第17回 のど元過ぎれば、、、
2018年5月29日
経営をする人にとっては、税務は大した問題ではない。もっと大事ことがある。だから、税務の問題が起こっても、その時その時を凌いでゆけば良い。
このような考え方が多いように見えます。巨大な会社でも新聞に大きく書き立てられた場合の会社の応対はパターンが決まっています。
・指摘されたことに対し、修正申告に応じた。
・または、疑問はあるが、修正し、納税を済ませた。
芸能人などの場合はこのようなものです。
・会計事務所に(税理士に)任せてある。自分はしらない。(会計事務所の責任ダア)
・税務署の言うとおりに既に修正申告した。納税もした。
共通するのは、自分の税金でありながら、他人事のような言い方です。たしかに税金は複雑でワカリニクイですが、「(税務署が)言われることに従った」「不足分は納めた」これらで一件落着!のようです。のど元過ぎればです。
会計事務所もいろいろあります。何故指摘されたのか詳しく説明しない会計事務所もあるでしょう。或いは説明しようとしても、納税者の方が聞く耳を持たないのかもしれません。
私の経験では、特に最近は「聞く耳を持たない」人が多いです。そして陰では、税理士が悪い、会計事務所が頼りない、との小言を友人などに言います。
これですから、税金の意味を考えることもしません。税務署の指摘に、それは違う、という人は、おられるようですが、少数派と認識しています。
こ難しい税金の話などよりもっと面白いことがいっぱいある、楽しいことがいっぱいある、お金さえあれば、、というところが本音のようです。
変わらない国民性かもしれません。
それはそれで行かれたら良い思います。
ただ同じことを繰り返して年月が経って知恵が集積しないままなのです。
しかし、税務のルールには相互関連して、経営に大きなヒントをもたらしてくれる要素もあります。
細かいことは専門家に任せるので良いですが、ここという点に関しては知っておかれると役に立ちます。
第18回 のど元過ぎれば・・・2 何も変わりません、
2018年5月30日
のど元過ぎればの話の続きになりますが、流れの上辺は何も変わらないと思われます。
電車に乗れば、アナウンスが聞こえてきます。
<背中のリユックサックを、降ろしましょう>・・・乗客は降ろしません。
市役所の広報車が、走りながら拡声器でアナウンスしています。
<歩きスマホはやめましょう>・・・・・道行く人は、だれもやめません。
<自転車で道路の右かわを走ることは、やめてください>・・・・平気で右側を走っています。
アナウンスする車掌さんや市役所の広報担当の人は、言うだけでお仕事は完了です。言われる人も、言う側も、それでいいのです。問題が起こった時も言いましたで済みます。
何も変わりません。結局、大ごとが起こらない限り、仮に、起こっても根本の国民性は変わらないまま進んでゆくのでしょう。お祭り騒ぎや行事が好きなのです。
唯一、他律的に外から強いられると従順です。終戦後のように。しかし暫くしますと、元に戻ります。
川の流れは橋から見ていますと、同じように流れているように見えますが、底の方では逆の複雑な動きがあるのです。
税制が示すルールには、経済の動きの「底」が動いてゆく先を示しています。従って、物事の表面ではなく底をの底を知ることが、これから先に起こってくる事象が現実になってきたときに慌てない道です。上辺だけを見ていますと、現実を前にして困ることになりかねません。
今年の改正税法で目立つのは、
・生産性向上のための設備投資への優遇
・高度省エネ増進への優遇
・継続雇用の確保と給与UP+教育訓練費の支出促進
・事業再編を円滑に加速することを支援する税制
・データ連携+セキュリテイUP+生産性向上の計画的推進(5000万円以上の投資に限る)
上記の内、最後の・は5000万円以上です。中小企業では、これを進めたくても先立つものがない、ところが多いでしょう。
結局、これからは力のあるところはドンドン伸びて、その先にあるのはM&Aやグループ化です。片方では、滞納処分を受けることになる事業体も多くなります。
先日、ターミナルでテイッシュを配っていました。それは自動車学校とゴルフ場でした。以前は客を断れる、力強い業種でした。大きなうねりが来ているように思います。
第19回 相互に関連する税務の要点を押さえる
2018年5月31日
Q:設備投資が今年の税制改正の一つのポイントであることは分かりました。これを進めるとしますと、どのようなことに注意しなければなりませんか。
A:細かい手順や要件が税法のルールで定められています。その前に、設備投資をすることによって経営上に、どのような波紋が広がるのかを知ることも重要です。
細部にアタマが行く前に大局においてどのような影響が我が社に出るのか、その影響は我が社の強い点や弱い点とどうかかわるのか、などを予見しましょう。
具体的には次のようなことが想定されると思います。
1、設備投資の資金はどのように調達するのか?
2、資金調達を銀行借入で行うのか、リースで行うのか?
3、これ等の調達をした場合、リース期間または償還期間までの会社の資金繰りはどうなるのか?すぐ売り上げが上がるものではな
いのが普通です。
4、収支分岐点が上がることが予想できる。分岐点をクリアーできるキャッシュの確保は、確かなアテがあるのか?
5、資金の調達を増資で行えば資本金が増額され、税制上で「中小企業の優遇規定」の適用を受けることができなくなることがある。
6、中小企業の優遇とは何なのか、理解できているのか?
7、増資に際して発行する株式によっては、一定額の配当を義務付けられる種類の株式があるが、配当を一定額行うことで、キャッ
シュフローの出金が増えるが、営業の資金循環の足を引っ張る可能性はないのか?
8、そもそも営業資金の収支バランスが崩れる限界点は月商でいくらなのか?
9、設備投資が多額であるほど消費税では税金が減額になったり、金額によっては還付される、そのシミュレーションはしてみた
か?
10、設備投資をすることで、従業員の配置や訓練に不足はないのか?
11、人材が集まらない中で、わが社に人は来るのか?人件費の上昇が収支を悪化させることは承知か?
12、人が来るには、福利厚生制度や退職金制度をはじめ、規則的な有給休暇を取る仕組みが必須であるが、備えはOKか?
このように、キリがないほど抑える点が「湧いて」きます。
少し詳しく、見て行きましょう。
第20回 細部の前に大局から見る、大局の前にどこを見るのか、、
2018年6月1日
設備投資を例にとって、細部の前に大局をみて、さらに設備投資を実行するばあいの波紋がどこまで広がるかまで想定することが重要であるとお話ししました。
しかし大局といってもそれは我が社という船の中での、大局です。そういう意味では、我が社という船が航行している海域から見れば、それらは大局ではなく小局かもしれません。
では我が社という船をとりまく経済の状況(いわば航海してゆく場合の天候のたとえられます)は、どのようなものなのか、しっかりと先行きを考えてみることが必要です。それは最悪のストーリーかもしれませんが、これ以上は変わらない現実として受け止めましょう。
その場合大事なことは、
・最小限の想定に留めること・・・・広げてゆけばキリがない世界や架空の世界に近づきます
・確かな根拠がある事実を積み重ねること・・・・風聞は排除します
・統計データを根拠にする場合は、確率や前提でカバーされない場合がある限定を設ける・・・90%が黒という統計でも10%は白であ る部分をみて、根拠にしないとブレてきます
ではこれからの経済の動向はどのような様子になるのでしょうか?
・これまでに作られたインフラは過大であり公共投資は限界、商品やサービスも供給過多が露骨に見えてくる
・人口減のため人手不足は確実
・仮に移民が取り入れられても、言葉の壁がありスキルや経験のいる分野はなお人手不足
・地方の過疎化は止められず、大都市への人口移動はなお続く
・給与はパレート最適の法則どおり、2割は大きく増収しても、8割は減収により相対的窮乏化
・消費税をはじめそのほかも増税の傾向は避けられないので、個々人の財布の中身(可処分所得)が少なくなる傾向
・政治の大変動で原油、金利、為替が大きく揺らぐことが公共料金、銀行融資、株価に連動して影響が出る
これ等が、確実なことではないでしょうか。我が社という船が行く海域の天候は荒れ模様のようです。
第21回 資金調達とその限界点
2018年6月4日
前回に、昨行きの経済の天候は、非常に難しいとの認識が必要と述べました。
では相互に関連する一つ一つについて少し詳しく見て行きましょう。
キーになることは次の事柄です。
1・設備投資のための、資金をどうして手当てするか
2・自社の現在の、(設備投資をする前の)資金にどこまでの余裕があるのか
3・新しい設備を100%生かすための従業員の人数、訓練度はどこまで整っているのか
4・人件費と間接人件費の増加によって、資金の運用は維持できるのか
5・税制上の優遇効果はどれくらいの間継続するのか、または一時しのぎに過ぎないのか
これまでの時代のように、作れば売れる、売れば儲かる時代ではありません。
逆に、下手に作れば・・・製品在庫のヤマ
作り方にミスがあれば・・・不良在庫のヤマまたはクレーム処理にエネルギーを使い、損害賠償請求を受けかねません。
売り先から返品が来れば・・・不良在庫のヤマ
販売量が少なかったり、受注が取れなければ・・・・新設備は遊休設備になり、従業員に休んでもらわざるをえなくなります
従業員の訓練が足りなければ・・・・返品のヤマになります
これ等の要素につぃて良い場合・最悪の場合の両方を良く見定めることが重要です。
一部分のみを見て決定をしてはイケマセン。全体を見なければなりません。
孫子の始計篇第一の最終節に「いまだ戦わずして廟算(シミュレーション)し、客観的に勝算の結果が出れば勝てる、少なければ敗れる。従って勝算が見い出せない場合は戦争(この場合は設備投資)は回避または断念するべきである(木村意訳)」と書かれています。
上記の1から5の要素のどの順番にわが社の状態を見てゆけばいいのでしょうか。
第22回 大事なのは自社に関する現場のナマ情報です
2018年6月5日
Q:設備投資をするべきか、どうかについて5つつの項目を挙げていただきました。どれを優先したら良いのでしょうか?
A:5項目をまとめますとおおよそ、3つになります。
1、資金のこと
2、人(従業員さん)のこと
3、税金のこと
これ等の内、3は設備投資をするかを決めてからの、後回しでよろしいです。設備投資をしなければ考慮することは不要です。
1と2は関連しますね。といいますのは2によって1の規模が変わってくるからです。
1を先に決めますと、設備を導入したはいいが稼働率が不十分になることで、予想通りの数字の結果が得られないのです。
逆に、2を先に決めますと、あとはお金の問題だけだ、と意識が固まってしまって、資金で無理をしかねません。
ということで、まずは社長の理想とされる設備を決めてください。仮の話ですからストレートに思いの通りの設備を想定しましょう。
これを1の資金と2の人的な現実とすりあわせて現実のサイズまで落としてゆきます。
理想の設備にかかる費用を見積もります。その設備の価額に引取運賃、荷役費、外国からの輸入なら関税も加えます。運送保険料などの付随費用を忘れず加えます。
次に機会損失という、現在の設備が入替で稼働しない場合の損失も考慮に入れます。また現在の設備を下取りに出すならその対価を費用から控除します。下取りの対価が出ないばかりか、処分の追加費用が掛かる場合もあります。
整理しますと
新設備費+付随費用+機会損失+(-)旧設備処分費(売却代金)=予想資金の大枠 になります。
第23回 現場のナマ情報をどう集めるか、、
2018年6月6日
Q:ナマ情報は役員である担当者か、会計事務所かコンサルタントに頼んで集めたら良いのでしようか?
A:トンでもありません。そんな他人頼みなことをしますと、正しい情報は入手できません。情報に意図(バイアス)が入ってしまいます。もはや現場の生の情報ではありません。
意図とは社内はもとより社外の意図です。大きな設備であるほど設備の売り手は、あの手この手で社内に手を伸ばして情報提供料やバックリベートなどのエサを撒くことが考えられます。
その販売業者に影響されて、本当は我が社に不利な設備でも購入を進めることを「意図」する可能性があります。その意味では会計事務所は外部の存在ですから「意図」からは離れていると考えられます。しかし技術的な判断は会計事務所では無理なのではないでしょうか。
その意味から、会計事務所では不適切です。
コンサルタントは別の意味で注意しましょう。コンサルタントには2種のかたがおられると考えられます。一つは技術コンサルタントです。技術のことは詳しいですが、それだけにプロとして、良いもの(大型の設備)を(良かれと思ってですが)理想を進める傾向があるのではないでしょうか。後で大きなものを買ってしまった、との後悔に繋がりかねません。
他のコンサルタントは経営コンサルタントと称する人たちです。事例を多く扱っておられるようですが、技術は専門ではないのが普通でしょう。
結局、この段階では、社長が設備の大きさや、諸費用、設置の工程などが一番よく理解されておられるはずです。
別に費用を出し惜しみするのをお勧めするわけではありませんが、外部の人の手を煩わせることは費用が馬鹿になりません。向こうも商売です。
生の情報を取るために、役員さんではなく、現場の末端の従業員さんとよく話し合われる一方、社長自ら、購買先の機種について、詳しく研究をすることで、社長のもとに情報が集まるのです。
現場の従業員さんとじかに話をされる機会は貴重です。我が社の実態である「底」を知ることになります。役員会などで報告される取捨選択され加工された情報より、もっとずっと値打ちのある情報が、しかもタダで得られます。
他人に費用を払う必要はありません。機材について調べられる際に、知識不足を感じられればその時に、技術コンサルに、その部分だけお聞きになりことです。計画の全貌を話してはイケマセン。理由はお分かりですね。
第24回 ナマ情報をもとに予想資金の大枠を知る
2018年6月7日
社長が現場の人と話されたり、資料を研究して設備の価格などを知られますと「予想資金の大枠」が見えてきます。
Q:予想資金大枠が見えたら、人についての練度や得手不得手、伸びしろや、新規人員が必要かについての「現場のナマ情報」を得ることが次にすることですか?
A:そうです。よく理解されておられます。くどいようですが、大事なことは現場、ナマであることです。
Q:人事コンサルタントが心理テストをして、レポートを出してくれると聞いたことがありますが、、
A:まだ、そのようなことを、仰ってるのですか!あなたは余程、ご自分に自信がないか、外部のコンサルタントさんにお金を払いたいのですね。
ここは社長と現場の従業員さんとの真剣勝負の段階なのです。外部の人を入れる必要はありません。外部コンサルタントは、もう少し後の段階です。
良いですか、この段階がなぜ真剣勝負かといいますと、直接話し合われることで、少しでも社長さんの意図や気持ちが現場の従業員さんに伝わる「かもしれない」いい機会なのです。
人は他人に服従することは、本音では嫌なのです。そこはオトナですから面と向かって社長とケンカする人はないと思いますが、社長と従業員の間には、大きな河が流れているのです。河に橋は架かっていません。普通は。むつかしい言い方になりますが「潜在的な対立関係」なのです。
社長と従業員さんとの間の対話は、本音が、どこまで入っているのでしょうか。面従腹背ではないでしょうか。あなたが社長という役職におられるから服しているだけで、あなたという人間に服しているのではないのですよ!服従はしていても心服はしていないのです。目を覚ましてくださいョ。
社長のいないところで、あなたのことをどのように言っているか、わかりますか。大した社長さんでも割引して認識しないとズレがあります。
しかし、仕事に関係する工程を合理化する設備のことを社長が研究し、現場の意見を知ろうとしておられる場合には、本音の会話ができやすいのです。従業員さんもいい加減なことは言われません。社長もここは率直に返してください。
こういう過程を経てこそ、新しい設備が生きるのです。
人事コンサルタントは、一旦対話が終わってから、対話の中味が社長の常識で理解できない場合に限定して相談されても遅くはないと思います。