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第81回 責任者(社長)は税の払い過ぎに気が付いているのか

2020年5月25日

 経営の最終責任者は、資金の確保が必要であることは皆さんわかっておられます。自己資金が足りない場合、金融機関が頼りです。稀にお金をしっかり貯めておられて、いつでも自社に銀行に成り代わって「融資」することができる社長さんもおられますが、このような資金の量に限度があります。

 

 ということでやはり金融機関からの資金が頼りですが、社長が経理にうとい場合は、社長のカネが必要ダァとの気持ちを忖度して従業員さん(経理責任者)が利益を膨らませることを悪気なくしてしまいます。そしてそれが継続します。

 

 最終責任者が認識しないまま借金が膨らみます。

ここで問題は、利益を膨らませるコトは会社にとって重大なことなのか、大したことではないのかの点です。

 答を先に申し上げます。「経理方法を選択できる場合」を除き、重大なことです、しかも直ぐに悪影響が表面化しないので余計に問題です。

 

 1の、経理方法を選択できる場合は問題は重大ではないとは、以下の意味です。

固定資産の例にもありましたが固定資産の取得の付随費用を費用にせず取得価額に加算してもやがては必ず減価償却費として費用になります。また少額の10万円程度の什器を資産にしても耐用年数は2~5年くらいですから2~5年内に減価償却されて費用になります。要するに時間的な差異にすぎません。

 

 しかし2の、減価償却すべきをしないで済ますことは永久に差が出てしまうのです。この差が財務諸表において資本の運動を妨げます。会社を活性化するには投下された資本が緩慢にではなく、できる限り高速で回転することが必要です。人体の血流を思い浮かべて下さい。鈍く遅い回転では末端まで血液が行き渡らないため細胞に活力がなくなります。このことが数字で見えないのです。

同じように会社の資本の回転がスムースであることは資金の供給にも連動します。

 

 資本の回転は貸借対照表の不要なものがそぎ落とされていることで確認できます。固定資産に計上される金額が多いことは資本の回転を遅くするのです。

 

 加えて税負担の問題があります。利益を徒に膨らませることは利益の過大計上ですから不要な税金を払うことで資金を圧迫します。

 以上を固定資産で話しましたが、在庫を過大計上したり、売上を架空計上し売掛金をでっちあげる、或いは費用を計上しない、負債を計上しないことなどが行われると、これらにより名目利益が計上されることになります。

 

 そして名目利益に課税され、外見は元気に見えても、例えますと筋肉のない、血流の悪い実態が隠されるのです。

 

<次回予告>

 粉飾をして資金供給を受けても行き詰まるだけではなく、粉飾分を是正して過大に支払った税金を取り戻して再出発する時の税務上のトラブルを検討してゆきます。

第82回 税金を払い過ぎた場合の対応はどうするのか

2020年5月26日

 税金を払い過ぎた場合にそれを是正する道があります。「更正の請求」といいます。申告納税制度を採用されている税金には地方税も含めてこの制度が二段構えで用意されています。

 

 申告納税制度の反対は賦課課税方式です。固定資産税がこれに該当します。固定資産税は市役所が税金を決めてくるものですので、納税者からの更正の請求の制度はありません。

 

 先程の二段構えで更正の請求ができることの意味は、第一段階として国税通則法で決められている方法の他、特別の場合には第二段階として所得税や法人税、相続税と、消費税などを定めた個別税法で特例(特則という税目もあります)が定められています。第二段階の制度はここでは省略します。

 

1、原則:更正の請求は、申告してから税額が過大であったことを知った場合に納税者が行う手続きです。

 

期限:法定申告期限から5年以内に行うこと。

要件:ァ、申告内容が法律の規定に従っていなかったことによる過大納付

    又は

   イ、計算に誤りがあったために過大納付になったこと

形式:更正の請求書を税務署に提出します。

 

2、例外:税務調査の後の更正の請求

税務調査があった場合は結果は以下の何れかです。

   ア、税務署に申告を認められた

   イ、税務署から誤りを指摘されたため修正申告をする

 

このイの場合でも、その後に税金が過大であることを知った場合には更正の請求をすることができます(不服申立はできません)。

 

 しかし更正の請求をしても「理由がない」として請求がハネられる場合があります。

この場合は国税不服審判所に不服申立をすることができます。

 

 このように「更正の請求」は納税者と税務署とが得心が行くまでに相互チェックのように使われる制度です。

 しかし粉飾決算で利益をかさ上げして多めの税金を支払った場合は「更正の請求」制度は使えません。粉飾を「修正する経理」を会社が自主的に行った後で税務署が減額更正をします。

 

 「更正の請求」と「(減額)更正」は用語は似ていますが両者は似て非なるものです。共に納め過ぎた税金を返してもらう点では同じですが、後者は更正の請求という権利行使ではなく、その前に「粉飾をみずから修正する」行為を求められます。

 

<次回予告>

 法人税を例にとって、単に納税額が過大であった場合の更正の請求の例を示し、その後、粉飾決算がされて納税額が過大になった場合の税金を取り戻すケースの検討に入ります。コロナの後は税金の取り戻しが多くなるでしょう

第83回 会社が法人税を払い過ぎたケース 1

2020年5月27日

 税金を払い過ぎて、これを取り戻すには「更正の請求」という方法を取るこれることは前回までで説明しました。所得税、相続税、消費税にも更正の請求制度はありますが、この稿の目的は会社の税金と粉飾ですから会社の更正の請求に絞って書いてゆきます。

 

1、受取配当金・外国税額控除

 睦月株式会社は、タイの外国子会社からの配当金を益金に計上したうえ、外国税額控除として同社が支払う法人税の計算でも誤って控除額を過少に計算したため、納付税額が過大になりまし た。

 

 配当金は、これを支払うタイ子会社にタイの法人税がかかった後の利益を原資として配当されますから、株主である睦月が受け取る配当にも課税されますと二重課税になってしまいます。このため受取配当金額は益金(課税される収益)から申告書の上で除かれます。ところが如月の法人税申告書では受取配当金は除かれないままでした。このため同社は二重に税金を支払う結果になりました。

 

 このため睦月の税理士は税務署に更正の請求を求めました。

この請求が認められるためには、法令に従っていなかったのか、計算間違いに該当するのかいずれかに該当しなければ更正の請求は認められません。

 結局、誤りであると認められ、その原因はタイ語で書かれた現地法人の決算書の意味の取違いの結果である、そのため収益に含まれたまま申告する結果になった、このことは法律の規定通りではない申告と、計算誤りの両方に該当することになる ため更正の請求は認められました。

 

2、雇用者給与支給額が増加した場合の法人税額の特別控除

 如月株式会社は雇用者数が増加したため租税特別措置法で定められた法人税の特別税額控除が適用できます。租税特別措置法の規定は初めの申告(当初申告といいます)でこの規定を用いることを表明し適用していない場合、あとから「この規定を適用します」と更正の請求をしても認められません。

 

 納める税金が100の場合、この控除額が60であるなら、この控除を適用したら納税額は40で済むところ、失念した場合は納税額は100です。後からシマッタと気づいても60の控除は更正の請求では認められないのです。

 

<次回予告>

 如月株式会社が赤字で法人税額がない場合、ゼロから税額控除を適用する意味はない、との判断で当所の法人税申告書で規定の適用をしない場合があります。このような場合にどうなるかをみてゆきます。ほかに更正の請求で特別控除の適用を求めて国と争った事例を見てゆきます。

第84回 会社が法人税を払い過ぎた場合 2

2020年5月28日

(如月株式会社が赤字決算であった場合)

 この場合は、申告が赤字なので納める法人税が算出されません。どうせ納める法人税はないのだから税額の特別控除を申告書に表明しても現実的に税額がさがるようなメリットはないとの判断で「雇用者給与が増加した場合の法人税額の特別控除」を適用する旨を当初申告書に記載しないで、控除明細も添付しなかった場合はどうなるでしょう。

 

 当初申告の法人税額が増加する事態は起らない場合は何も問題はありません。

しかし増加する事態は起った場合は不利になります。

 

増加する事態は内から生じる場合と、外から来る場合の2タイプあります。

・自主的に修正申告した場合

 このように誤りが内部で発見されたため当初申告を訂正する場合は「修正申告書」を提出します。修正申告の結果、法人税額が70に増加した場合でも当初申告書に記載がありませんから「雇用者給与が増加した場合の法人税額の特別控除」の適用による60の税額控除はありません。税金は70を納めなければなりません。

 

・税務調査があって修正申告を余儀なくされた場合

 自主的に修正申告した場合と同じ結果です。

 

赤字決算でも「雇用者給与が増加した場合の法人税額の特別控除」の適用をすると当初申告書に記載し、控除明細を添付しておいた場合はどうか)

 当初申告書にこの条項の適用をする旨を示し、要求される控除明細を付けておいたら自主的に修正申告した場合でも、税務調査で所得の計上漏れが発見され修正申告を余儀なくされる場合でも、当初申告で適用をする旨の表示をしておいたことが効いてきます。修正申告で納税額がゼロから70に増えた場合、60の控除が自動的に浮上して修正申告で納付する追加税額は70-60=10で済みます。

 

 当初申告でこの税額控除の適用を受けることをしなかった場合で、更正の請求において「雇用者給与が増加した場合の法人税額の特別控除」の適用求めて裁判までして争った事例があります。当初申告で失念した手続きは更正の請求をすることでカバーされると納税者は主張しました。

 

<次回予告>

裁判での攻防から法がみる「更正の請求」が見えてきます。納税者・国、双方の主張を検討します。

第85回 会社が税金を払い過ぎたばあい 3

2020年5月29日

(法人税の更正の請求)

(あらすじ)

 やよい株式会社は当初申告で「雇用者給与が増加した場合の法人税額の特別控除」の適用を忘れていました。そこで同社は「更正の請求」でこの特別控除を適用して計算し、法が要求する明細書を添付して税務署長に対し税金の取戻しをしようとしました。

 

 税務署長は当初の申告書にこの条項を適用する記載も、必要な添付書類もないため更正の請求は認めない旨の通知処分をしました。

 

このため、やよい社は通知処分の取り消しを求めて訴えました。

 

(やよい株式会社の主張)

 租税特別措置法では確定申告書等、修正申告書、更正の請求書に記載すればよいと規定されている。よって当初申告の確定申告書にこの特例を適用する旨の記載がなく控除明細書の添付がなくても、更正の請求書に記載し、控除明細書の添付をすれば、特別控除の適用があると解釈するべきである。

 

(裁判所の判断)

「確定申告書等」、修正申告書、更正の請求書は並列的に見るのではない。「確定申告書等」とは租税特別措置法で確定申告書または中間申告書のみをいう。修正申告書と更正の請求書が記されている意味は、当初申告で添付されたこの規定の適用を受けるための明細書の記載額が変動することにより、控除を受ける金額が増加する場合に修正・更正の請求ができることに備えての規定である。

 当初の「確定申告書」に、租税特別措置法の適用を受ける旨の金額の記載をしないうえ、控除明細書の添付もないということは納税者がこの特別控除の適用を受けることを選択しなかったことになる。後になってこの選択を覆し、更正の請求をすることで、追加的に選択を求めても認めることはできない。税務署の処分は適法である。

 

(補足説明)

 確かに当時の租税特別措置法には確定申告書等、修正申告書、更正の請求書と並列的に書かれているため、納税者の主張はわからないでもない。その後法律の書き方は変更され、現在は「確定申告書等」に続いてカッコ書きで(これらの規定により控除を受ける金額を増加させる修正申告書又は更正請求書を提出する場合には、当該修正申告書又は更正請求書を含む。)と並列的な理解に陥らないよう濃淡をつけた条文になっている。

 

<次回予告>

 機械製造業者が、納品した機械に欠陥があるとして売却代金を半額に値切られました。このようなことは予期していなかったので納品した年度で全額を売上高に計上して申告していました。この半額の値引きは「更正の請求」をすることで、遡って税金を取り返すことができるのか、のケースです。

第86回 会社が税金を払い過ぎた場合 4

2020年6月1日

(あらすじ)

 機械製造業者が、3年前に納品した機械に欠陥があるとして売却代金を半額に値切られ裁判の結果相手方の主張が認められました。同社は納品した年度で全額を売上高に計上して申告していました。この半額の値引きは「更正の請求」をすることで、遡って税金を取り返すことができるのか、のケースです。

 

(結 論)

「更正の請求」で3年前に遡って取り戻すことはできません。

 

(説 明)

 会社は、決算をして決算内容について株主総会の承認を得て、決算を確定させなければなりません。一旦、決確定した決算についてその内容を変更することは許されません。

 このため進行している事業年度で、半額になった損失を会社の損失として計上します。この損失を計上する前の段階で利益が1000出ていた場合、この度の損失が400であるとしますと税の負担は差引600に対する税で済みますから、この意味ではこの期に支払う法人税額から損失分を控除することができたことになります。

 

 また利益ではなくマイナス1000であった場合は、この度の損失400を加えた1400が最終の損失になります。損失ですからその事業年度の税金はかかりません。損失は10年先まで繰越すことができますから「将来において取り戻す」ことは不可能ではありません。

 

 不可能ではないという意味は、将来に、もとからあった1000の繰越損失を超える利益が計上された場合に更にこの度の400を控除できますから、税金の支払いを防ぐことができたという意味で400の損失が生きることになります。

 

 しかし不自然さはぬぐえません。納品した事業年度の利益を修正して、その事業年度に支払った税金を取り戻すことと比べて時間差がありすぎます。また近々事業を廃止する場合や10年以内にとても回復することができないほどの赤字が生じた場合は実質的には救済されないことになります。

 

<次回予告>

 更正の請求を定めた国税通則法では、申告した年度の計算の基礎になった事実が「異なることになった場合」は更正の請求を認めるとの定めがあります。この点を検討します。

第87回 会社が税金を払い過ぎた場合・・・5

2020年6月2日

後から生じた理由によって申告した税額が過大になった場合)

 

後から生じた理由とは、以下のような場合をいいます。

 

1、自社が所有すると確信していた土地を他人に譲渡し土地の譲渡益を計上して申告した。しかしその土地の隣地の地主から「貴社が売った土地は貴社の所有ではなくウチの土地である」と裁判を起こされ、その結果、隣地の所有であることが確定した例。

 

 この結果、申告した時と事実が異なることになったため不要な税金を支払った結果になりました。裁判でなくても双方の和解でも良いのです。但し和解の場合は税金を免れる目的で双方の馴れ合いで和解した場合は該当しないものと扱われています。

 

 また提訴することなくされた任意の「合意」は、「やむをえない理由」に該当しないとして、判決や和解と同じように扱うことはされません。

 

2、帳簿書類を押収されていたため、それらの帳簿に基づいて正しい申告ができなかった。その後、帳簿が手許に返された。帳簿で確認したら過大申告であることがわかった例。

 

3、国税庁の法令解釈が判決、裁決によって変更されたため、その変更によって当初の申告税額が過大になったこと。

 

 いずれも共通するキーワードは「やむをえない理由」や、申告時に「予知しえなかった事態」です。これらが後から生じた場合があてはまります。

 

<次回予告>

 馴れ合いの場合は、後から生じた事情でも更正の請求による救済の道は閉ざされています。或る意味当然です。では粉飾決算して過大な税金を払っていた場合はどうなるのでしょうか。

第88回 会社が税金を払い過ぎた場合・・・6

2020年6月3日

(このテーマで何を説明しようとするのか、の説明)

 

 佳境の「粉飾経理と税金の払い過ぎ」の内容に入る段階に差し掛かってきました。

このテーマを取上げるのは、粉飾して税金の払い過ぎをしていたのでは、やがて会社が立ち行かなくなる時代に入ってゆくからです。早めにこのことに気付き舵を切らなければなりませんが、そのことに気付く経営者は少数であり、気づいても実行する人は更に少ないのが実情です。

 

 会社が税金を払い過ぎていることの裏側には、無理してでも利益を計上して金融機関からの融資の道を確保しておきたい経営者の気持ちがあります。

 では経営者が金融機関からの融資を頼りにするのは何故でしょうか。この答えにこれまでの慣習ともいえる「銀行信仰」があります。銀行はヘンなことをしない、潰れない、銀行員は優秀である、どれもその通りです。

 

 銀行信仰は道理としても、利益をかさ上げしてまで銀行融資に頼るのはなぜでしょうか。その理由は、銀行融資に依存しない道を取る場合の仕組みがよくわからないことと、銀行に融資してもらうことが「便利で手っとり早い」からです。銀行側でも担保や連帯保証を取ったうえ貸付利息が収入になります。

 

 こうして切っても切れない関係、別の表現で言えば、銀行に睨まれたらやってゆけない関係が出来上がり、時と共に、この関係に何の疑問も持たない「慣習」ができます。

 

 そのうえ経営者個人も、銀行の勧誘で投資信託やファンドを購入し、生命保険の紹介を受け、自分の相続のためと称する「遺言信託」を系列信託銀行にお世話になります。こうして法人の融資、個人資産のお世話、保険の紹介、遺言までフルコースどっぷり漬かっています。

 

 百貨店のように何から何までお世話になることが利益になるのか、立ち止まって考えることは必要でしょう。

 

<次回予告>

 銀行との全面的なかかわりをすることへの疑問点を見てゆきます。すべてが良いのでもなく、すべてが良くないのでもない、良いところは取り入れる冷静な対応が必要です。

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