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会計と税の見かた、考え方ーむつかしい時代を乗切るために

第9回 会計と税務は別の世界・・・・鈍重な決算書を最速の内容に変える 3

2018年3月5日

  これまでの内容を整理します。

会計では、機能的に陳腐化していたり、物理的原因がある場合などは実態に合わせて資産の部の帳簿価額から大ナタを振るって減額することは可能です。

 

税務では、税法で定められた償却限度額を超えて過度な減価償却をすることは可能ですが、限度超過額を申告書別表4にて加算しなければなりません。この加算の結果、大ナタを振るった部分は税務上では元にもどすことになります。

 

 例としてある機械の帳簿価額1000のところ会計では機能低下で900を一気に減価償却費として減額しますと、その期の帳簿価額は100になります。

 

 税法でのその機械の法定の償却限度額が300であったなら、900-300=600は「償却超過」ですから申告書別表4で加算します。加算後のこの機械の「税務上の帳簿価額」は100+600=700になります。この700はは法定の償却限度f額300を1000から減額した金額と一致します。

 

 但し、この時点では会計上の帳簿価額100

          税務上の帳簿価額700

ですから大ナタを振るった分だけ差額が出ます。この差額を会計で出してでも鈍重な決算書からサヨナラしたほうが良いと私は考えています。悠長なことを言ってられない時代であるという認識です。

 

 もちろん申告書別表4(ここは別表4以外に他の別表も使用するのですが、ワカリヤスクするため簡略な表現にしています)で加算して減価償却費と帳簿残高を正しくして税務申告をします。この加算を怠れば、更正または修正申告が待っています。その上、過少申告加算税というペナルテイも支払わなければなりません。

第10回 会計と税務は別の世界・・・・鈍重な決算書を最速の内容に変える 減価償却関係の用語の整理

2018年3月6日

 なるべくむつかしい言葉を使わないで説明してきましたが、この辺で用語の最小限の整理をしておきます。

 

決算書とは→①貸借対照表、②損益計算書、③株主資本等変動計算書、④注記表をいいます。

減価償却が関係するのは①②④です。④は償却方法の変更した際に、このことを記載します。

 

減価償却費→資産の目減り分です。目減り分は②に計上されるとともに①の帳簿価額から同額が減額されます。

貸借対照表は財産リストでもあります。ストックが記載されています。

損益計算書はフローとしての流れを記録します。

したがいまして「目減り分」はフローに流れてゆくとともにストックから減少して、いずれはゼロになります。

 

帳簿価額→ストックから減価償却費として減額した部分を控除した残額です。帳簿残高とも言います。

取得価額→最初に購入した時の価額です。まだ減価償却はしていない価額です。

 

よって初めての減価償却をした後は、帳簿価額=取得価額ー減価償却費になります。毎年毎年、前年の帳簿価額から減価償却費を控除しますから減価償却累計額はどんどん増加します。

 

帳簿価額=取得価額ー減価償却累計額になります。

 

償却限度額→税法で決まっています。取得価額×償却率で算出します。

償却率→税法で定めています。税務の計算ではこれに拠らなければなりません。

 

償却限度超過額→減価償却費>償却限度額のオーバー部分を指します。会計の世界にはないもので、税務の規制です。

残存価額→サルベージ価値ともいわれ、以前は取得価額の10%でしたが税法が変わって実際は1円が用いられています。税法の規制です。

 

 このようにみてゆきますと細かい規制は税務から来ています。あまり細かいことに振り回されますと伸び伸びした会計的な発想が出来なくなってはいけませんので、税務の規制についてはこんなものだ、との割切が必要でしょう。

第11回 会計と税務は別の世界・・・・鈍重な決算書を最速の内容に変える・・・逆の道を行く人達

2018年3月7日

 会計では機能が劣っていたり、物理的に使用に差しさわりがある場合に大ナタを振るって帳簿価額を減額することが実態に合うと説明しました。そして大ナタが振るわれて減額された部分の金額は、税務上は認められませんから申告書4表で加算しなければならないとご説明しました。

 

 この方法は鈍重な決算書の状態から脱却する一つの道です。理にかなっています。

しかし世の中には、旧式で稼働が困難な機械でも償却限度までの減価償却を意図的にしないで、過少な減価償却費を計上する会社があります。

 

 なぜこのような会計の方法を取るのかといいますと、正規の償却限度額を下回る減価償却費を計上することで「利益が多く計上できる」からです。

 利益を多く計上することで銀行からの融資条件を良くするのが狙いです。上場会社など監査が入る場合はこのようなことはないと考えますが、非上場会社の場合は、監査がありませんから、怖いのは税務署だけです。

 

 利益を過大に計上していますから課税所得も多くなり徴税するのがお役目の税務署は何も言いません。課税上の問題はないからです。

 

 しかしこの会社は損益計算書の減価償却費が過少計上ですから、貸借対照表のその資産の帳簿価額も正常な減価償却費を控除した場合に比べて「過大」になっています。

 高名な税理士先生が講師をされた研修会で、ご自分の事務所で減価償却費を過少計上していると悪びれることもなくおっしゃったのには驚くよりも、その関与先が心配になりました。

 

 機能が劣ったり陳腐化した資産ですから、本来なら加速度的に大ナタを振るって減額するのと逆に過大な金額が貸借対照表に記載されています。

 名目利益が計上され、そこから納税や配当が支払われますから体力がないのにあるかのように表示され、配当や納税は現預金が流出してゆきますから、どんどん衰弱してゆきます。

第12回 会計と税務は別の世界・・・・鈍重な決算書を最速の内容に変える・・・逆の道を行く人達 2

2018年3月8日

  実際の自社の状態を見ることよりも、他人の目を意識して過大な利益を計上する、との姿勢からは日本の特徴が表れているように思います。他人の目とは金融機関のことです。

 自分を正面から見ないで目をそらす、人のことが気になる、気になって仕方がないから身につけたものや持ち物や、クルマなどワカリヤスイ外観をいつも比較します。

 

 そして内実より上辺や形式が大事です。日本人は教育はあるが教養がない、と外国では見ています。ここでいう「教育」とは学歴です。よい大学に入学して、卒業することが自分の形式や上辺を飾るために必須で、在学中にどれだけ鍛えられたかは?です。私は文科系しか知りませんが、特別の目標を持った人は例外で、実力はお寒いものです。教養という常識もない人が多くいます。

 

 むしろ学歴がなくても職人といわれる人々は、親方から仕込まれ、自己責任で、仕事に磨きをかけることで人格的にも深みができ、仰ることが含蓄のあるかたが幾らでもおられます。教養があるのです。

 

 第2次大戦の終戦で軍隊が崩壊したとき、組織に依存していた人は、だらしない行動に走ったのに比べ、普段と変わらず自己を律して行動したのは職人をしていて徴兵された人たちであったとフイリピンで敗戦を迎えた小松というひとの書かれた長いベストセラー「虜人日記」に書かれています。

 

 会計においても、経営者は自社の中味を正しく把握して経営の改善にすることをしないで、まず資金を提供してくれる銀行に良く思われたい、次に、払う税金を少しでも安くしたいと考えます。

 

 減価償却費を過少計上して銀行の喜ぶ決算書を作って、片方では税金を少なくしたいと、相反するムシの良いことを考えます。この悪循環から出るには、本当の損益を知り、鈍重な、肥大化した決算書から決別しなければなりません。

 

 まともに減価償却して、利益が出ないならその原因はどこにあるのかを考えることがスタートです。減価償却よりももっと重要な売上と仕入の中味に深い病巣があるのです。

 

 会計事務所があなたの質問にまともに答えてくれないばあいは、会計事務所が決算書の見方が良くわかっていないのかもしれません。どれくらいわかっていないか、繰り返し質問を続けます。会計事務所が答えをきちっと説明してくれるまで止めないで続けます。答えができなくて、ろうばいしたり、泣き出したり、怒り出すまでトコトン攻め手を緩めてはいけません。相手の正体があらわになるまで引いてはなりません。表面の顔の後ろに隠された正体があります。作り笑いの仮面を外してもらいましょう。

 

 そうでなくては会計や税務の相談はできません。正体がわからない人は相手にしてはいけません。これからは混沌の時代に入りますから顧問は選ばなければなりません。資格という上辺や形式は制度上、最小限必要ですが、実力は玉石混交です。差があります。実力があっても反りの合わない人も遠ざけましょう。

 

 社長は会社の経営に命を懸けているのでしょう。その要望に応えるのは会計事務所も命がけで勉強して、答えが出せなくてはいけません。お互いに顔色をみて中途半端で妥協してはいけません。顧問料が無駄というものです。相手の正体を見ましょう。

第13回 会計と税務は別の世界・・・・鈍重な決算書を最速の内容に変える・・・逆の道を行く人達 3

2018年3月9日

 外観を良くすることにに意識が行ってしまって、わが社の実態を見ないのは慣習になっているからかもしれません。この慣習を打ち破って、自社を良くする鍵を見つけ、或いは自社の成績が良くない場合に、その原因を掴むことの障害になる慣習には減価償却費以外に次のものがあげられます。

 

1、仮払金:交際費等が多額なため、費用を少なく見せるため、仮払金に計上している例。関与して初めて、その会社の会計帳簿をみた時は既に数千万円が仮払金の計上されていました。ちょうど経理責任者が交代された時期であったので、責任者の方と協力して内容を解明しつつ費用化できるものはしました。費用として計上すべきものを仮払金の計上しますと利益が出ます。これまで無用の税金をずいぶん払ってこられたのです。

 いまは金融機関も仮払金には注意をされてます。

 

2、在庫の減耗分を減額しない。

3、在庫の評価を切り下げるのが妥当なところを、いつまでもそのままにしている。

 

4、開発費などの名目で貸借対照表の「繰延資産」の項目に計上し、5年以上も償却しない。

会計基準では早く償却することが妥当との考えです。もちろん「鈍重」を避けるためです。従来は費用計上か、繰延資産として貸借対照表に上げるかは会社の任意でしたが、平成10年に研究開発費等に係る会計基準が公表されてからは完全に費用計上が「原則」になりました。現在では、資産に計上しても3年から5年内に償却することが求められています。

 にもかかわらず5年を超えて資産に放置するケースもあるようです。

 

負債として未払金などを計上するべきところを、計上しない。この結果、過大な利益が生じる。

6、貸倒引当金を計上しない。不良債権があって貸倒になる可能性が高いのに貸倒引当金を計上しないケースもあります。将来の損失に備えるためですから、アブナイ未収債権がある場合は思い切って計上しておくのが鈍重な決算書でなくなる道です。

 

7、その他の引当金も計上しない。例えば将来に大修繕が予定される場合、修繕引当金を計上するのが良いでしょう。

これらを計上してなお利益が出るように進みたいものです。

 

なお6と7には減価償却限度額のように引当金の繰入限度額が定められています。次回はこの関係に触れます。

第14回 会計と税務は別の世界・・・・鈍重な決算書を最速の内容に変える・・・逆の道を行く人達 4

2018年3月12日

 貸倒引当金は、その会社が期末に有している債権の一定割合を計上することが「税務上は」できます。税務上許された繰入率は債権額×6/1000~10/1000の範囲です。卸売業が10/1000で製造業は8/1000などと業種ごとに定められています。

 

 一定の率まで計上できるのを「一括評価」といいますが、このほかに個別事情によって率で上限を縛らないで繰り入れることができる「個別評価」の方式もあり、併用できます。個別評価が許される事情とは会社更生等の再生計画中の場合や手形交換所の取引停止処分があったことなどの事故理由や、債務超過が継続している場合や、天災、経済事情の急変などの突発的理由が税法で限定して列挙されています。これらのどれかに該当しない限り個別評価方式では貸倒引当金は計上できません。アブナイ未収債権でも1件ずつの内容をしらべないと簡単に適用できません。

 

 このように税務上は計上限度が定められていますから以下のような会計と税務の関係があります。減価償却と同じです。

事例(卸売業を想定):

 債権額 5000万円であったがアブナイと社長が「感じる」債権が600万円であった。会社は決算で600万円を貸倒引当金として計上した。

 しかし税務上は税理士に検討してもらったところ「個別評価」に該当するものはなく、一括評価で計上するしかないとの結論であった。一括評価の繰入限度額→5000万円×10/1000=50万円

 この結果、会計上の600万円ー50万円=550万円が貸倒引当金繰入限度超過額になります。

 

 減価償却の償却限度超過額と同様な処理をします。申告書別表4で加算します。この加算分は会計上の利益に加えられて所得として計算されます。この所得に課税されます。会計上幾らを不良債権として貸倒処理をしましても課税は貸倒処理をしない場合と同じことになります。

 

 このため一つの「慣習」ができてしまっています。最初から会計でも限度額である50万円だけを貸倒引当金として計上する慣習です。このことは思い切った債権の見直しをする姿勢を奪ってしまうと私は考えています。債権の回収速度や性質をしっかり見て、会計上の債権の評価額を決めることが大事です。

第15回 会計と税務は別の世界・・・・鈍重な決算書を最速の内容に変える・・・逆の道を行く人達 5

2018年3月13日

 貸倒引当金を例にとりましたが、どのような引当金が会計で計上され、税務でも認められているのでしょうか。

次のようになります。

 

会計(決算書)で計上されるもの

 賞与引当金、退職給付引当金、社屋修繕引当金、損害補償引当金、船舶修繕引当金、製品保証引当金、債務保証損失引当金、建設工事保証引当金、などがあります。決算書の上で**引当金などと掲記される場合もありますし注記の中で記載されている場合もあります。たとえば日立製作所の有価証券報告書では注記として製品保証引当金のほか事業構造改革関連引当金などという名称の引当金が見られます。

 

税務では貸倒引当金と返品調整引当金だけが認められています。(租税特別措置法には返品調整引当金と同じような負債の性格をもつ引当金と類似の準備金が法定されていますが割愛します)

 

 では会社が決算書で上記の賞与引当金や修繕引当金を計上した場合、決算書の利益はその計上額だけ減額されますが税務上はどうなるのでしょうか。

 

例えば会計上、修繕引当金を5000万円計上したとしましょう。

このばあい税務上は申告書別表4で5000万円を利益に加算されます。

 

以上からも導かれるように

 会計は経営者の意思表示である

 税務は政府の意思表示に対する課税上の制限である、ということです。

 

ですから会計で表現することを最初から税務の枠に納めてしまうことは一種の「萎縮」ではないかと考えられます。

 

 勿論、会計では何でもOkではなく、会計基準という制限がありますが税法ほどではありません。会計基準では減価償却費を当の償却」といっています。また「経営状況により任意に行うこと」は良くないので排除されています。それなりの原因がある場合は多くの金額を償却費とすることは認められると考えます。理由もなく勝手に計上することはいけないということです。

 

引当金も「将来の費用または損失に備える」大義名分がいります。

第16回 会計と税務は別の世界・・・・鈍重な決算書を最速の内容に変える・・・逆の道を行く人達 6

2018年3月14日

 要するに会計は自由度が高く、税務は厳格性があります。

自由度が高いということは減価償却費を例にとりますと多い目に計上したり(この場合は申告書別表4で加算されます)、逆に少なく計上したりできます。

 

 ということは決算書で表示されている利益(または損失)は常に人間の判断(場合によっては恣意、忖度)が入っているといえます。

 

 会計基準の底にある「収益は実現してから計上し、費用は発生の芽の段階から(安全のために)計上する」という思考は利益を過大計上しないための、戒めなのです。普通はこれを逆に実行して鈍重な決算書の方に、つまり逆の方向に行く人が多いのです。

 

 このため利益を過大計上して名目利益が生じないような会計をするほど税法の基準と開差が生じて別表4で加算することになりますが、良い決算書であるといえます。その決算書をみれば資金の循環も正確に反映されますので把握しやすいのです。

 

 逆に利益を過大表示する決算書、すなわち減価償却費の計上をしなかったり、引当金を計上しなかつたりの決算書を見ますと資金の循環を読み取りにくくなります。アブナイ決算書です。

 

 どういうことかと申しますと利益が過大に表示されているため自力で資金調達できた枠が過大に表示されるため、実際に手許の資金が借入金で調達したものしか存在しないのに、自力で調達できたかのように表示されます。

 

 犬の毛が伸びて大きな犬のように外観は見えても、毛を適正に刈り取ったら、大きな犬ではなくむしろ「本当の体格」は貧弱な犬であったことが分かるようなものです。この場合の犬の「本当の体格」とは「資金」と置き換えてもいいものです。

 

 要するに会計は人の判断を誤らせやすいが、資金は嘘をつかない、のです。嘘の部分をできるだけ少なくするのが「鈍重な決算書を最速の内容に変える」ことなのです。経営する人がこの違いを認識しない場合が多いのです。

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