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事業家Qが読み解く現状と先行き

第15回 事業家QシリーズⅡ Qの立てた計画の欠陥

2019年11月7日

事業家QはEXCELで作った部門別損益計算書と大ナタ振るった後の貸借対照表を携えて講師税理士を訪問した。

 

(Qが差し出した表を見て講師税理士は以下のように述べた)

講師税理士:肝心の表がありませんね。作成することに気づかなかったの?それはキャッシュフロー計算書です。直接法と間接法がありますが、間接法は頭に損益計算書の当期損益がきて最後尾のキャッシュ増減額の欄に貸借対照表のその事業年度の現預金の増減額が記載される。これを見たら損益計算書で利益(又は損失)が出ていても、どういう原因で資金が余った、或いは不足したかが明かになる。

 

 つまり損益と資金の相関関係が分かる。これがないと計画の資金面の動きが見えないよ。毎年、税理士事務所で決算書作ってもらう時に一緒に作成してくれるでしょ。ない?その税理士は問題やね、やはり。というか損益計算書や貸借対照表が経営の羅針盤にならず税金申告書の「付属明細書」みたいになっている。本末転倒です。

 

 先ほど言いました「間接法」でキャッシュフロー計算書を作るには少し訓練が必要、だから直接法で作られたら良い。これは「資金繰り表」に近いので社長なら今月、今年の入金を項目別に整理し、計画損益計算書をもとに出金を項目別に整理して入金から出金を差引したらその残高が正数か負数かでお金のあるなしが予測できます。

 

 その際注意しなければならない点は、あなたが初めてここへ来られた時にお話ししたキャッシュサイクルです。お風呂の湯が入る速さと出てゆく速さの比較で説明した。いくら売上が多くても回収速度が支払より遅ければ「売上が上がれば上がるほど、資金が足らなくなり、借入金に頼らなければならない」ここが分かっていない経営者が実に多い。

 

 売上を上げることばかり社内で号令出して結局のところ残るのは借金だけ。粗製乱造の売上だから売掛金の質も悪い。滞留と貸倒になる。ここを直すことができないと「同じことの繰り返し」になるよ。

 

(最近、新聞に書かれていた面白い事例)

 これは中小企業の経営とは比べ物にならない国と国との取引のハナシです。一方の国が取引相手の他方の国を良いようにしている。一方の国とは米国で、他方の国とは日本です。10月10日の報道ですよ。

 どういうことかというとFMS(有事軍事援助)という援助契約があって、米国でしか作れない「防衛装備品」349億円分を日本は前払で支払っていたが出荷予定時期を過ぎても納入されないというもの。

 

 ポイントは次の通りだが、キャッシュの遣り取りに注目してほしい。

・日本で作れないものであること

・値段の主導権は米国が持つ

支払いは前払で買い手の日本は常に多い目に払い、納入後に精算される

多い目に払った差額分は日本の米国への貸付のようなモノだがこれに利息は付かない

・納入後17年経っても精算されていないものもある。従ってお金は米国へ行ったまま

・出荷納入日は(実質)未定(売り手の自由)

 

 どうですか、この厚かましさを見習わないかん。うちの製品が欲しかったら、とにかくカネもってこい!売掛金回転日数どころか売掛金自体がない。COD(cash on delivery)の片方のCash先行ョ。これくらいの条件で製品が売れたらお宅はカネに不自由しないョ。

 ところで US Government Balance Sheetの累損が21.5兆$にもなった、なので議会が動き始めたとの別の筋の情報を読んだから、アメリカのお父さんとこもカネがないのかもしれん。

 

 戦争に負けたことを割引いても「他所にないもの」を売る立場が強いということ。そこを押さえないと。

 

<次回予告>

壁に突き当たった事業家Qは再建計画を諦めM&Aを考えたが、、その結果は?

第16回 事業家QシリーズⅡ Q、再建計画に行き詰まる

2019年11月8日

 事業家Qは講師税理士に、再建計画を練り直しても黒字にならず資金繰りも困難なのでいっそのことM&Aを考えていることを話した。

 

講師税理士:M&AということだがM&Aにはどんな種類があるのかお分かりですか?

 

事業家Qはネットで調べた合併、会社分割、株式譲渡、事業譲渡と言ってみた。

講師税理士:で、このうちどれが貴社に合っています?

 

事業家Q:わかりません。

講師税理士:ではまず初めにこれらの中でおたくに合うものがあるか見て行きましょう。特にこれらによって貴社の資金に影響があるかを。

1、合併をしたら対価として買収会社の発行する株式をもらう。

2、会社分割も同じと考えて下さい。

3、株式譲渡は会社丸ごと貴社の株式をを売却するので対価はお金です。あなたの懐に入ります。

4、事業譲渡(以前の営業譲渡)はお金が入るが、その金を受取るのはあなたでなく会社です。

 

 付け加えていえば1、2、3を選択されたら事業家としては終わります。4は買手に良いとこ取りされて会社はガランドウになる。どうします?

 

 Qは結局のところ自分に求められていることは事業を継続するかやめるかの決定であることが分かった。2者択一の間(はざま)で、不十分な情報しか持っていないにもかかわらず、M&Aなどと口にしたことを後悔した。満州では現地中国人は十分なしかも正確な情報を持ち、日本人は政府や関東軍まかせであったことを父から聞いたことを思い出すとともに「政府」のかわりに「インターネット」に頼っていて自分で行動できるまでの情報の掘り下げができていない点に気づいた。

 

<次回予告>

身の丈に合ったことを考えよ、と言われた。

第17回 事業家QシリーズⅡ こうなった原因を掴んでいるか。

2019年11月11日

<先週までのあらすじ>

 大ナタを振るって貸借対照表を改訂し再建への道を模索したQは講師税理士から計画の欠陥を指摘されて壁に突き当たった。いっそM&Aを考えたが講師税理士から、現実を見ていないこと、上滑りの知識しか持たないで意思決定しようとしていることに気付かされた。

 

 

引続いて講師税理士は次のように話してくれた。

 

講師税理士:ハッキリ言わせてもらうけれど貴社の貸借対照表を見てココと合併したいと思う会社があると思いますか?大した資産もなくて銀行借入金と社長借入金が付いているような。

 相手方の立場になれば分かるでしょ。目を覚ましてください。

書物かインターネットか知らないけれど、それよりも自分の足もとをよく見はったらどうですか。どのように行動するかの順路を自分の口で言えないのにM&Aなどというものではありません。下手すると仲介会社に足もとをすくわれますよ。

 

このままでは下の二つしかありません。

1、破産する。銀行借入返せないから。あなたもその借入金の連帯保証人だからあなたも個人破産します。個人破産の場合は手続

  きによって一定額まで自由財産が残りますが。詳しいことはは弁護士さんに相談され、依頼されるのが良いでしょう。

 

2、活路を見出すか

 

Qは弁護士への依頼ときいて改めて自分が追い込まれている現実を自覚した。

 

 講師税理士はココで話を切替え、このようになった原因を考えましょう、何が原因と思いますかと事業家Qに聞いた。

 

事業家Q:過剰設備投資とそれで生産能力が増えたので過剰在庫になってしまいました。設備投資は銀行借入でまだ足らないのでリースを組んだのですがもちろん解約できませんので、生産量を少なくしてもそれらの機械設備は眠っています。その反面、リース料は口座引き落とされますから自分の乏しいお金を会社に入れたので「社長借入金」が多額になってしまいました。

 

それと売掛金の回収速度(日数)より買掛金の支払速度が速かっので風呂の例えで言えば浴槽の湯がなくなりました。

 

講師税理士:イエース、そのとおりですね。アメリカを見習わないかんね。

 

<次週予告>

破産を避けたいQに対し講師税理士は借入金の返済を「急ぐこと」はやめて、先行きの経済の見通しをもとにせよと諭した。

第18回 事業家Q士リースⅡ 講師税理士の見解

2019年11月12日

講師税理士は事業家Qに対し、自分の見解を言った。

 

 これくらいで諦めたらイカン。破産を考えることの前にすることがある。だから破産など考えないこと。

 ゴミを整理した貸借対照表には生きた資産が7000万円もあるではないか、これはゴミを落とした後だからあなたのチカラになってくれる。不良債権はなくなって正常債権ばかりの売掛金の回収分と手持金で買掛金や預り金は支払える。

 

 問題は銀行借入金の返済に対する考え方だ。約定があるのになぜ完済を急ぐのか。急ぐことはない、できれば、月次の返済条件を暫く長めにしてもらう条件変更の申入れが望ましい。

 

 しんどいのはQ社だけではない。地方都市では人口減少で活気はない。空家が増えその土地は捨値である。それでも買い手が付かない。所有するほうも売却価格より固定資産税のほうが高いところもある。

  地方自治体の会計は国からの地方交付税がないと成り立たない財政状態であるから固定資産税は大きな税収であり地価が下がってもなかなか下がらない。住宅ローンの破綻やカード破産が急増している。

 

 この地方都市の現状は日本中に広がる。

この中で借入金を返してゆくのであるから返済は急ぐことはない。銀行がQ社への貸付金をサービサーに転売したらむしろ交渉しやすい。

 

解決すべき問題は

1、今後事業を継続できる柱になる部門があるかどうか。ここが最重要。

2、そこからの確実な収益とキャッシュフローの入金額が読めるか、どうか。

3、事業には適正規模がある。人員もそれに照応して適正人員がどれくらいかを見て退職勧奨もしな

  ければならない。想像以上に辛いことだが、泥をかぶることを覚悟するこ

4、社長借入金は返済しなくても良いが、相続税で課税されることを防止するのなら、会社の損

  失額と見比べて債権放棄の方法もある。別にDES(Debt Equity Swap)・・債務の資本への繰

  入・・などの方法もある。ここは核心の問題ではないが方法は色々あるから枝の些事は心配しなく

  てよい。

今は急がず、意識を最重要の点のみに絞ること。

 

これらの話を講師税理士から聞いた事業家Qはこの税理士にすべて見透かされていたことを知った。

 

<キーワード>

事業適正規模 連帯保証 債権放棄 DES 

 

<次回予告>

核心の製品とサービス 基幹工程以外は外注化で対応も検討

第19回 事業家Qシリーズ Ⅲ Qは会社の青写真を作ってみたが

2019年11月13日

意識を最重要点である会社の再建策に絞って日夜考えに考えた結果を持って講師税理士を訪ねた。

 

Qが考えた要点は次であるが、まだ詰め切れない点を残している。

 

1、事業を他社ができないX製品とその付属品Yに絞り、これ等の据え付けとメンテナンスサービスに特化する

2、材料仕入れ先を、円高になることも見越し単価の安い外国製品を扱う輸入商社に変更する。

3、工程を見直した結果、材料投入工程と仕上工程以外の中間工程は外注先に委託する。

4、銀行に話して毎月の支払額を減少させ、完済時期を先に延ばすことをお願いする。

 

黙ってQの説明を聞いていた講師税理士は、このことと「並行してすることがあるのではないか」と言った。

 

講師税理士が言うには、貸借対照表の資産の部、負債の部の見直しはされたが、大きな区分が残っている。それは「純資産の部」である。ここが未整理である。未整理とはQ以外の株主が名前を連ねている。この人たちは、再建ができたらできたで利益の配当を要求する。再建が頓挫したら、会社法の取締役の善管注意義務や忠実義務違反を任務懈怠など理由にして責任を追及しかねない。これでは委縮して思い切った手が打てないのでは。

 

Qは盲点を突かれた気がした。確かにそうである。講師税理士は会社の財務内容が底である今こそ、書類作成の上、株主に連絡し株式の価値がない今こそ名義をQに書き換えよと言った。

 

そして再建案に関し、彼の思う疑問点を付け加えた。

・外国からの輸入で果たして価格が下がるのか?

・銀行がYesというか?

・外注への切替えで原価が下がるのか?

 

講師税理士は相手から見積りを取らないと、とても結論は出ないと付け加えた。

 

<次回予告>

見積を取って詰めてゆくと、想定とは逆の結果がでてきてQはまた大きな壁に突き当たる。

第20回 事業家Qシリーズ Ⅲ 見積を取って実際に歩いて分かったことは

2019年11月14日

Qは早速各社を回って折衝し、見積書を取って確かめた結果、現実は講師税理士の示唆した点が明かになった。

 

1、外国からの仕入れ:購入するロットが少ロットでは相手にされず、先方のロットに合わせたらQ社の生産量では材料の消化がゆっくりであるから却って材料在庫が増加すること。仕入価格に商社マージンを加え、輸入手数料であるハンドリングフィーや輸入消費税、関税、引取運賃、運送保険料、荷役費がかさみ1単位当たりの仕入単価は、生産が少ロットであることも影響して現在の国内モノを使うより高くなること、更に為替の変動で円安に振れればさらにコスト高になるリスクがあること。

 

2、工程を外注に投げる:この場合は、Q社の工場から外注先までの半製品のロジステイック費用(行き来する運送費や梱包手数料など)がかかる上、運送時の事故などで半製品がダメージを受けた場合の危険負担はQ社と外注先の何れが負うのかの事前取決めなどの問題が出てきた。Q社の半製品は特殊品であるため代替品で間に合うものではなく、容易に融通できず、事故が起これば、たちまちQ社工場での「仕上げ工程」は「工程に穴が開く」手待ち状態になるため「操業度」は著しく低下する。運送業者との交渉は困難が予想される。結局のところ原価UPにはなっても原価節減にはならないことが分かった。最悪、運送事故が起こって損失を負担した場合には、更に大きな傷を負うことになる。

 

3、銀行:は「これまで御社は期日を違えることなくキッチリと返済していただきましたのでご希望に沿いたいが、期日を後に伸ばす条件の変更は勘弁してください」と慇懃に断られた。いつもの事業家Qなら「ではどうしたら毎月の弁済額を減らせてもらえますか?」と突っ込むところであるが、その気力もなくうなだれて銀行を後にした。

 

 帰社してデスクに再建計画表を広げたQはフェイクでない決算書を顧問税理士が作成してくれていたら、これほどまでキズが大きくなることはなかったのにと後悔した。無理して黒字を計上するのが良いと言った顧問税理士の顔が浮かび腹がたったが、それも自分がOKしたのであるから怒りの持って行き場はない。Qは冷蔵庫からグッと冷えたビールを取出して一気にあおった。

 

アルコールが少し入って落ち着いたQは再考して次のような方針しか残されていないことを知った。

 

<次回予告>

現状の固定費(人件費、間接人件費、リース料など売上高に連動して伸縮する「変動費」と異なり、節減が難しい費用群)が壁になることを思い知る。 

第21回 事業家Qシリーズ Ⅲ 計画を練り直したが固定費がネックに

2019年11月15日

Qは製品Xとその付随サービスに注中することにしたが材料仕入は外国産にすることはやめ、国内の少し値段が安いものを使うとともに、外注に投げることは却って採算が悪くなることが分かったのでこれまで通り内作で事業を継続するシミュレーションをした。

 

<キーワード>固定費 変動費 損益分岐点

 

(シミュレーションの結果)

必達売上高は従来より少なめにしたので連動して材料費も減少したため粗利益はソコソコの金額を計上できることが分かってきた。

しかし、コストのうち製造量を下げることに連動して変化する材料費などの「変動費」と異なり、製造量に関係なく出てゆく「固定費」が従来のままの金額であるため、損益分岐点はさほど下がらず、粗利益-固定費はマイナスであることが分かった。

 

特に人件費と法定福利費をはじめとする間接人件費の合計がマイナスの主因である。

結局、給与の高い2名の中堅従業員を解雇し、残った従業員のうち高齢者にはシフト制にして週2日の出勤に変えることでやっと採算がとれ、借入金の月次返済もできることが見えてきた。

 

このような机上の計算を実現するには2名の従業員や高齢者との面談で実態を伝え理解を求めることは避けられない。

退職金の手当はしていない、というかできなかった。退職給与引当金が法人税法で計上できたころまでは、その見返り預金を積立してきたが、経営が苦しくなってきたころにこの制度も廃止されたので積立預金を取崩して通常の預金口座に移行してしまった。そのため退職金の財源はない。

 

長年勤務してくれた2人を退職金なしで放り出すことはできない。そのうえ予告手当も必須である。資金残は通常の支払分しかない。資金がないからといって従業員数を減らさなければやがては倒産である。Qも含め全員が路頭に迷うことになる。前門の虎、後門の狼である。

 

事業家Qは青写真の変更をした報告と、資金不足の妙案を求めて講師税理士を訪問した。

 

(講師税理士の言ったこと)

・人間は誰でも構えが大きいことを好み、内容が伴わないのにカタチを求める。ここに落とし穴がある。これまでの貴社である。

・しかも「大きいカタチ」を求める心底には「見栄」がある。そして背伸びし、無理に無理を重ねて重態に陥る。

・今は量や構えではなく質の時代であることを知ろうともしないで、実力もないのに構えを求めている。相変わらず。

辛抱して地力をつけるマインドがなくなってるから店でも会社でも見栄に捉われた本人にはわからないが他人にはわかる。

二つの「J」が大事。JIMIとJIRIKIや。

損益計算書が「実力」を示してくれるのに大概の経営者は見ない、学ばない、以前のアンタも含めて。その結果がヒサンな貸借対照表になり自滅してゆく。自滅寸前のゾンビ企業が多くなっている。

・こんなゾンビが倒れてゆくのがこれからです。

 

だからカッコつけんと、なりふり構わずに命も含めて投げ出す度胸を決めよ。人間はいずれ死ぬ、だから死んだ気になって対処しろよ。

何度も同じこと言わすな。これから一人でビール飲むから帰ってんか!

 

そうや、いつも心に念じている古い短歌を教えてあげるワ。

「切り結ぶ太刀の下こそ地獄なれ、踏みこみゆけばあとは極楽」

さいなら、気ィつけて帰りャ。

 

<次回予告>

他人に辞めて下さいと言いながら自分はどこまで裸になっているのか、「踏みこんでない」自分に気付いたQは更に考えた。

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