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大廃業時代が始まる:個別企業についての予見と税制

第8回 出口に向かう時に気をつけること

2019年8月29日

 個人の商売ならいつ店じまいをするか、会社なら資産負債の整理をしていつ解散・清算にゆくか、世代交代に備え相続の準備を何時から始めるかを決めなければなりません。

 

1、個人事業を店じまいする時機を失ってしまいますと残されたご家族から「いい迷惑」と思われます。あとを継ぎたい人がおられるか今一度見直され、結局閉じることになった場合はその後の生活の糧が確保されているかが重要です。国の年金はあてにならない金額です。

 そこで、お店を閉じる際の障害になるものを第一に挙げ、後の収支を見ます。この場合は、借入金がありますと止めるにやめられません。従業員さんがおられれる場合は事情を良く説明しできる限りのことをしてあげましょう。後味の悪い思いが残らない配意が必要です。

 

 税務上は

・残った在庫の処分をされる際の消費税の申告が重要です。納税が起こります。

・所得税では最終在庫の評価と損益計算をして終了です。廃業届も出しましょう。

 

2、法人の場合は組織体ですから個人と異なり、解散することを株主総会で特別決議(三分の2以上の賛成が必要です)を取る必要があります。株主は資本金を会社に投資していますから最後の計算をして株式を払い戻す必要があります。利益がこれまで出てきた会社のばあいは元本に加えて配当をします。利益がなく欠損金が資本金が割り込んでいる場合は投下資本を下回る償還しかできません。最悪は債務超過ですが特別清算しなければならないことになります。破産の類型に入りますから裁判所のご厄介になります。

 

ポイントは最後損益が出ているのかによります。資産や負債の評価が重要です。

 

 税務上は

・残った在庫を処分する時は破産であっても消費税の申告が必要です。

・解散の登記に沿って税務申告が必要です。

 

3、相続準備の場合はまず遺産(資産と負債)がどれくらいあるか調べます。負債のほうが多い場合は限定承認や放棄の選択ができます。

 資産のほうが多い場合は、遺言書を作成するのかしないのかを決めます。最近の法改正で遺言の方式なども令和2年7月から法務局で保管する制度が発足します。これまでの自筆遺言や公正証書遺言に代わるものです。信託銀行の遺言信託は費用が高い上に信託銀行が遺言執行人になりますから、普通の遺言の場合には、相続人全員で遺言とは異なる分割に変更できるのができません。注意しなければなりません。

 

 以上いずれにしても「信頼できる」専門家にご相談になることです。信頼できるかを確かめることが一番難しいですから良く調べましょう。

第9回 この際に自己の資産を世界の眼で見てみる:窮乏化する日本

2019年8月30日

 大廃業時代に備えて資産・負債などの内容を見直して、これまで何十年働いてこられた価値を一旦立ち止まって再評価してみることも重要です。これからも円安が続くばあいには国内に金融資産を有しておられるだけではワンパターンに感じます。人生90年時代ですから今後の生きてゆく基礎財産の維持がどうなるかを見ておくことも大事かもしれません。

 

特徴は以下の通りです。

要点

・今後も2%程度のインフレが実際に継続すれば国内預金(円預金)、年金、債券などの金融資産は目減りしてゆく。

・通貨発行量が一定限度を超えると当然のことながら貨幣価値は下がってゆき、北極の氷の上にいるようなもので足もとからゆっくり溶けてゆく。いずれ無くなる。

・1%のインフレでも20年経てば資産価値は目減りする。2%のインフレが50年継続すれば価値は3分の一との試算もあります。

借入金がある場合は逆の影響で負担が軽くなる。

デフレがインフレに変わる時期はくるのか、それはいつの時期かの見極めが難しいところ政府の公表データ(日銀資金循環表・各四半期分や内閣府の経済財政に関する試算)その他を見ること。

要するに高年齢で借入金もなく国内金融資産だけの場合は運用の研究が必要であること。なぜなら貨幣価値の下落の軛がある。

・ヘリコプターマネーが撒かれることの影響は国債評価の減額から物価上昇への道と認識すること。

・円安が続くと外国通貨に置き換えた場合、損していることになる。米国のホテル代20年前は普通のクラスで一泊12000円、Innなら7500円であったが現在は3~4万円になるのは円安のため。

・逆に、日本に来る外国人は物価安なので不動産も買いやすい。反面、損しているのは円のみで暮らす人々。

 

 店じまいや会社の解散をきっかけにして、資産負債の実態と今後それらを海外にシフトした場合のシミュレーションも有効です。外貨には国内の銀行でも変えることができます。

第10回 資産を基軸通貨ドルに置き換えてみたら傾向が読める:A社の例

2019年9月1日

貸借対照表の数字は当然ですが円(yen)で表示されています。これを遊びのつもりで基軸通貨のドルに金融資産を置き換えてみましょう。

 

2012年では1ドル79円でした。今日のレートは107円です。わかりやすくするため1$80円の場合と1$110円の場合と横並びにして数字を当てはめます。

 

80円が110円ですから30円安なので110円に対し27%下がることになります。100万円の預金は1$80円の場合は12,500ドルでしたが、1$110円なら9,090ドルです。27%下がっています。このように貨幣資産で比較しますと円安の目減り分がよくわかります。それだけ損しているのです。

<外貨預金の場合はこのハナシの対象ではありません。運用次第で資産の増加も当然ですがあり得ます>

 

円で資産を持つことが実は目減りしてゆく傾向がこれからも続くうえ物価高ですから、企業も家計も動きが縮小傾向になります。

 

空家がものすごい勢いで増加しているのに片方ではどんどん新しい住宅が新築され販売されています。このように相反する動きが起こる中で空家の原因の人口減少は動かないため、やがては無理な借入による住宅の「完売」にも限界が来ます。その先には借入金が不良債権化する懸念が生じます。

 

空家を購入する側がデベロッパーであれ個人であっても購入資金を借入金で賄うと考えますと、人口減少のもとで金融機関では貸出金が増加する一方で、不良債権が増加するリスクだけが高まってゆきます。

 

可処分所得が増えない中、消費も伸びず、金融機関にリスクが集中する先にあるものは融資条件の厳格化ではないでしょうか。このことは個別企業とりわけ中小企業にとってはキャッシュフローに致命的な困難をもたらします。

 

今後はA社社長は実態を示す貸借対照表をもとに会計事務所に「私と話をしましょう」と言明することが必要です。社長とフェイクではない本当のナマの話をできない担当者なら担当を替えてもらいましょう。替わった新しい担当者がもっと良くない場合は担当者ではなく所長に「出てこい、出てきて我が社の相談に乗ってくださいョ」と掛け合いましょう。

 

所長が出向いてこない会計事務所ならその原因をA社社長は考えなければなりません。忙しすぎて勉強ができてないのか、忙しい原因は得意先が多すぎるからか、単なる人手不足なのか、、、ココが思案のしどころです。良い会計事務所との協力がなければ専門家ではないA社長だけでは今の壁の打開は困難です。なぜならA社はこれから月次決算書を海図に、税法の規定を用いて会社の体質改善の遠征に出てゆくのですから、、

 

大事なことがもう一つあります。会計事務所への支払い報酬をケチっていませんか?ココも重要です。年寄りが孫に小遣いを出し惜しむような態度の人もママおられます。これでは人は動かせません。

第11回 事例で考える:出口はどこにあるのか?

2019年9月2日

事例:A

 

当社の現状決算書では利益が出ていますが、資金繰りはよくありません。毎月末ごとに今月もやっと月を超えられたとの思いです。

銀行は借入金を勧めてきます。別の銀行は事業承継のプランを持ってきますが中身は新規借入が仕込まれています。要は借入して持株会社をつくりソコが新規借入で株式を買取る話です。

 

今でも返済に困っているのに新規に借入することには二の足を踏みます。このまま行ったら行き詰まるように感じます。

 

考え方:まずご自分の感覚である「このまま行ったら行き詰まる」ように思われる点を大事にしてください。カラダが教えてくれているのです。今こそ、ご自分のアタマで自社の現状を理解されるいい機会です。自社の立ち位置が分かりますと、出口への道が見えてくるものです。

 

確かめる点:

1、利益が出ていると仰いましたがそれは本当ですか?

決算書の作成は誰がしましたか・・・・・・・・・・・・経理部長と会計事務所が原案を作りました。

あなたは自分で理解してハンコを押しましたか・・・・・いいえ。

                    利益を出さないと融資を受けられないから困ることにな

                    ると経理部長から聞きました

                    ので同意しました。私は経理のことは分からないので、

                    そうするしかなかったので

                    す。これまで何年もそうしてきました。

 

分かりました。何年もですね。では一緒にワカリヤスクご説明しますから、順番に見てゆきましょう。

 

これから経済は厳しくなります。最近発表の国の予算案では昨年より予算規模が増加しています。ということは国債も増発されるでしょう。日銀が国債を引き受けできるのが難しくなれば金利が上がり始めると思ってください。

 

5年に一度の「年金財政検証」が行われ、経済成長率が予想されていました。成長率が0%なら所得代替率40%になると予測されています。夫婦二人世帯で以前の夫の給与の4割しか年金がもらえないのです。それも68.9歳まで働く前提です。生活は大変です。ここへわが国財政の状態が出ています。

 

国債の増発が求められるのにそれができない時、国債の価格が下がって金利上昇の兆しに近づきます。このような背景を大きく見られて自社の経理を見なおすようにされますと木を見て森を見ないことにならず、全体を見ることに繋がります。それだけではなく、木も森も視野に入れることが、自社の見直しをする決心を支えてくれます。

 

あとあと具体的な手を打たれる時には税法の規定を使って「税を押さえて、資金を生む」などの手法が必要です。木の中でも税法の規定のような小さな木も、全体から見ますと小さいですが貴社には大きく影響しますから小さな木も、森もできたら山も見ましょう。

第12回 外側が暴風雨になることが分かっている人ほど内側を確信をもって固めるものです

2019年9月3日

前回に書かせていただきましたように山や森や木々を見ていたら、山の向こうに怪しい雲が現れて森の鳥たちが騒ぎ始めたのに気が付く人と気が付かない人があります。

 

山の雲が世界の経済で森の様子は国内の景気で、そのなかにあなたの会社や家計があります。ですから会社の中だけではなく外の動きも見て対応されることが重要です。

 

私などは、どうでも良いことに気をとられて肝心のことをおろそかにしがちですが、ここは大事なところ、と認識できれば疎かにはしないものです。

 

自社の見直しをする「決心」と書きましたのはこのことです。山や森の動きを知って、決心して我が社の点検をして改善する場合と、決心がない場合では継続力が違います。外を見て危機感を持つことは重要なことです。

 

事例Aではまず借入金を点検することをします。

この場合、借入金を2種類に分けましょう。

 

運転資金として借入たもの。もう一つは設備投資のために借り入れたもの、の二つです。

金利が上がることに備えるのが狙いですが金利が上昇する場面ではインフレの傾向が出てきます。この場合、金融資産は目減りしますが借入金は負担が軽くなります。

 

最大の借金王は国です。国が通貨を増発してインフレターゲット2%を目標にすることは借入金が軽くなることを意味します。副作用の円安が起こりますが国内だけに眼を向けていますとこのことには気づきません。

 

さて、金利が上がる場合の影響を避けるには借入金の残高(元金)の減少が有効ですが、金利が上がることは借入金の負担が軽くなることも事実です。痛し痒しです。そこで借入金を二つに分けることで適切な対応をしようとします。

 

借入金を「善玉」借入金と「悪玉」借入金に分けて対処します。

第13回 無視できない兆候 事例 A

2019年9月6日

金利が上昇し始める兆候が見えてきたときA社は「利益が出ている」決算書のどこから見直して手を付ければいいのでしょうか。

 

借入金を善玉と悪玉に分けることをすることが対処の第一です。

善玉借入金とは借り入れた資金が設備投資になって貸借対照表の資産の部の建物や機械、無形固定資産などに姿を変えているものをいいます。

 

在庫になっているものは善玉には色分けしません。在庫が動かずに滞留している場合は、たとえそれらが資産として計上されていても資金循環の足を引っ張る働きをするからです。在庫滞留の原因になるこのような借入金は悪玉に分類します。

 

悪玉借入金とは運転資金のために借入したが、貸借対照表の資産の部に見返り資産として計上されないで資金循環の中にとけ込んでしまって、雲散霧消して負債だけが残った借入金をいいます。

 

善玉は、金利が上がることが現実になっても購入した不動産物件や機械などの固定資産は経営の支えになり、最悪でも処分価額が事業資金に還流しますからその還流資金で借入金を返済することもできます。

 

逆に悪玉はそのような資金を生みませんから新たな借入金や支払延期要請または他に使用する用途のある資金を流用することでしか返せません。他に使用する用途の最たるものは給与支払いです。

 

これからは現実に給与の支給遅れが現象として現れる事業体が出てくるでしょう。聞いた話ですが或る私立大学で給与支払いが困難であると話題になっていました。

 

手を付けることは次の勘定科目の見直しです。3と4はこれらの資産利回りと(善玉・悪玉とも合わせた)借入金利を較べれば答えが出ます。

1、在庫の底だまりがないか

2、売掛金に滞留がないか

3、投資勘定(株式、ファンドなど)の中味の利回りが借入金の金利より下回っているものがないか

4、生命保険掛金

 

3や4は普段はあまり見直さない地味な勘定科目ですが、この利回りがその資金の源である借入金の金利より低い場合、その金利差だけ損をしています。資金を貸している金融機関が利益を得ています。

 

世界中を借入したお金がグルグル回って種々の投資などに使われても、利回りが悪い状態です。生保会社などは契約者から預かった資金運用の利差益が出ない状態です。

 

まして、中小の会社が運用する資金は知れています。事業の目的と関係しない部面に資金を持って行って投資を運用益で膨らますことはやめて、事業の核心的な部分に資金を集中するように舵を切ることが重要でしょう。八方美人的な資金運用はやめて集中することです。生保も含めた投資への資金は善玉・悪玉の区別が難しいですがその区別をするまでもなく「マイナスを切る」観点から整理されることが良いのではないでしょうか。

第14回 在庫と売掛金の滞留はなぜ命取りになるのか

2019年9月9日

前回で投資や生保掛金を取り上げましたが、今回は在庫と売掛金の滞留を取り上げます。

これらの回転が遅いから悪玉借入金が発生しました。現金仕入れ、現金払いで回収ならこの二つは発生しません。

 

現実には信用経済ですから現金仕入れ、現金回収は余程小規模な場合は別として極めて少ないでしょう。

しかし正常な循環で回転しておれば問題ではないのですが、実際は多い目の購買の慣習などによって在庫は膨らんでゆきます。膨らむほど不良品を処分することも遅れます。

 

売掛金は相手の資金状態でずるずると膨れます。

こうしたことが資金回収の遅れを生みます。それが徐々に手元資金の枯渇になり、繫ぎの借入金が必要になります。悪玉借入金です。

 

大ナタを振るわないと自然に膨れるものですから膨れるほどに悪玉借入金は増えます。大ナタを振るって不良債権、不良在庫を整理しないと雪だるまのように大きくなります。

 

ですから悪玉借入金の退治をすることは、流れに逆らって大ナタを振るわないとできないのです。

最近の報道では地銀の中小企業への不良債権は3000億円になっています。それだけ中小企業の借入金の焦げ付きは深刻なのです。

 

資金繰りの悪化が給与に影響することが一番問題です。遅配はもってのほかですが、給与水準が上がらないことも大きな問題です。

 

給与を支払う側では利益が取りにくいので現状維持で前年並みで良いかと考えがちですが、インフレ2%を志向する経済政策のもとでは物価水準が上がるため昇給がなければ「実質賃金」は下がることになります。

 

厚生労働省から「毎月勤労統計」(速報版)が発表されました。実質賃金が物価高によって0.9%下がった結果が出ています。7ケ月連続で実質賃金が下がっています。消費税増税で更に実質賃金は下がると考えます。生活が苦しくなるということです。

 

会社の給与水準が上がらないことはモチベーションの低下が起こりかねません。従業員の質の差がサービスや商品の差になります。こうして資金の余裕の有無が事業の運命を大きく変えてゆきま

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