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事業家Qが読み解く現状と先行き

第8回 事業家Q 税務署から連絡が来た。悪い知らせ。

2019年10月28日

<先週までのあらすじ>

友人たちが事業の撤退をするのをみて自分の事業の先行きを思案しはじめた矢先、税務調査があり3点の指摘があった。3点とも指摘されるまで気が付かない点であったが、税務署は重加算税賦課も検討している。顧問税理士は早々と白旗をあげて修正申告を勧めるが得心行かないQは講習会で知った税理士の意見を聞いたところ主張の道が見えた気がした。

 

  顧問先生が税務署へお願いに行ってくれた数日後、事業家Qに担当官から連絡があった。

 

調査結果の説明)

重加算税が課税されると考えています。

・3点の指摘点について修正申告を勧奨します。修正申告をされないなら更正させていただくことにな

  ります。なお修正申告された場合は(非を認めたので)そのさきの「不服申立て」はできませんが「更正の請求」はできます。 

・この結果について疑問点やご主張があればどうぞ仰ってください。お聞きします。その場合は根拠に

  なる資料を持参してください。

・重加算税の件がありますから「質問応答記録書」を作成予定です。ここへの署名押印は強制しませ

  ん。

 

分かったことは顧問先生の「お願い」効果がなかったということである。

事業家Qは早速、講師税理士を訪ねた。

 

(講師税理士とのやりとり)

Q:税務署へ行って説明しようと思います。一緒に行ってもらえますか?

答:顧問の先生が前の段階で行かれてるので今度は証拠と説明準備を良くして第二波としてその先生と一緒に行くのが良いと思う。申告の際に顧問先生が代理権限証書を添付されてるから窓口は1本が良い

 Q社長が私に代理権限証書を発行することもできるがそれでは顧問先生の立場がない。顧問税理士の解約は即できる(税理士のほうからも断ることも即可能である)ことが最高裁判例で決まってる。しかしそれは最後の道や。その中間に私が「復代理」人になって両税理士で対応する道もあるが顧問先生のOKが必要。これも厄介やろ。

 

Q:税務署に行って説明して分かってもらえん時は裁判ですか?

答:NO たかが税金くらいで裁判は無用。今の「行政」の段階で十分に話をすることが大事。税務署は話を聞かん、帰れとは言わないからここが踏ん張りどころや。「司法」過程に行ったら全く違う世界になる。ここは勝つか負けるか戦争と同じで巨大な会社が修正申告したら株主総会で問題にされる会社や、運命がかかってる場合は別として、裁判など考えないこと。平成30年の統計では納税者勝訴率は3.4%や。無駄な費用と時間使うものではない。

  中国の孫子にも書いてるように「戦争は国の大事死活、存亡の分かれ道であるから、やたらカッとなってコトを起こすものではない。戦わずして勝つこと」と。だからいま話合の場があるのだからココでいうことは言って重加算税と架空人件費の疑いを無しにできたら実質は勝ちである。

 今度のことはアンタの会社の存亡の分かれ道か、違うやろ。借金の退治のほうが分かれ道やたかが税金と言ったのはそのことョ。税務署は質問応答記録を作ると言ってるから「争点整理表」も作って準備万端の様子であるが心配は無用です。

 

Q:決算で減価償却費を少なめに計上した分や、貸倒の未収金があるのを損金に入れないで利益を多い目に計上して決算しているがこれらの損金計上不足分は、この際、在庫の計上漏れの利益追加分から差引いてもらうことはできますか?

答:NO。所得税ではなく法人税では減価償却費も貸倒も会社の決定事項です。決算で会社の意思表示として「損金として経理」していないで、あとから差引くことは税法の定めでできません。

 

事業家Qはこれ以上は無理と考え、顧問税理士と税務署に赴いて調査官に話してみることが第一と思い、翌日税務署に行き、詳しく説明した。材料在庫は修正申告すること、架空人件費ではないこと。3点とも故意ではないから重加算税には該当しないと。調査官は言葉を差し挟むことなく話を聞いてくれ、後日連絡すると言った。そして架空人件費の支払い分が社長のポケットに入っているかもしれない疑いが残ることを付け加えた。

第9回 事業家Q 税務調査が終わった。納税資金の借入を銀行に頼んだら、意外な返答が

2019年10月29日

(税務署からの回答)

 事業家Qの説明が真に迫っていたからか、税務署はQの説明を聞き入れてくれ重加算税は課されないことになった。自分が税務署に来ないで、顧問税理士だけを「代理人」として税務署に赴かせたらこんな結果にならないと思った。人任せにしないで現場を良く知る自分が説明することがいかに重要かが分かった。満州帰りの父の教訓の通り、ココという時は人を頼ることは筋違いと痛感した。

 

 ただ1点、退職した従業員Aへの人件費についてAが実在したことは寿司屋の領収書と写真で認められたが、Aに支払った4ケ月分の給与80万円が全額Aに渡った証拠がないことから「80万円の一部を摘まんで自分のポケットに入れたのではないか」といわれた。

 摘まんだと言われたときには頭に来そうになったが「このAさんに限って給与の受取が存在しません。社長はそのようなことをされないことを証明できない以上、仮にですがAさんが「悪意で」給料もらっていないとゴネてきたらどうしますか。何もご自分を守る証拠はないでしょ?税金以前の問題ではないでしょうか?と言われて返す言葉がなかったQは講師税理士に相談した。

 

  講師税理士は真偽不明の場合の立証責任はアンタにはない。税務署に立証責任があるから、税務署が銀行調査するなりして調べて課税したらよい。アメリカは納税者がズルをしていないことを自ら立証しなければならないが日本は真逆である。そこを押さえて落ち着くこと諭された。

 

  そのとき従業員の一人がAと仲が良かったことを思い出した。彼を介してAとの連絡がつき80万円の全額はAが確かに受け取ったことを説明できた。こうして税務調査は終了した。

 

(納税資金がない)

 1200万円の修正申告をした結果約40%の480万円の納税資金が必要になったが、今月末の買掛金の支払をして借入金返済が自動振替で預金口座から出てゆけば、自分の給与を来月回しにしても480万円の準備はできなかった。そこで銀行に行って納税資金を借り入れできないか相談した。が、銀行は御社にはもう貸せませんと胸を張って言い放った。

 

 その理由は「お宅の決算書はいつも少し黒字ですね。この際だから申し上げます。減価償却費が計上不足であることと売掛金の回転日数が異常に長いこと、なので売掛金に滞留債権があることは数字を見れば銀行として分かります。決算書の「減価償却計算書」を読めば償却不足が分かります。

 それに仮払金の未清算が増加する一方です。その意味で御社は信用がないのです。」「銀行としては、いっそ赤字が実態なら、赤字の決算書を見せていただくほうが安心できます。

 なぜならそれが実態であれば銀行も協力して一緒に『本当の黒字会社』になっていただくためにできることはします。中途半端な決算書で宙ぶらりんの会社より、一旦落ち込んでも地に足つけて這い上がろうとする会社さんが好ましいです。実態出さない会社には、多分ですが、シワ寄せが内に内にと浸潤していると観察しています。

 

 これからは不況に入りますから、フェイクな決算書を毎年毎年出すような会社さんにはもうこれ以上は貸せないのです」

 

  事業家Qはこれまでの自分の方針が誤っていたことを覚り、税務調査前に講師税理士を訪問した時のことを思い出していた。世界同時不況が近いうえ、人口減のわが国は活力をなくすると言われたこと。そのうえ政府の廃業の予測記事も思い出してぞっとした。

 

<次回予告>

廃業か事業継続かの答を出さなければならない事業家Qは、その前段階として今の顧問税理士を断わることを考えた。

第10回 事業家Q 税理士の変更を考えてみたが

2019年10月30日

 銀行の融資不可との回答から、これまでの決算方針がよろしくないことを知り、これを進めてきた顧問税理士に今後も相談することはやめたいと思った。たしかに人当たりはソフトである点が良かったが、このたびの調査での骨のなさが露呈して急速に色あせたことに加えて、今後の事業の持って行き方を相談することに疑問を感じた。

 

念のため講師税理士にどうしたものか、と相談した。

 

講師税理士:そんなピタッと来る税理士はいない。消防のホースの口径ではないから、ピタッとしなくても、そこは人間同士なので自分の期待に応じてくれるようにある意味で育ててゆくことが重要と思う。

 提案がないとか、とっつきにくいとかいろんな事情でしょっちゅう税理士を替える人もいるが、結局うまくゆかない。その前に我国の税理士には大きく分けて3種類の系統がある。大体人数は3等分されている。税理士資格への入ってくる門が違うのや。

 このこと知っていましたか。知らんかった? 世間の人は「税理士」という資格で同じと思っておられるけれど違います。良い悪いではなく特徴があると考えて下さい。

 

 今の先生がどういう経路から税理士になられたかをお聞きになったら良い。系統が異なることをご存じないから(資格の入り口が一本)と思っておられるから皆さんお聞きにならない。その結果、期待することもズレる。資格までの道筋を知ればこそ、特徴を生かせる。

 

 特徴とは、一例だが、いまは電子申告が普通なのでコンピュータが使えん税理士はいないと思うが、その中でも「クラウド会計に詳しい人」、「会計分野のデータチェックと内部統制設計」が得手な人とか「法人税の適用・解釈・税務調査対応」に長けてる人、「相続計画と相続税準備」で当たった事例が多い人など各分野に分かれてきている。例えでいうと一人の医師が全分野見れないと同じになってくる。だから税理士の筋が読めないとその能力を生かせないことになる。

 

 念のため再度言いますが力量の差はないのです。しかし得意分野の差がある。得意の逆は不得意であるが、ここは努力して皆さんカバーされてると思います。

 3タイプとは一つが1、税理士試験5科目合格者、2、税務職員OB、3、大学院の学位で資格取った人など。3の「など」が複雑で、制度が変わって昔より厳しくなり、学位だけでは資格は取れん。大学院の会計系統と税法系の二つを出ても2科目の試験に合格が必要です。1と2と3複合している場合も多くなってきました。

 

 1は受験していない科目には弱い傾向があります。私が試験受けたころは消費税がない時代だったから消費税法という受験科目はなかったので正直な話、消費税法は弱い部分がある。相続税法は選択受験科目なので受験しない人もいる。

 2の人も官庁での担当分野とそうでない分野での強い弱いがあるかもしれない。但しOBの人の中にはその分野について多くの実例に当たってこられたから優秀な人も多い。税理士会の研修の講師などもされておられる。3番目のカテゴリーの場合は論文を書くから論理的な思考に強いと思う。

 

 結局、テキを知るには、試験合格ならどの科目に合格したか、税務署OBならどの部署におられたか、大学院で修士論文がパスして資格を得たなら論文指導の教授の名前とどこの大学院かが知れたらネットでその教授の専門が分かるから税理士さんの筋がみえてきてこちらが求めることにフィットするかしないかが分かる。 

 

 テキを知ったら次は己を知らないかん。あなたが顧問の先生に求めることがどの点か、はっきりさせることですね。今後の事業の方向について税理士さんに何を求めるのか、まず社長であるあなたが期待像を明確にされたらよろしい。

 

 税務調査で少し頼りない感じがしても、それは税務調査の時だけかもしれない。調査は常時あるものではないから調査対応の面だけで決められないと思う反面、これからAIの時代になっても税務調査はなくならず、しかも人間と人間の交渉なのでAIには取って代われない。行政段階では(司法過程の裁判では憲法が影響してガチガチの文理解釈であるのに比べて)解釈に幅がある。それで税理士によって結果も異なるので、場合によっては他の税理士を紹介することもできるよ。

 

<次回の予告>

事業家Qは税務調査が一段落したいま、自分が答えを出さなければならない問題をまず整理することにした。税理士の件はそれからで良いと思った。

第11回 事業家QシリーズPartⅡ 先行きの課題  

2019年10月31日

 事業家Qは自分が感じる「不安」がどこから来るのか自分の心を静かなところに行って覗いてみた。不安は大きく分けて「自分と会社の先行き」と「この国の先行き」にわかれることが分かってきた。そしてこの二つは根底で通じていると感じた。

 

 後者のこの国の先行きに関してみれば政治のことより景気や経済の問題が多くを占めていた。どちらも自分でどうすることもできない領域ではあるが正確な認識が大事であること、誤った情報がマスコミから流されるかもしれない点をどうして打ち破って、できるだけ正確な判断ができることを心がけるしかない。大東亜戦争終結前に比べれば世界を瞬時に情報が駆け巡るのを各自があるレベルまでキャッチできるから、自分さえ情報に気をつければこの問題はクリアーできる。

 

 しかしできれば、このような点に関しても意見を言い合える税理士が望ましいとも思ったが「他人に多くを期待するものではない。失望するだけ」との警句が彼の小耳に囁いたのでこの希望は打ち捨てた。

 

(自社に関する先行きの不安)

 第一は自社の立ち位置が分からない点である。深刻な病気に罹った場合、進行上のどのステージにあるかは医師が説明してくれる。不治の病であれ、盲腸であれ、眼ばちこ、であれハッキリするのにくらべ、自社が重態なのか軽い状態なのか恥ずかしながら自分で経営していながらよくわかっていないのが根本的な点であった。その意味で惰性で今まできたことに気づいた。

 

 そこで「気になる点」から書き出した。その時、講師税理士が講演で「経営者は自社の医者でなくてはいけない。もちろん手術もできないといけない」といっていたのを思い出した。少し距離を置いて自分の会社を見つめて列挙した。

 

1、貸借対照表の中味が自分が納得できる内容か?

2、不要なもの、自分が分からないものが勘定科目とその内訳書にに記載されていないか

3、不要と考えるものなどが削除されたら貸借対照表はどんな姿になるのか

4、将来への見込みはあるのか?従業員への退職金は出せるのか?

5、自分の先行きの生活は維持できるのか?

 

その先、会社を最悪の場合「手仕舞い」するにはどのような出口があるのかは税理士に聞くしかない。

 

<次回の予告>

事業家Qに見えてきた本当の姿

第12回 事業家QシリーズⅡ 貸借対照表がわからない

2019年11月1日

Qは早速、決算書のなかの貸借対照表を見直した。疑問に思う点を書き出した。

 

1、資本金という「お金」があると書かれている。資本金は5000万円であるが現預金には全部集めても500万円しか計上されていない。4500万円のカネはどこにあるのだろうか?

 

2、そのうえ繰越欠損金1000万円と資本金の下に書かれてある。文字面からは、どうもこれまでの赤字のようである。資本金5000万円から1000万円を差引くと4000万円になるが預金の500万円に届かない。繰越欠損金が4500万円なら5000万円-4500万円=500万円に合うが、そうはなっていない、なぜ?

 

3、売掛金1000万円の半分は焦げ付きである。Qはこの際、売掛金を鉛筆で500万円に書き換えた。気持ちがスッとした。

 

4、在庫3000万円だと、これも半分がオシャカ(死んでしまって価値がないとの意味)である。半値に書き換えた。

 

5、有形固定資産1000万円のなかの使えない旋盤がある。この金額は200万円なので有形固定資産を800万円に書き換えた。

 

 書き換えるたびに心の奥に溜っていたヘドロが溶けてゆくように感じた。何とも言えない気持である。Qはここでビールが飲みたくなった。ビールが体に入るとカッとしてきて「こうなったら、どんどん減らしたレ」と思った。

 

6、次に出てきたのが無形固定資産。内訳は電話加入権やと何やこれは!思い出した!その昔、電電公社で電話を引いた時の支払や!、事業拡張で回線数も増えたがいつのまにか500万円やと?こんなもんお金にはならん。こんなものを計上するのか会計基準では?そうや、ゼロにしてやろう。この際カネにならんものは消してしまえ。事業家Qは2Bの鉛筆に取り換えて、力を込めてゼロとグッと筆圧も強く書き換えた。また気が晴れてきた。

 

、長期貸付金、これは昔在籍した従業員に家族が病気やいうので入院代の足しに貸した金額100万円や。退職するとき返してもらうはずが回収しそびれた分や。人情から回収できんかった。人は私Qを冷酷な人間と云うが、私の真意は誰も分からんようや。経営者は孤独やな、、今更回収できんのはよくわかっているので顧問税理士に回収不能の処理をしてくださいと言ったのにアイツ、赤字になるからアキマセンとほざいた。これもゼロや!

 

8、投資有価証券なあ、この中味の一つ100万円は昔に出資した友達の会社や、既に倒産してる。他の一つは生命保険会社の株式100万円、今売ったら半値やな。でも投機目的でない場合は時価をつけたらだめと顧問先生に言われた。売却時に出た赤字は良いが、売るまではたとえ幾らに下がっても購入時の取得価額でゆかなければならないと。これは上がる場合もあるかもしれないから、このままで行こう。

 

 

この辺でもう1本ビールを飲みたくなったQは勢いよく栓を抜いた。

 

8、繰延資産やて、ナンヤこの100万円は。昔支払った相手やないか。なぜこれが資産に上がるのか?

整理しよう。

 

 以上のように減額した合計金額は3000万円になった。Qの感覚ではこのあたりが自社の資産の実態と感じた。

 同時に資本金5000万円という当初の投下資本の「お金」と現預金500万円の差は、投下された資金が材料に化け、生産設備になり、支払で減少し、製品が売れて入金して増加して潤い、この繰返しの循環運動の結果、預金も含めて500万円になったことが少しわかった

 これまでの負け越し(繰越欠損金)1000万円を引いた残額4000万円から今日のゴミ掃除3000万円分を引いたら残るは1千万円しかない。寄り切られ寸前の状態の我社の星取表は1勝14敗ダア。

 

<次回予告>

   引続いて負債の部も見直したが、資産の部のようにスパッと金額を切り下げることはできない。すべて債権者という名の相手がある。更に、自分の手持金を資金繰りのため自社に貸付けた「社長借入金」には困ることになる。

第13回 事業家QシリーズⅡ 負債の部を見直す

2019年11月5日

<先週までのあらすじ>

 税務調査が在庫の修正申告をするだけで終了したので、銀行へ納税資金を借り入に行ったQは自社の経理が杜撰であるため完全に銀行の信用をなくしていることを知った。そこで自らの手で決算書の中味を見直そうと考え、資産の部を見直した結果3000万円の過剰な計上額を発見し大ナタを振るって整理した。

 

(見直されたQ社の貸借対照表)

 

資産の部 1億円    負債の部 6000万円

      ↓    純資産の部 4000万円→1000万円

    7000万円   (資本金   5000万円)

           (繰越欠損金 △1000万円)

            (新たな損失 △3000万円)

 

 事業家Qの手で資産の部から3000万円が整理されたため純資産の部は同額が減少し1000万円になっている。この結果Q社は債務超過にはならなかったものの、大きく4000万円の資本割れになった。

 

(負債の部は資産の部のようにはゆかなかった)

 Qは気合を入れるため3本目のビールの栓を抜いて負債の部の見直しに入ったが、ここは手ごわかった。

 

負債の部6000万円の内訳は以下の通りであった。

 

買掛金:900万円、預り金:100万円、銀行借入金:2000万円、社長借入金:3000万円 計6000万円

 

 買掛金は材料などの未払額であり勝手にこの金額に大ナタを振るえば今後材料の仕入れはできないので手は付けられない。預り金は従業員などの給与から源泉徴収した所得税、社会保険料、雇用保険料、市民税特別徴収額である。期日までに各役所に納めるものであり、銀行借入金ともども勝手に金額を変えることはできない。

 

 資産の部のように自社が資金を払って自己のものとしたため、それがゴミと思えば勝手に数字をゼロにする自由さは負債の部には一切なかった。1円でも勝手なことはできない。相手は債権者である。いわばQ社の生殺与奪の権限を持っている。

 

 唯一自由になるのは自分がこれまで長年の間、自己資金を会社の資金繰りのために注入してきた金額の累積である「社長借入金」3000万円である。大ナタふるった資産の部の整理額3000万円と同額であるのでこの貸付額の放棄も考えたが、長年会社のために営々と支援してきた金額の塊を放棄することはためらわれた。

 

 以前に顧問税理士からQの相続の際には社長借入金3000万円Qから見れば会社への貸付金であるから相続財産として相続税がかかること、相続税法では財産評価基本通達で、破産または事業廃止、休業以外は相続財産として課税することに定められていること、会社が危機に瀕していてとても返済できない状態でも税法通り執行されること、このような社長借入金への課税を取り消してほしいとの裁判がいくつも起こされたがすべて敗訴であると聞いたことを思い出した。

 債権放棄はためらわれる、しかしQに返済されるアテもないうえ最悪の場合は相続税課税か、、しばらく考えたが、自分の相続はまだ先のこと思い、このままにして再建計画を立てようと考えた。

第14回 事業家QシリーズⅡ 再建計画を立ててはみたが、、

2019年11月6日

(銀行借入金が重荷) 

こうして整理してみると自分が会社に貸付けた3000万円は資本金のようなものなのでスグ返済する必要はない問題は銀行借入金2000万円であり、この支払である。もし銀行から借りた2000万円が無ければ、無くなればこれからも経営してゆく自信はある。これをなるべく早く完済したい。気が早い性格のQは、約定期間より早く返済したくて仕方がなかった。

 

(製品別の損益計算書を作成してみた)

 早く返済するにはもっと「利益」を出すことと思い、自分で製品別に損益計算書を自己流で作ってみた。製品別損益計算書などこれまで考えもしなかった。製品別ではなく全体の損益計算書について顧問税理士が説明してくれる時も聴いたフリをしていた。

 

 しかし自分で貸借対照表の資産の部のゴミを捨て、負債の部のキビシイ現実を知ってからは違った。これから生き残るために真剣であった。大きな模造紙に自社製品ごとのイラストを描き、その下に売上高、製造原価、粗利益 益率 部門別人件費、製造経費を列挙して全体を見直し、念のため数字の点検もしてからEXCEL表計算で製品比較表に整理したうえ、製品ごとの粗利益を集計してから営業費・管理費を控除することで、どの製品の売上高をいくらまで伸ばせば利益が出るかのシミュレーションを繰り返した。

 

(柱になる製品が見つかったが、最終の赤字は直らなかった)

 その結果、或る製品とその保守サービスを組合せばその予測粗利益が良い数字なることに気づいた。

しかしそこから営業費管理費を控除すれば利益は出なかった。Qは行き詰まった。

 

どうしても直接人件費に近年に急上昇してきた健保・厚生年金をはじめとする間接人件費を加えると成り立たない。

製品群を縮小するので、工程は短縮されるため、現状の人員では過剰であることも事実であった。

 

<次回予告>

講師税理士を訪問した事業家Qは自分の計画の致命的な欠陥を知らされる。

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