を考えることが大事です。
するべき準備
□粗利益の月別予測をするための売上の控えめな予測
□現状での固定費の月別支出額の算出
□借入金の月別返済額(元利合計)の把握
□以上から資金が何月まで回るのかの予測
□法人税の予定申告、所得税の予定納税や消費税の中間納付額が予測から洩れておれば慌てることになります。注意しましょう。
□決算期を迎えた法人では貸倒引当金の個別評価による繰入を試みます。
□売掛金のすべてにつき回収速度の見直しをします。
以上の検討結果を実際にエクセルに入れたり、ノートに丁寧に書き込むことが重要です。経営者は頭の回転が速いのでクルクルと数字を頭の中だけで回すことで、分っているとの境地に立ってしまいますが、丁寧に我が社の数字を地を這うように、泥臭く整理するほどに見えていなかった点が見えるかもしれません。
<次回予告>
一旦考えを底の底まで巡らせ、もう打つ手がない、ところに行くことです。そこへ行き着かないママ、頭の良い人ほど特に手を打つことをされない場合があります。
あまり先まで見るだけで行動できない、を避けるため、例えは失礼ですが、犬が道を行くときに目の前だけを見て歩くように、時にはこのように目の前だけを見ることも重要です。そこで何に気付くかです。
第3回 現金を生むチカラがありますか
2020年8月4日
足もとをみる場合に一番見るべき点はお分かりですね。キャッシュです。
今あるキャッシュのルーツは何処でしょうか?1、過去の売上から仕入れや諸費用を引いた「利益」である場合が多いでしよう。中には2、最近の給付金や公庫などからの借入金が目の前の現金のモトである場合もあるかもしれません。
1だけが事業継続のチカラです。2はあくまでも一時しのぎでありコロナでの借入金はやがて返済しなければなりません。
1の事業継続のチカラを測定してみましょう。
算式で見てみましょう。
なお下の算式での<前月以前に生じた売掛金・未収入金>のうち滞留している不良債権はないものと考えます。
「或る月の売上高+前月以前に生じた売掛金・未収入金ー或る月の仕入高ー前月以前に生じた買掛金・未払金ーその月の人件費・賃借料・その他の固定費ーその月に返済する借入金・利息=?」
(算式の説明)
?がプラスになればOKです。マイナスであれば事業の継続に赤信号が灯っているとお考え下さい。
売上高と前月以前の売掛金・未収金の合計額がこの算式の答を決めます。
この答えがプラスになりそうもないなら、売上の中味を変えたり(新しい商品やサービス)される対策の道があればともかく、それができないなら近いうちに事業を停止することの決断をされることです。事業を停止するとは破産に追い込まれないうちに自分の手でゴールに行くことです。これにも計画と時間が要ります。決断がなければ瞬く間に数年が経ってしまいます。
オリンピックから万博という時期が50年前にありました。今もメディアや行政がオリンピックや万博のプランを宣伝していますが、時代は全く違います。日本経済が力強く昇り龍のように上向いた時代ではありません。アジアの国々にも後れを取るだけでなく良いところを持って行かれるばかりで勢いはありません。
現実を見ての決断が大事です。
<次回予告>
決断するにはもう一つの要素があります。事業を閉じたら幾らの金額が残るのか、残らないのか、そこに税金がかかるならいくらか、あたりまで見る必要があります。
第4回 目の前を見るとともに、これまでの積重なりの結果も見ましょう
2020年8月5日
目の前の現金が何処から流れてきて何処へ行くのかは前回の算式で流れが見えます。この結果がプラスであるからといってそこで検討をやめてしまうことは良くありません。
また算式の結果がマイナスでも落胆されることはありません。事業の継続に赤信号が灯っているだけであり、急に事態が悪くなるのでもありません。
青信号の場合は当面はキャッシュが回るという意味です。赤信号の場合はその逆です。では「当面」ではなくもっと継続して強靭にキャッシュが回り、さらに増えてゆくのか、逆にキャッシュ不足でドンドン追い込まれてゆくのか当面を突き抜けた先の姿を知る必要があります。
(試算表と決算書!!なくても分かる方法!)
この時に試算表と決算書を使います。試算表は月々作成されるものですが、現実はこれがナカナカで「試算表?なにソレ?」とおっしゃるかたや「税理士が作ってくれない。作ってくれても見方が分からないから保存だけしている」というかたが多いのです。
それでも構いません。「自分で試算表の近いものをおつくりになる方法」をお示しします。なお、税理士さんに依頼しているが遅いばあいはその理由を考えましょう。まず考えられるのは遅い原因があなたや会社側にある場合が結構あります。
試算表を税理士事務所が作成するための経理資料が遅れているからです。この原因は経理システムが古臭いままである場合やPC会計を採用されていても無駄な手順が多く結局手間がかかっている場合が多いです。
社長さんから、経営の相談を受けた時、ウチの税理士は仕事が遅いと愚痴を聞かされる場合がありますが、多くはその原因が税理士にはなく会社や事業者にあります。実際に現場に切り込んで改善を提案してくれる税理士さんもおられますが、少ないです。
顧問料が定期に入ってくるから切り込んでゆかない税理士事務所もあります。また「外部からウチの経理の内部にまで切り込んでくれるな」との会社や事業者もあります。
その場合は、原因は社長ではなく会社の経理係にあります。自分の仕事にくちばしを入れられ省力化されることが困るのです。自分の立場がなくなるかもしれないからです。経理にうとい社長はそこで引き下がります。
<次回予告>
「自分で試算表に近いものをおつくりになる方法」はこのような社長さんのためワカリヤスク説明します。
第5回 試算表の代わりに事業や会社の棚卸をしてみる
2020年8月6日
試算表の示す数字に惑わされないためにも、ご自分の手であたかも棚卸をするように資産負債を調べてゆきます。
会計事務所から試算表がなかなか来ないなどとおしゃっている間に事業の事態は急速に悪化しているかもしれません。
これからご説明する方法で事業を解剖するような気持で大ナタを振るいましょう。その結果事業を閉じたら幾らの金額が残るのか、残らないのか、さらにそこへ税金が追い打ちをかけるのか、などを考えるための手掛かりができます。
(手 順)
営業をされると資金が循環します。この循環に沿って、ご自分が一緒に歩いているように冷静に景色を見ながらメモしてゆかれるのが良いでしょう。
営業循環の過程は下の通りです。
1、手許現金→2、仕入(買掛金の発生)→3、在庫→4、営業活動の諸経費支払→5、販売の約束が取れた(売掛金の発生)→6、在庫品の納品→7、売掛金の集金→8、仕入代金(買掛金)の支払→9、諸経費の支払→10、人件費の支払→11、源泉税や法定福利費の支払⇒再び2、仕入(買掛金の発生)へ
この流れに沿って次の順序で腰を据えてご自分の手で確認してゆきます。
社長さんはイロイロお忙しいからこのような「作業」は面白くないかもしれませんが「神は細部におられる」の例えのように、普段は見えない意外な発見がある場合が多いです。
こんな(無駄な)ことをしていたのか、と慨嘆される場合が結構あります。商売のセンスがある方ほどこの落差が大きいです。まずやって見られることです。
チェックリストにします。
□ア:現金や預金の残高を確かめます。金銭出納帳の帳尻と金庫の通貨は合っていますか。
□イ:在庫品の数量を調べます。この時、規格落ちや劣化して、とても売れないモノは数量から外します。そのあと最近の仕入単価を数量に乗じます。
□ウ:売掛金の確認をします。貴社発行の納品書と請求書(鑑)を使います。前日までの入金があったものは残高は残りませんが、数か月も入金がないままの売掛金は要注意です。支払いの催促をしなければなりません。相手先に乗り込むことも必要です。どうしても回収できそうにない部分の金額は残高に加えないで「特設ポスト」を作って別に対応を考えましょう。状況によっては債権放棄も考えなければならないかもしれません。払いが悪い得意先を作らないために約束はきちんと守ってもらいましょう。これからはこのような約束が守れない得意先が多い事業体は資金難に陥ります。甘いカオ、ヌルイ態度は厳禁です。これらが不良得意先を生む元です。
□エ:買掛金についてもきちんと約束通り支払われているか残高と先方からの請求書と突合せしましょう。
□オ:未払金は継続的な仕入とは別の非継続のモノの購入代金やサービスの代金でまだ支払期日が到来していないものです。自動車を修理してもらった代金などが例です。これも先方からの請求書又は納品書の束を確認して集計します。
□カ:社会保険料などの事業者負担分や給与源泉税の未払額を確認します。
<次回予告>
営業循環に添った手順は以上のとおりですが循環以外の資産や負債を調べる場面に入ります。
第6回 事業の棚卸をして何が見えてくるか
2020年8月7日
(営業循環の範囲外の勘定科目についての棚卸)
手許に試算表がなくても法人税や所得税の申告で前期の決算書がありますから、ここではそれを見て手掛かりにします。
□流動資産の部には、前回に挙げた科目以外の科目があります。仮払金や前払金です。これらには支払う根拠が手許に伝票や契約書の形で存在するはずです。その根拠書類がすぐわかるところにあることが重要です。誰の指示でどこに支払ったのかもわからない、探さないと分からないのは失格です。
現金出納帳や預金の支払欄を遡れば買掛金の支払先ではない名前が出てくると、その証憑を見ることでヒットします。
□このほかは固定資産です。固定資産台帳の番号通りに実在しているのか一々当たることです。現場に機械があるのに固定資産台帳にないものがあれば原因を調べましょう。
リース物件であれば貴社の所有ではありませんから固定資産台帳には載りません。又は中古品で30万円未満のため消耗品費で処理した場合も固定資産台帳に載りません。また除却したものの未処分で工場に置いている場合は、除却した場合に固定資産台帳から削除したならこのような不一致が出ます。
上記と逆に固定資産台帳に載っているのに機械が実在しない場合はどう考えますか。機械を除却したり売却して固定資産台帳から削除し忘れた場合もあるかもしれません。最悪は内部での「機械の横流し」です。
ともあれ実在と固定資産台帳とはリースなどの例外を除いてきちっと数を合わせておきましょう。
□投資有価証券や生命保険掛金などが前期の決算書にあれば証券を確認します。
以上で資産の部が網羅的に調べられたことになります。
この目的は「事業継続の可否」を確かめるためですから固定資産には時価をつける必要があります。時価とは売却可能額です。凡そで良いです。電話加入権などは回線1本5千円またはあっさりとゼロにしておきましょう。
<予 告>
来週はお盆休みに入りますので休載させていただきます。8月17日から再開します。
第7回 このブログが対象とする人々とは
2020年8月17日
(改めてごあいさつ代わりに書かせていただきます)
コロナ以降、銀座の有名店舗の売却が多くなっていることが報道されるように、急激な変化が我々の周りに押し寄せてきています。人間の智恵のはからいが限界を見せ、欲望に支配された経済が自然に回帰しようとするかの様相を示しているように見えます。
金融資本の支援で自己の力量以上に与えられた資金の水増し部分が急激に等身大に縮小してゆきます。目の前に資金が多く供給されたために「地力以上の勝負」に出たものの、大きな動きの中で縮小を余儀なくされてゆきます。われわれは、この波の中にいます。
運、不運もあるかもしれませんが、これまでと同じようにしていたら「ズレ」がでてきます。このズレがさらに大きくなって取り返しがつかないところまで行くばあいと、ズレが小さいうちに大けがにならないように収まってゆく場合に分かれます。
経理を軽視し、周りのおだてを真に受け、自己の力を過大評価して、大きく見せるゲームに終止符を打つ時期です。世間やメディアは逆のことを言うでしょう。煽るでしょう。そこは自分のアタマで答えをだす習慣の人はピンときて方向転換をされますが、そうでない人は「行き詰まりの谷」に降りてゆかざるをえません。
谷の底には「事業解体場」があります。事業を切り刻んで、内臓の腑分けをし、カネになる部分を切り売りし、ガラはハイエナのエサになります。特別な技術を持たない中小零細企業は処分価値すら出ないかもしれません。もう二度と谷から這い上がることはできません。
(経理が示す計数を軽視しないで、事実を見ていただきたいです)
しっかりご自分の事業の「事実」を見て下さい。生かせる部分、殺さなければならない部分、縮小して生き延びる方法があるのか、意思決定の大部分を占めるのは借入金の始末でしょう。死ぬまで生きてゆかなければなりません。生きるための最小限は残せますか、それすら危ういことはありませんか。
正しい数字が示す「声なき声」を聴き取り、目に見えないものを見、耳に聞こえない音を貴重な情報として掴みましょう。それはフェイクかもしれない外部情報ではなく、内部からの事実の情報です。その貴重な内部情報を経理軽視で歪めて使い物にならないほどブレさせたのは誰でしょうか。
今からでも事実を見ましょう。
(このブログを読んでいただきたい人々)
・事業がトコトン行きずまって、やめるにやめられない段階の前の段階におられるかた。
・年齢を重ねられ、気力や体力はあるものの、後継者がまだ決まっていないかた
・後継者不在で事業の縮小ないし整理を検討されておられるかた
・自分の死後のモメごとがないようにしたい(相続税も含めて)かた
・終局段階においての税法の有利な適用を知りたいかた
おおむね上記の人々に少しでもお役に立てば幸いと思い、これまでの実例に当たってきた体験を参考に記します。
<次回予告>
これまでの運営で事業に付着したブレ、サビに気付くことから事実の解明が始まります。8月7日の続きで負債の調べに入ります。