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これから起こること・・『税金が払えません』&『課税処分に?です』 the Final Stage

第1回 国税庁の統計情報が示すこと

2018年5月7日

 国税庁のホームページでは税務統計を開示しています。平成28年度(28年4月から29年3月末まで)が最新の統計です。国税の滞納に関するデータによりますと28年度の新規滞納税額は6千2百20億9千800万円で、税金の種類ごとに順位づけしますと、次のようになります。

 

1、消費税 3758億1千400万円(547,066件)1件当たり平均滞納額687千円 総滞納額に占める割合60.4%(木村計算)

2、所得税 1166億9千9百万円(564,396件)1件当たり平均滞納額206千円 総滞納額に占める割合18.7%(同 上)

 

 3位以下は源泉所得税や法人税などです。

詳しくは国税庁HPwww.nta.go.jp→刊行物等→統計情報→(各国税局ではなく)国税庁→4、国税徴収・国税滞納・還付金の平成28年HTMLをクリックしますと2、国税滞納のPDFをクリックしますと<17>で滞納データを見ることができます。

 

 次の<18>では「還付金」の28年度(28年4月から29年3月まで)の支払い状況が示されています。

還付金の総額は9兆7千5百62億8千8千6百万円で、滞納額よりも一桁多い金額です。

 

税金種類別の還付金ランキングは以下の通りです。

 

1、消費税   5兆6706億3千万円    総還付税額に占める割合58.1%(木村の計算による。以下同じ)

2、源泉所得税 2兆756億4千4百万円      同   上   21.2%

3、法人税   1兆6591億5千9百万円     同   上   17.0%

4、申告所得税  1649億8千6百万円     同   上    1.6%

 

以上の統計が示す事実は滞納税金の6割が消費税であるとともに、還付金の6割近くも消費税であるということです。

払えない人が多い税金が消費税であり、還付される税金もトップは消費税です

そういう意味では統計上であるとしても「ド派手」な税金です。

 

この意味を考えてゆきます。

第2回 国税庁 滞納・還付情報を読む

2018年5月8日

 これからはQ&Aのかたちで進めてゆきます。

これまでと同じように、できるだけワカリヤスク、専門用語は最小限にとどめ、使用する場合は(注)などで補足したいと思います。

 

では始めます。

 

 

Q:滞納税金で消費税が全体の6割であるのは、どのような理由なのでしょうか。

 

A:これは消費税の性格によるところが多いのではないかと考えます。申告所得税や法人税は赤字の場合は納税がありません。しかし消費税の税額は決算が黒字であることや赤字であることとは関係しません。

 

法人税や所得税で決算が赤字の場合は資金も乏しいと考えられます。しかし赤字ゆえに納税がありませんので、滞納にはなりにくいのです。一般に、赤字=資金も乏しい=納税なし、です。

 

ところが消費税は決算書の利益や損失に関係なく、預かった消費税>支払った消費税の場合は差額を収めなければなりません。

仮に以下の決算書の会社を例にして考えましょう。

 

損益計算書

 売上    1000・・・・すべて消費税がかかる売上で税抜き金額とします

 商品仕入   600・・・・すべて消費税がかかっています。税抜きです

 人件費    400

 税金・保険料 100

 減価償却費  100

 雑費     100・・・すべて消費税がかかっています。税抜きです。

 差引    △300(1000-600-400-100-100-100)=△300

 

所得税や法人税では300の赤字ですから課税はありません。

 

消費税はどうなるのでしょうか

(消費税の簡便:わかりやすくした計算式)

 

売上1000×0.08=80

(仕入600+雑費100)×0.08=56

消費税納税額=80-56=24

 

人件費、税金・保険料、減価償却費は消費税の計算では控除されないのです。

 

ですから300の赤字であっても24だけ納税しなくてはなりません。

 

その上、キャッシュフローを考えてましょう。

売上も仕入も現金取引きの場合は、

現金の流れは、下のようになります。

 

入金:売上 1000

出金:商品仕入れ600+人件費400+税金・保険料100+雑費100=1,200(減価償却費は摩耗分ですから資金の支出はありません)

現金不足 1000-1200=△200

 

上の例は売上も仕入も現金取引の場合です。これが売上の回収が60日後で、仕入れの支払が30日後という条件でしたら、もっと資は不足します。

 

そこへ決算後2ケ月目に現金で消費税を納めなければなりません。

現金がないところへ消費税の納税が追っかけてくるのです。

 

上記の例では、借入金の返済のことには触れていませんが、ここで入金がありますと、消費税の納税よりも借入金の返済にお金を回すことになります。その結果、消費税は未納になり、延滞税が課されることになります。

 

こうして滞納消費税が根雪のように固定してゆきます。

第3回 消費税の還付がダントツであるわけ

2018年5月9日

Q:国税庁の統計で、還付金の税金別内訳で、消費税の還付が一番多いのはどのような理由からですか?

 

A:それは消費税という税金の仕組みから来ています。

 

 消費税は何にでもかかるのではなく4種類に取引を分類し、そのうちの課税扱いになる取引だけに課税されます。

4種類とは課税売上、免税売上、非課税売上、対象外取引です。

 

 免税売上とは輸出によるものです。非課税とは利息収入や土地の売上、医療の売上などです。対象外とは配当金収入や損害賠償金や保険金の入金など、消費税の課税になじまないものを指します。

 

消費税の計算方法は幹だけを取り出しますと下の算式で表されます。

 

ある納税義務者の取引のうち対象外取引以外を取り出します。

 

(課税売上①ー課税仕入②)×0.8+(免税売上×0%-課税仕入×0.8)+(非課税売上×0%ー課税仕入×0%)=その納税義務者が負担する消費税額

 

一番目の括弧は「お客様から預かった消費税から、自分が負担した消費税を控除した差額を示します。最もオーソドックスな納税タイプです。

 

二番目の括弧に注意しましょう。輸出売上には税率をかけますが、その税率はゼロなのです。一方、輸出品を製造するまでの国内で負担したコストにかかった消費税は控除してくれます。輸出の場合はこの算式のように常に課税仕入の8%相当額の消費税が還付される構造になっています。

 輸出の税率がゼロであるのは、輸出品は、国外で消費されるものですから日本の税金を異国の消費者に負担させることは出来ませんからゼロなのです。

 

三番目の括弧の説明をします。「非課税」では漠然としていますので、例として社会保険医療ばかりする病院を想定します。この病院の収入は非課税ですからゼロを乗じます。しかし病院は医薬品や医療機器はじめ医療用消耗品を購入する際に消費税を負担しています。これらの仕入れの消費税は控除できません。従って課税仕入×ゼロと表現されます。

 

 免税と非課税は売上には課税されませんが、仕入れ控除ができる輸出と、それができない非課税(例:病院)では前者が還付金を手にできるのに比べ、後者には還付はないのです。

 

輸出企業が日本の経済を支えている一面がありますが、そのことは多額の還付金が発生するという現象になります。統計が示しています。

第4回 滞納と還付:消費税率が上がれば格差が広がる!

2018年5月10日

Q:消費税率が8%から10%に上がった場合、滞納者と還付金を受取る者に新たな影響が出ますか?

 

A:出ます。

 なぜなら、前回までにご説明しました滞納の原因を考えれば答えは導けます。同様に、還付の場合も逆の影響がでます。消費税の仕組みを見ますと税率が上がれば上がるほど「格差」が広がると考えられます。

 

滞納の場合の影響と、還付の場合とで説明しましよう。

 

(滞納する納税者への影響)

 事業が赤字でも消費税の納税義務が生じる仕組みは説明した通りです。他に大きな理由があります。

それは「転嫁」の問題です。

 中小企業などは、取引の力関係から転嫁ができにくいのです。そこへ税率が10%になりますと、ますます転嫁しにくいです。但し請求書での表示は税抜表示ならもちろんのこと、税込表示でも消費税額が見えなければなりませんから、転嫁ができにくい場合でも税額は表示されますので、結局は売値を消費税額の分だけ下げることになります。

 

 このことは粗利益率が下がることを意味しますから、税率が上がった分だけ「利益の棄損」いわゆる「儲け損ない」が出てきます。

 

(輸出で消費税が還付される場合の影響)

 輸出の消費税の計算は

<免税売上×0%-課税仕入×8%>でした。数字を当てはめますと免税売上1000、課税仕入600としますと

<1000×0%-600×8%=△48>となりますから、48の還付収入を得ます。

 

そこへ税率が10%になりますと還付金は48から60になります。税率アップ分2%の12が、言わば増収になります。

 

このように消費税率が上がれば上がるほど滞納者は増える一方、増収になる納税義務者も出るのです。

 

 本来、消費税は消費者が税を「負担」します。納税義務者は消費者から預かって納税する役目なのですが、この段階で困難に追い込まれるグループと、増収になるグループの上下(うえした)の矛盾が現れてくるのです。

第5回 還付と納税の実態

2018年5月11日

Q:消費税率が上がれば困難にあう場合と、潤う場合があることはわかりました。実際は還付されるグループと納税の申告の比率はどのようになっているのですか。

 

A:再び国税庁の消費税の統計でみてみましょう。採用しましたデータは個人事業者を省き、法人のみです。(税務統計をご覧になられると一目瞭然ですが個人事業者の還付申告の比率は、法人よりも2桁少ないです。そのため還付の特徴を把握するには不要ですので割愛しました)

 

平成28年4月から29年3月までの年度で還付申告の税額は3兆8407億8千万円(地方消費税を除きます。以下同じ)で、納税する申告額は15兆6205億1100万円ですから、還付申告と納税申告の比率は20%対80%です。

 

これを国税局別に見てみましょう。但し国税局統計はいずれも27年4月~28年3月分です。

 

東京国税局

  還付申告額 2兆1342億7394万7千円     納税申告額 6兆9198億7709万4千円  24% 対 76%

 

大阪国税局

  還付申告額  5365億5364万8千円      納税申告額 2兆1479億8507万7千円  20% 対 80%

 

名古屋国税局

  還付申告額  5577億5688万9千円      納税申告額 1兆4928億8694万8千円  27% 対 73%

 

金沢国税局

  還付申告額   174億5001万7千円      納税申告額   2732億4595万4千円  6% 対 94%

(詳しくは国税庁統計情報をご覧ください)

 

 大阪国税局管内が全国と同じ20:80の比率ですが、東京や自動車産業が集積している名古屋局管内は還付申告の比率が高いです。税務署単位の統計があればですが、横浜や神戸などの港を所轄する税務署では消費税の税収より還付金の方が多いことも考えられます。

 

税率が今後UPするほどに、東京局や名古屋局の還付の比率は上昇してゆくと思われます。

 

 結局、消費者が負担した消費税額は、納税義務者を経由する過程で、比較的大きな企業である輸出企業には消費税が還付される反面、納税に苦慮する事業体も出てきますから、消費税は税の「自動分配機能」として働いていることが見て取れます。

第6回 滞納にならないためにすること

2018年5月14日

<先週のあらすじ>

税務統計をもとに滞納と還付についてみてゆきますと、どちらも消費税がトップであることが分かります。消費税の滞納が多い理由は、キャッシュフローの悪化が障害になっていることと、中小企業では、転嫁ができにくいことです。キャッシュフローが良くない理由には借入金の返済という現実も加わります。

 還付される消費税が法人税など他の税金より圧倒的に多い理由は、還付されるのが輸出企業であることを統計で見ました。消費税自体が税の「自動分配機能」を持っているのです。

 

Q:われわれ中小企業は上場企業のように市場から資本を調達できませんからどうしても借入金に頼らなければなりません。輸出企業が消費税では恵まれているとして輸出にはその業界のご苦労があると思います。それよりも今後、消費税率が上がってゆくことを考えれば経理の立場から、どうすれば良いのでしょうか。

 

A:対策は、各社の特質がありますので、一般的なことしか言えませんが列挙します。

 

1、資金の回収と支払いのサイクル(キャッシュサイクルといいます)の受取勘定の短縮化をはかるとともに、支払勘定の回転をゆっくりさせて、キャッシュの差で、自己金融ができるようにすること。

 

2、在庫の持ち過ぎが借入金の増加を呼び込みますから、在庫を最小限に保ち、徐々に借入金を減らしてゆきましょう。

 

3、消費税を転嫁できないゆえに売値を下げることから粗利益の低下になります。自社の得意分野を狭く設定しなおして、全社としての粗利益率を底上げしましょう。

 

4、マイナスの得意先を切りましょう。無理難題に対応していたらそれがアタリマエになります。人間の、怖いところです。

 

5、マイナスの商品、製品を切りましょう。決断が必要です。前例踏襲は今の時代にはイケマセン。

 

6、売上が下がっても耐えられるために、借入金の借方を約定弁済一本では首が締まりますから、目的によって変えましょう。

第7回 滞納した場合の先行きはどうなる

2018年5月15日

Q1:我が社の現状では、消費税の滞納が起こる可能性は否定できません。その場合はどのように進行してゆくのでしょうか?

 

A1:法定納期限までに税金を納められない場合は、ざっと以下のようになります。

1、 督促状が来ます・・・税務署に納付の相談に行くことで解決法を税務署と相談しますが、納期限までに納められないので延滞税がかけられます。

 

2、 督促状滞納処分の前提になる処分です、このあと差押されます。この手続きは、やがて換価して徴税するための強制処分です。不動産や銀行口座、売掛債権、宝石、クルマ、会員権、商標権など国税徴収法というキツイ法律差押を禁止されている財産以外は差押できます。

 

3、売掛金に差押されますと得意先からの信用は丸つぶれです在庫を差押されますと売上ができません。差押換え請求ができます。不動産への差押は登記されますから信用に影響します。

 

4、次に、換価されます。公売にかけられるのです。国税庁のホームページに「公売情報」のページがあります。毎日のように各国税局から新着物件が紹介されています。条文では「せり売」又は「入札」ですが、最近はインターネット公売というYahoo-官公庁オークションに飛びます。処分価格の参考になります。なお公売予告通知書が切られます。

 

5、必要があるときは、差押財産の調査のために財産調査がされます。状況次第ですが、不在を決め込んでも警察官2名以上の立ち合いで財産調査はできます。対象も国税徴収法で第二次納税義務が決められていますので、これを視野に入れて第3者に及ぶ場合もあります。

 

6、公売で売却されて配当計算書が作成され、一括納付されて租税債務は消滅します。処分された財産が高く売れた場合は超過額はあなたに還付されます。

 

 

Q2:納税者に救済措置はないのですか?

 

A:あります。先ほど触れました差押換えの請求のほか、換価の猶予、滞納処分の停止、その前の段階での国税通則法で納税の猶予の規定があります。

そのほか差押処分に不服がある場合は不服申立ができます。不服申立てには税務署への「再調査の請求」と国税不服審判所への「審査請求」の2種が準備されています。

 

 

Q3:納税ができない場合、相談する先は何処でしょうか。銀行は頼れますか。

 

A3:銀行はお金を借りる場合に頼れますが、借入れできなくて滞納処分に入った段階では銀行には権限がありません。銀行が好きな社長が多いですが、、残念ですね。会計事務所より銀行が信用できるのだ!会計事務所は引っ込んどれと言った社長はどうするのですかねー。

 

 

Q4:税理士さんは相談できますか。

 

A4:人によるでしょう。かなり特化した分野ですから。

第8回 得意先が滞納処分を受けて差押をされた場合

2018年5月16日

Q:得意先が、滞納処分が始まり差押をされたことを知ることは出来るのでしょうか?

 

A:ある程度はできます。

 

 もっとも納付期限までに納税が出来なかった時に、すぐ差押がされるのではありません。現実には税務署から未納である旨の通知が行き、納付相談の場が設けられます。また徴収官がその納税者の会社などに出向いて未納額の額の説明をしたり話を聞く段階があります。必要な場合は財産調査がされます。

 

 この時に逃げたり、隠したりして、きっちりと対応しない場合は悪質とみなされます。例えていえば犯人が逃げようとした場合に身柄を拘束されますが、同じように財産を押さえないと徴収できないと判断されたら差押が始まります。

 

その意味では税務署は「経済警察」なのですから、安易に考えてはイケマセン。

 

 差押は殆どの財産に対して行なうことができます。しかし差押の事実が外から見えにくい財産もあります。

一番わかりやすいのは不動産への差押です不動産登記簿に差押の記載がされますから、法務局でその得意先の不動産の登記簿を取られますと「事実」がわかります。

 

 自動車や建設機械が差押えられた場合は、自動車なら運輸局(支局)、建設機械なら法務局、小型船舶なら日本小型船舶検査機構で調べればわかります。

 

 貴社のように、売掛金が差押された場合は、債務者である相手方(貴社)に「債権差押通知書」が送られてきてその得意先に支払いをしてはいけませんと指示があります。電子記録債権の場合も、同様の記載がされます。

 

 このことで滞納した会社の信用はイッキになくなってしまいます。信用がなくなれば現金決済でないと仕入ができなくなったりして、急に資金がぴっぱくしてゆきます。

 

「税金の滞納」=「会社がつぶれる」ことではありませんが、信用をなくすと、差押されなければやって行けたのに、倒産することがあります。

 

 表面は普通に営業されてるのに内側では火の車であるわけですから、そこの情報を取ることを心がけないと貸倒→連鎖倒産になりかねません。

 

 法律上は、納税緩和の制度がありますので、各社の事情で対応されることで持ち直す場合もあります。

孫子の言うように情報を取り、敵を知って、自社の立場も認識して対応しなければなりません。

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