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第9回 新年特別版 兄丸出羽守 久しぶりに登場 その3

2020年1月16日

:ではそろそろまとめとして今後の論点になるものを並べていただくと分かり易いです。

:キミもよく気が付くようになりましたね。そうしましょう。

 

:ありがとうございます。では、お願いします。

:ではでは、

・前々号での税務調査手法の変化、重加算税の加重措置に見られるように、大量のデータ解析で確度の高い絞り込みが可能になるため、違法行為に対しては罰則を厳格に適用されます。重加算税の加重措置が平成28年に定められました。

・AI時代を見こした国税庁の情報がホームページに示されています。これを見ると司法より行政(税務)で、特に現場でどのような変化が起こるのかに注目したいです。

 嘘がAIによって通らなくなります。税務調査の現場でも変化があります。イキナリの調査(現況調査)や反面調査、内観(偵察)調査は立証のため重要になると考えます。

 

税務調査の重点は不正大型同族です。前二つは当然ですが三つめの同族内での取引や資産移転が対象になります。

 

相続についての年代ギャップが出てきます。共感型人間である親は子や孫に資産を残したいが、回避型人間の次世代は親の財産を引継ぐことを有難迷惑(現金はともかく不動産は歓迎されない。このため空家がもっと増える)に思う傾向が相談例でも現れてきています。

 お金がないことの惨めさや恐れをバネにしてきた私などの世代と、豊かな時代に不自由なく育った世代のギャップがあり最近の民法(相続法)の改正も絡んで新たな問題のタネが生じるでしょう。結局、相続するより寄付、遺贈の傾向が浮かんできます。親世代は財産の処分を早めて身動き取れない状態の解消が第一です。複雑化するような節税は逆方向です。 

 

・相続で150万円までは被相続人の口座から相続人でさえあれば引き出せるように民法が改正されています。早い者勝ちになり遺産分割の足並みがそろわないと争いになりかねません。関連して遺言制度が使いやすくなりました(自筆遺言で家裁での検認不要型は既に施行済、法務局での遺言保管制度は今年7月1日からです)。

・銀行借入のために粉飾した会社が行き詰まる傾向がどんどん現れます。これこそ景気よさそうな人でも見かけによりません。決算書を見ないと外見ではわかりません。質の良くない中小企業は激減するでしょう。私は、倒産情報が集積されるサイトは日々チェックして業種の傾向を見ています。

 

・経済格差が拡がっていますが平成30年度の所得税制改正された給与所得控除、基礎控除などの改正が今年の源泉徴収から適用されます。源泉徴収税額表も今年から変更されています。毎月お給料を受取れる人以外に多くの人に働き方改革のため影響があります。商売している人、日当で働く職人さん、非正規や派遣で働く人や副業を兼ねる人々に所得税・住民税の改正は広く関ります。

・セブンイレブン、ファミマで本部が加盟店に無断で発注して本部担当者の成績を上げ、ツケを加盟店に回した事件が2日前にありました。この傾向はもっと増えますがAIが役立ってそのようなことができにくくなるでしょう。税務調査が契機で悪事がばれることもあります。

 

私が子供のころは終戦後で、周りにおなかを空かした人達が多くいました。昼は学校給食がありましたが、夜はご飯一杯ずつしかあたらない近所の家や、友達のところへ遊びに行ったら、ご飯が食べられないから起き上がれず家族が布団で寝ている家や、傘が買えないため雨の中を走って登校してきた同級生もいました。70年経ってその頃に戻ってゆき、生きてゆくのが大変な時代になる兆候があります。

 そこへAIによる精緻な税務情報が備わりますから、これまでのように「エエ加減で何とかなる」との考えは通らなくなってゆくと思います。現に令和2年からは銀行には預金者情報を、株式振替機関には加入者情報を番号で一発検索できるように法改正されています(国税通則法74条の13の2)。

 滞納した場合は国税徴収法75条で3日間の食糧・燃料と衣服、寝具、畳、建具以外は差押されますから4日目からは口に入るものがなく非常に困ることになります。AI技術の発達が「生活」を変えてゆきます。

 

・これからも目立たないゴミのようなニュースからでも税務調査とその対策ペナルテイ(加算税)をかけられないための処理方法に結び付くものがありますので最新の判例、裁決例も取り入れてご紹介します。

・最近、税理士先生からのお問合せも増えてきました。我々は一つ対応を誤るとすぐ損害賠償請求を受け行政処分されかねません。若い先生が経験が少ないためにお困りになられないように、できる範囲で応援させていただきます。場合によってはその先生と復代理の立場で解決のお手伝いさせていただくこともあるでしょう。

 

:ワタシとしても今日はお話を聞かせていただき随分勉強になりました。ありがとうございました。

:こちらこそ今年もよろしくねまた遊びに来てください。

 

<次回予告>

 兄丸さんとの対談はこれで一旦終了します。

次回<Q6>からは相談にお答えする形式で進めます。問いに対してだらだらとした回答にならないようにYes、Noの答と3つの文章で要約します。これで不足と思われる場合には補足させていただきますが、3文で収まれば何よりです。要は、どのように行動すれば良いかが分かればこのブログの目的は達したと考えます。短かく、を心がけます。

第10回 Q6:税理士開業2年目です。これまで税務調査の経験がなく不安です。いきなり関与先に税務署がくることはありますか?

2020年1月17日

A:はい。但し原則はイキナリ来ることはありませんが、一定の場合、イキナリはあります。

 

、原則は国税通則法74条の9で税務署は、実地の調査をする時には、あらかじめ納税義務者(税理士がついている場合は税理士にも。納税義務者が、通知は税理士へと指定した場合は税理士にのみ)、調査目的や対象税目、場所などを事前に通知しなければなりません。

 

、但し、その納税義務者の申告内容、過去の調査結果や営む事業に関する情報、国税庁が有する情報から見て、事前に通知することで正確な税額の把握が困難になると認める場合は通知は不要と国税通則法74条の10で定められています。

 

、更に具体的に平成24年個別通達4-9でどのような場合に通知が不要なのか書かれています。

 事前通知をしたことにより、調査資料の不提示、不答弁、逃亡、帳簿の破棄、隠匿、改ざん、従業員や取引先への不協力の要請があるかもしれない場合です。但し「現金商売をしていることのみをもって事前通知を要しない場合に該当するのではない」と4-7通達で念を押されていますが、現金取引は足がつきにくいので事前通知がない場合も多いです。

 

 以上で答えになったでしょうか。上記は条文を極度に要約していますので是非、法律と通達の条文に当たられることをお勧めします。

 

補足説明:ここで補足させてください。

・上記の第2文には「情報」という言葉が2回出てきます。国税庁はKSK(国税総合管理)システムを充実すると広報しています。AIのデータ処理は大量データの解を求めることで最適解を得る能力が著しく向上しますから、その納税義務者に関する取引データの分析で?オカシイというフラッグが立つとマークされるのではないかと思います。

 

KSKに集まる情報にはフェイク情報も入っていると思います。取引に関する「資料箋」自体が意図した誤りである場合も考えられます。これを「正しい」として「情報」化されるとオカシクないのにオカシイと判断されます。

 

・私見ですが、このようなことがないように今後は「反面調査」が多くなると思います。

納税義務者の取引先への調査を反面調査といいます。この場合、事前通知は不要です。但し反面調査先へは「反面調査である旨」を明示することになっています。それでも税務署が反面調査に行くことで、その納税義務者は反面調査先などから「税務署に調べられてはる」と噂され信用が落ちることも考えられます。

 名のある大会社でも下請け先などに水増し請求させてその金額を支払つた後、キックバックさせて裏口座に貯め込む事例は多いです。下請けや外注先は逆らうと取引停止になりますので裏金作りに協力します。この動きの隠された真相までAIで把握できるか疑問です。

 ともあれ(税務署は納税義務者と)争いになった場合に備えてナマの証拠を掴むために、AIが進化するに伴って反面調査が増えるのではないかと考えます。

 関与先に関して事実でない情報が税務署に集積することを防ぐためにも、税理士は主張すべきは主張して事実でない税務記録を上書きしなければなりません。

 

次回予告>

強化された重加算税について説明させていただきます。

第11回 Q7:引き続いてお聞きします。重加算税が課されるのはどのような場合ですか。

2020年1月20日

A:事実を意図的に隠した(ついうっかりミスではない)場合に課されます。

 

、申告内容に仮装または隠蔽がある場合です。当然の解釈として心に誤魔化す「意図」が必要で「過失により仮装隠蔽しました」は日本語としてあり得ませんから、に「誤魔化すのだ」との意図と、その意図を外部からうかがい得る行動が必要です。過少申告の事実を調査官に指摘されても、初めは誰でも「ワタシはシリマセン」ととぼけたり、「経理係ガゴマカシタ」と逃げを打つたり、はなはだしい経営者は「税理士がやったことヤ」とほざく経営者もいます。ここで人間のゴウが表面化します。

 

、仮装・隠蔽とは帳簿・書類・領収書類の虚偽記載(二重帳簿の作成を含む)、破棄、隠匿、改ざん、取引先と口裏を合わせてのフェイクな帳簿・書類・領収書類の作成、意図的な集計間違い、意図的記録脱漏や計上除外、わざと資産勘定に上げなかった架空資産から生じた利息や賃貸料の不計上ならびに帳簿に計上しなかった裏金から役員に賞与などを払ったこと、同族会社の株式所有を架空の名義人に分散した場合のほか使途秘匿金課税がされた場合などがその例です。

 

、支出金額に「使途不明金」があるうえ帳簿書類の破棄、隠匿、改ざんがある場合も重加算税の対象になります。

 

補足説明:

<意志と証拠>意志があって不正をしてもその事実を証拠で固めないと人間はしたことを認めませんから証拠が不足しておれば詰め切れません。税務調査の狙いはココにあります。そのために反面調査も行なわれます。

 

<リトマス試験紙代わりに税理士を騙せたら、、>最近の判例ですが不動産の賃料収入があるのに、税理士に隠して申告書作成を依頼した納税者が重加算税を課されました。この申告資料を過失でウッカリと税理士に提示するのを忘れたのなら重加算税はかからなかったかもしれませんが税理士から「この所得の有無について質問を受け資料の提出を求められたにもかかわらず」税理士に秘匿し、何らの資料を提供することもな」かったので重加算税がかけられました。

 

・この税理士は質問し資料の提供を求めたからよかったものの、それをしなければ税理士は依頼者から「オマエが悪い、お前の責任だァー」と責任をかぶせられることになりかねません。オマエが悪いと税理士を指さす人差し指の下の3本の指が己自身を指していることに気付かないのが人間の業(ゴウ)です。高級寿司屋やゴルフ場のレストランなどで「税理士が悪い!」と声高に赤ら顔で言っている中小企業のオッサン経営者らしい人を見ますが人差し指の下の3本の指は大丈夫なのでしょうか。

 

・争いになることを避けるため弊所では着手時に「受任範囲証明書」にどの段階からの資料を預かって申告書を作成したか(例えば売上の集計は依頼者がして、そこから後の所得計算から税理士が行ったのか、或いは日々の伝票を依頼者から預かって売上の集計からを税理士がしたのかで責任範囲は異なります)、更に「重要事項説明書」を申告書完成時に依頼者に示して問題の起こりそうな点を解説し、その点についての処理と根拠の説明を行い、確かに税理士の説明を聞きましたとの署名を依頼者に求めるようにしてきました。

 随分過去のことですが税務署の調査のほかに、警察からも、ある納税者(すでに解約)について保険詐欺の疑いで調べているからと刑事さんが、私が詐欺を教唆したとの疑いで調べに来られました(依頼者が自分の罪が軽くなるため警察にそう言ったようです)が、上記の書類をお見せして疑いは即なくなりました。非を認めないばかりかツケを他人にフルことをされかねないため、先生も十分に自衛の対策が(釈迦に説法でしょうが)必須であると考えます。

 

<次回予告>

予告なく調査に来られて、どの場所が調べられるのかについて説明します。

第12回 Q8:予告なく税務署が調査に来た場合は、どこを調べられるのですか、ご体験をお教えください。

2020年1月21日

A:急所を調べられます。

 

1、急所とは事前通知をしたならば、(納税者が準備するので)確認することができない部分ですから、現金の有高預金通帳の存在(仮名預金通帳があるかも)、在庫の有高、機械や車両など固定資産の実在、従業員数(制服を着ていない従業員の内訳、外注先からの応援や出向、臨時雇用の識別)、定休日の店内張り紙(年中休み無しと張り紙にあるのに売上帳には定休日の売上記載がないことがママあるため)、PCの台数(LANになっているかスタンドアローン<単独機>か)、帳簿の保存状況などです。

 

2、その目的を達するため(全員の)、金庫(調査官は金庫だけに現金があるとは思っていませんので、現金がありそうなところも)、ロッカー倉庫が見られます。裁判になった京都の例で1階が店舗、2階が住居のばあい住居のタンスを調査官が見ようとしました。奥さんは「やめとくれやす!そこにはワテのズロースが入ってますさかいに~」と激しく断ったのに強行したとかで訴えられ、税務署の敗訴になりました。事業と関係がある場所との区別がつきにくいところは調査官も配慮するようになっていると考えます。但し投書などがあったことが推定される場合は調査官も勢いがあり、横で立ち会っていても馬が鼻から息を強く出す感じの調査官もおられました。

 

、査察ではなく納税者の同意を必要とする(任意)調査ですから机や金庫の中を改める場合も必ず会社や店の人に中味を出させて確認します。調査官が直接机の引出しに手を突っ込むことはありません。また納税者から「この引出を開けるのは止めて下さい」と言うことはできますが、調査官に「なぜ開けてはいけないのですか?」と理由を聞かれます。引出しなどの中に置くべきでないモノ、不信感を持たれるようなモノは置かないように普段からしましょう。机の引き出しからアダルトビデオや大人のおもちゃが出てきたこともありました。問題になりませんでしたが手紙・葉書類は見られます(読まれます)。良く整理しておきましょう。

 

補足説明:

・<私物を見せることは断れるか>NOです。「事業に関する帳簿書類その他の物件」に私物も入ると国税庁は考えています(一般納税者向けFAQ、問7)。趣旨は「事業関連性が疑われる私物」と解釈すべきと考えますので先ほどのアダルトビデオには事業関連性はありませんから問題外ですが、会社の法人税調査で「社長名義の個人預金通帳」は個人の私物ですが法人との事業関連性がありますから調査対象物でしょう。

 

・<PCは調査対象か>Noです。帳簿がPCで作られた場合はデイスプレー画面で調査官が確認できるようにして示すルールになっています。調査官から要求されたらプリントして渡しますが調査官が携行したUSBにコピーして渡すことは、どうしてもプリントアウトできない場合に限るとの見解もあります。実際上プリントアウトする量が多い場合はUSBにコピーすることになるでしょう。USBに入れて持ち帰った場合は「調査後確実に破棄する」となっていますが、穿って考えれば他にコピーしてから破棄することも考えられないではありません。破棄してUSBが空であっても、その前に他の媒体への(あくまでも調査官個人の行為ですが)転写の可能性が心配です。他の役所での漏洩が報道されています。

 なお電子帳簿保存法で求められているPC一式はYES(調査対象)です。

 

・<体験から>昔のことですが、朝9時ちょうどに私が事務所にいたら、顧問先の小売チェーン店から調査官が3名来店され横におられます、税務調査に来たと言われていますと店長スタッフから電話がありました。調査官の氏名を聞いてすぐ税務職員録で官職を確認し、その中の上席の調査官氏に電話を替わってもらい、顧問税理士である、申告書に代理権限証書を付けてあるから立会をさせていただく、今からそちらに急行するので私と当所の担当者が到着するまで着手は差し控えていただきたい旨伝え、調査官の了解を取りつけ車で出かけました。しかしタイへンな渋滞で車は進みません。9時50分頃に上席氏から店員を経由して私の携帯に電話が入り、開店前に現況調査を済ませるつもりで9時に入店したが間もなくこの店の開店時間の10時になる。開店してお客が入ってきてからレジの周りで我々が調べていてはお店にとって不都合ではないでしょうか、つきましては木村先生は来られていないけれど店の昨日の売上の現金と今日の残高だけは開店前に確認を済ませたいが宜しいか?との電話でした。まことに筋の通った話であり、賛成しました。

 私たちが到着したのは10時15分頃でした。調査官3名の身分証明書を確認させていただくとともに税理士証票の提示(これらはいずれも携行が法定されています)をして調査目的の確認、事前通知をしなかったことの理由などを穏やかな空気の中でやり取りしました。税務署の目的は現金と従業員数、在庫の現況確認でした。私が着いた時には既にこれらは終了していましたので、現況調査はこれにて切り上げ、帳簿調査は日を改めて行っていただくことを申入れ、了解を取りましたので帰っていただきました。

 時々税理士同士の会話で、そのまま腰を据えて帳簿調査に移行する話がありますが、事前通知なしの場合の目的を達せられたら調査官氏には引上げていただかないと客商売である店側も困ることになるのでこの点は重要で税理士として譲ることはできません。帳簿調査は店頭でなく帳簿書類がある場所で後日、双方の日程をすり合わせた日に行われました。

 

 *上記の記事での法令の解釈は筆者個人の見解です。

 

<次回予告>

 重加算税の「重」の意味と過少申告加算税との税率の違い、さらに「加重」重加算税が課された場合はどうなるかに触れます。

第13回 Q9:重加算税の「重」の字の意味は罪が重いという意味と罰金の負担が重いという意味ですか?

2020年1月22日

A:そうです・・・・・ただし罪、罰金という表現を使われていますがこの点は補足が要ります。

 

1、加算税に比べて「罪」や「罰金」は刑罰(刑法犯)であり脱税事件として税務署が告発し検察官により刑事訴訟法によって司法で裁かれた結果、刑法総則の適用で負うもので、加算税はそのような手続きを踏むものではなく「過ち料(木村の表現ですがペナルテイに近いです)」として行政(国税通則法)で課されるもので、悪質なものは「過ち料」では済まず、個別税法で刑罰の対象になります。罪や罰金と異なり、加算税が課されるプロセスは税務署のみです(ここでは刑罰は説明から除きます)。

 

2、申告してその内容が誤っていたら不足分を納税しなければなりません。その時に基本は過少申告加算税が課されます。そうでないなら、誰でも少なめに申告して、不足額があることが分かってからその額を納めることになり、正直者がバカを見ることになりますから過少申告加算税は必ず要求されます。過少申告加算税は追徴税額の10%ですが、50万円と申告額の多い額を超える金額については15%です。これが仮装・隠蔽と認定され重加算税になれば追徴税額の35%になります。

 

3、加重とは5年間に仮装隠蔽を繰り返した場合に10%加重され45%(35%+10%)になります。無申告であった場合は35%が40%に跳ね上がり、そこへ加重分10%が加わりますので追徴額の50%を支払わなければなりません。

 

補足説明:

  2500万円脱税して裏金にしておいても、地方税も含め4割を追加納税しなければならないので1000万円が本税の追徴納税に消えます。そこへ加重・重加算税50%の500万円と地方税の重加算金を同じくらい払うことになりますからさらに500万円追徴されます。

 結局ざっと計算しますと2500万円ー1000万円ー500万円ー500万円=500万円しか残りません。

 このほかに法定納期限から完納までの間の延滞税(国税)と延滞金(地方税)がかかります。延滞税は本則で14.6%ですが特例で7.3%とされ更に特例基準割合で下がっています。

 

 なお上記の計算には消費税が入っていません。消費税の重加算税と加重分がこれに追加されますと裏金は殆どなくなるのです。そのうえ摘発されるまでのストレスも大きいでしょう。

 最初からキチンと申告し納税していますと40%の税率だけであり2500万円×(1-0.4)=1500万円が残ります。(消費税は考慮外です)

 

<次回予告>

 重加算税が課された場合、その後の税務署での扱いは変わるのでしょうか。AIの進化とこのことは関係しますか、の問い合わせについて考えてみます。

第14回 Q10:重加算税が課された場合、その後の税務署での扱いは変わるのでしょうか。AIの進化との関係は?

2020年1月23日

A:はい。悪くなります。

 

1、重加の記録が残りますから「税歴」が悪くなり過去に仮装隠蔽という不正行為をした履歴があるため、その後の調査対象に選ばれやすいことはもちろん、次の調査でも仮装隠蔽が発見されますと重加算税が「加重」されます。

 

2、時効(正確には除斥期間といいます)で税務署が課税できなくなるのが申告期限から5年ですから、重加算税がかけられないで終わっておれば、次の調査は5年間はないことが(私の経験上ですが)多く、申告是認(正確には「更正決定等をすべきと認められない」といいます。早い話、無傷で調査が終わった場合です)の場合は調査後7年~10年経っても調査がない場合が結構多いです(経験上であり、統計的な裏づけではありません)。

 

3、AIの進化と共に国税庁のKSKシステム(国税総合管理)に情報が細かく入りますから、一旦、重加算税が課されたら次回の調査は深度のある調査になることが考えられますから、重加算税がかけられたら経理の在り方を見直すべきで、決裁、承認、保管、経理記録の流れはもとより担当者の交代なども必要かもしれません。

 

補足説明:

<ズルをしていなければ主張すべきです>

重加算税の要件は仮装隠蔽です。「在庫」を例にとりますと在庫計上ミスには3タイプあります。

 

1、期ズレ:その事業年度末に仕入れたのに実地棚卸をした時に到着したばかりの商品なので隅に在って計上し忘れた場合(計上時ズレることになります)

2、評価誤り:仕入単価100円なので100円とすべきを、古くなったため決算で@60円にした。数は1万個あったので仕入値なら期末棚卸高100万円であるが、@60×1万個=60万円として決算し申告したが、調査で税務署から60円は適正ではない、まだ新しいので100円に戻すべきと更正された。40万円が課税洩れの結果になった場合。

3、数量減:在庫の個数が1万個あるところが計算誤りで1千個として申告した。

 

 上記の何れもが課税洩れになりますが1と2は仮装隠蔽に該当しないので重加算税はかかりません。過少申告加算税で済みます。

 

 しかし3はついウッカリと計算間違いをしたとの立証ができないかぎり、通達の「意図的な集計違算」とされ重加算税が課されます。ここで意図的でないことの証明をするため、集計した従業員の証言、集計をした計算プロセス、EXCELのSUM関数を使って集計したのならセルへの入力のさいに数量を少なくする意図があったか単なるミスか、上司のチェックがなぜ洩れたのか、集計担当者と上司の間に意志の連絡があったか否かなどを良く調べて「誤魔化す意図」がないことを粘り強く説明することが重要です。無いことの証明は困難ですがあきらめてはいけません。

 

 私は以前、重加算税の取消を不服申立して重加算税の取消を勝ち取りました。意図の有無は説明しにくい部分ですが、ここで言うべきを黙っていたらズルをする納税者になってしまいます。経営者のなかには早く税務調査が終わってほしい一心で税務署に従う人がありますが禍根を残すことになります。

 

<次回予告>

 経営者がズルを指示してもいないのに、税務調査で仮装隠蔽が指摘されるのは社内にもっと大きな問題が潜んでいる場合が多いことに触れ、併せて対策法も考えてみましょう。

第15回 Q11:経営者ですが、税務調査で仮装隠蔽があると指摘されました。腑に落ちません。

2020年1月24日

A:まず仮装隠蔽がどの勘定科目であったのか認識されていますか。ここをしっかり見ましょう。見たくないかもしれませんがそこを見ましょう。膿を出し切るいい機会です。

 

1、仮装隠蔽のパターンは以下のようなものが一般的です。右側にその手口を書きました。

 

ア:昨日に例にした在庫の数量の過少計上がある・・・棚卸原票の改ざん

イ:架空人件費の支出で利益を圧縮・・・・・・・給与台帳に「在籍しない人」が書かれている

ウ:架空経費の計上で利益を圧縮・・・・・・・偽造の領収書をもとに支出

エ:売上の意図的な不計上で経常利益を下げる・・・・現金売上を別預金へ、領収書の控え(耳)は無くす

オ:リベートなどの雑収入勘定への不計上・・・・・仕入先からのリベートが個人口座に入金

カ:仕入の水増しによる利益の過少計上・・・・・架空仕入れ先を設けてソコへ入金

キ:使途不明金がある・・・・・使途について明らかにできない支出がある

 

2、あなたの会社が税務署から指摘されたのは上記のどれですが、社長さんがワカラナイところが問題です。なぜかと言いますと、あなたの眼がとどかないところで実行されたかもしれないことだからです。ストーリーを私の独断で補充し、逆にお聞きします。

 

ア:あるべき棚卸の数が少ないとすると「あるべき在庫数」との差額の在庫はどこに行ったのでしょうか。在庫品は勝手に歩いて社外に行きません。誰かが持ち出して換金したかもしれません、いかがですか?

イ:給与は現金支払いか預金振込ですね。現金や預金の管理は誰がしてましたか。管理(保管)と出納記録は同じ人がすることは危険です。

ウ:社長が架空経費が支払われていたことを知らなかったということは、誰かが勝手に会社のお金(現金または預金)を使って、自分で証拠を備えるためにウソの領収書をあてがって装ったかも。

エ:社長が知らないうちに売上が別の預金に溜められていた!?誰がその預金口座を開いたのですか?印鑑と通帳は誰が持っていますか?

オ:リベートが溜められていた個人預金口座は誰が開き印鑑などは誰が持っていますか?

カ:仕入納品書まで架空とは呆れます。支払いは誰がしていますか?

キ:お金はどこに行ったか分からないのですか、社長が個人で使ったものではないようですから誰が使ったのでしょうか。

 

3、2から見えてくることはキャッシュを動かす人物が社長のあなたとは別に貴社には存在するようです。あなたは売上を作るのに多忙ということですがこの状態は非常に危険です。税理士さんは指摘してくれなかったのですか?

 

<次回予告>

 信じられないほどの間抜け会社です。実際にはこのような会社はないと思いますが、例としては面白い会社で、改善すればとてもいい会社になります。改善ストーリーをシリーズでご案内します。

第16回 Q12:仮装隠蔽があったモデル会社の社長が気づかなかった盲点はどこでしょうか?

2020年1月27日

A:会社内部の人とモノとカネについて無関心であったことです。

 

1、この社長さんは商品開発と営業にかけては非常に優秀な人と思います。いい商品があり、良い得意先を獲得され信用を築いてこられました。だからモノや資金が抜けていてもまだ余裕があり追徴税額も支払う力があります。残念なことに社長の能力が秀でているのは社外に対してです。会社の内部は任せきりであったとしか思えません。

 会社が成長してゆくとすべてに眼が行きとどくことはなく、信頼できる人物を辛抱強く育てることが必要です。そこを急いで外部から人材を入れることを考えがちですが「育った水」が違う会社から引っ張ってきてもウマくゆかない場合の方が多いです。

 

2、ヌケている一つ目のポイントは架空人件費や架空経費、仕入れの水増し、使途不明金で示されるような支出に関してのずさんさです。現金管理者が支払いを承認するステップもなく社長の承認もないまま資金が流れ出ています。

 

3、次は在庫がどこへ行ったか分からない点と売上が除外されていることです。この二つはセットになっていると思われます。悪く考えれば「在庫の横流し」が疑われますが、誰かが在庫を横流しした場合はその代金は横流しした人物が着服するところ、この会社では会社の裏預金になっています。ということは、裏預金をコントールしているのが誰であるかです。通常、社長の指示でこのような行為をする場合は、着服ではなく他の意図で資金を(会社として)備蓄している場合が多いですが、社長が関与していない場合は重大です。リベートも仮名の個人預金に入っていますが、同じ目的で資金を備蓄したと観察できます。販売先と共謀して裏預金を作る場合もあります。

 

補足説明:

 通常は事務担当座席配置図を作成し、日常の業務分担を配置図に記入します。そして購買から支払いまでの経路についてモノ、カネになった自分が伝票と共に流れの中を歩いてゆく<Walk through>イメージで見てゆくと支払担当のところで実際の支払額が変更されていることが見えます。人の人数、支払い給与額、モノの購入を示す証拠を確認すれば税務署の示す課税洩れの金額の裏付けが取れます。税務署の調査結果の確認もできます。社長が知らないところで起こっていれば従業員一人一人と別室で個別に、丁寧な柔らかい雰囲気で話すことです。

 

 在庫が会社を経由しないで販売され、不思議なことに裏預金に還流している点が、社長の指示でないとすればこの裏預金の周りを徹底的に洗わないといけません。たまたま税務署が(多分)在庫の販売先を出庫から運送の伝票を見つけて商品の到達先をキャッチして反面調査で、そこが支払った宛先の口座を把握したから裏口座が発見されたと考えられます。税務調査が無かったら裏預金はどこかへ消えていたでしょう。ことは重大です。

 

<次回予告>

 このような会社にならないためには、どんな点を改善すれば良いかを見てゆきます。AIが進化して取引データが電子化されても現金、在庫、固定資産など実在が確認できる資産は電子データとの一致を目で見て手で触れて確認することが重要ですダミーのデータが混入されても売掛債権を、期末などの時期に流れをカットして残高の断層の年齢を吟味することも有効です。

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