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第25回 納税者・国・税理士 3者間紛争 <納税者 対 国>3

2020年2月10日

1、争った結果はどうなったか

 判決は税務署の主張を全面的に取り入れ、青木さんは仮装隠蔽をした。その理由は、地代収入を申告しなければならないことを知っていながら税理士に対して正しい資料を提供することなく、過少な申告書を作成させたことにある。

 

 上記文章は、判決文から普通の表現の部分を拾ったものであるが、判決文では上記の他に「確定的な脱税の意志に基づいて」「税理士に収入を秘匿し」とかなり強烈な表現をしている。そして、青木さんは「過少申告の意図を外部からもうかがわせる特段の行動」に相当すると結論付けた。

 

2、青木さんの主張に対しどのように説示したか

 青木さんは地代の収入があることは認識していたが「多額の支出や損失があったため、申告すべき地代収入がある」は認識していなかったと主張していた。

 

 このことに対し判決では「支出や損失」とはどのような内容の支出、損失で、その中身が所得税法に定める必要経費に該当するとの主張はしていないうえ、不動産所得の総収入金額を上回るほどの多額の必要経費が生じている事情は窺われないので、青木さんの主張は採用することはできないとの結論になった。

 

 また税理士と補助者は青木さんと直接面談していない点も青木さんの不利に働いた。その他に

地代の振込口座を青木さんの母親名義の普通預金口座とした点や、

地代の賃料を変更しているのにそのことも税理士には伝えていないこと、などが「間接証拠」として考慮されたうえ、

税務調査で調査官に地代収入を隠そうとした事実を考慮すると、正しい申告をしていたとは考えられないとの結果になった。

 

3、さらに詰めるべき点は以下である。

・確定的な脱税の意図の表現は妥当か、脱税と申告漏れとはどう異なるのか

税理士に収入が有ることを伝えず、少ない収入を書いた書類を渡したことが仮装隠蔽になるのか

・仮装隠蔽になることと「偽りその他不正の行為」とはどこが違うのか

・税理士が依頼者と直接会わなかった点に問題はないのか

 

<次回予告>

上記3について検討します。

第26回 納税者・国・税理士 3者間紛争 <納税者 対 国>4

2020年2月12日

1、確定的な脱税の意図と言えるのか、

 脱税の意図があるとまでは言えない。しかしウッカリしての過少申告(申告漏れ)ではなく、虚偽の過少申告(「租税法」1053頁参照)と考えられる。

 

理由1・「脱税」に該当すれば所得税法238条の罰則規定に該当し「10年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金刑が課されるが、青木さんには「仮装隠蔽」をしたこと(国税通則法68条)と「偽りその他不正の行為」(同70条4項)に該当するとの判示にとどまっている。脱税犯に適用される条項(所得税法238条)は挙げられていない。

 

理由2・判決では、青木さんが「過失によって地代収入が洩れた資料を税理士に提示した」のか、「脱税の意志に基づき賃料収入を秘匿するために資料を税理士に提示したのか」区別することができないから、いくつかの間接事実によって判断した、と言う。この間接事実とは先述のように、振込口座を母親の口座にしたことや、賃料の変更を税理士に伝えなかったことを指す。間接事実を用いるのは脱税の意図があったか、なかったかを推認して結論を導くためである。少なくとも脱税の意志に関しては真偽不明であったと思われる。

 

理由3・調査官とのやり取りで「実は地代収入があります。税務署に指摘されるまでは申告しなくてもいいかなと思っていました」の答は正直な回答であるが「脱税」の意図より「意図的な過少申告」に近いと考えられる。「確定的な脱税の意図」は表現が過激なように感じられる。

 むしろ、「過少な申告をしていることを白状しているのに、いまさら裁判なんか起こすなよョ」との声が聞こえるように感じる。

 

2、税理士に地代収入があることを伝えず、少ない収入を書いた書類を渡すことは仮装隠蔽か、

 

 仮装隠蔽には該当しないと考える。

 

理由・仮装隠蔽の根拠になるとして列挙される「不正事実」には税理士は出てこない。

 仮装隠蔽に該当するのは帳簿への虚偽記載、帳簿の隠匿、二重帳簿の作成、帳簿の改ざん、記載脱漏があることと国税庁の事務運営方針にある。税理士に事実を伝えないことが仮装隠蔽になるとは事務運営方針には書かれていない。

 

 しかし、この判決では仮装隠蔽になるという。この結論を導くには不正事実にある「帳簿書類」=税理士と置き換えればこの論理は成り立つ。かみ砕いて表現すれば税理士は申告までに依頼者の出す資料を検討し税理士法第2条2号の税務書類の作成を行うが併せて脱税相談の禁止(税理士法36条)、信用失墜項の禁止(同37条)、守秘義務(同38条)、助言義務(同41条の3)が義務として法定されている。このため受任した以上は内容について正確性を保持する義務があるところ、誤った資料を受取れば通常の業群水準では、誤りがあれば専門家として質問し助言し、是正しなければならないが、依頼者が意図して過少な金額しか記載されていない書類を提示すれば、過少申告に結び付くことになる。税理士が帳簿を作成することも業務の範囲である場合、誤った、過少の帳簿を作成することになる。依頼者が自己の責任で帳簿を作成した場合はともかく記帳の代行をすることは資料を精査して適宜に質問をしなければならない。ほかに税理士から株の売買の有無を再三質問されてウソの答弁をした場合も仮装隠蔽になるとの最高裁(第2小法廷、平成7年4月28日)判決もある。

 

3、「仮装隠蔽」と「偽りその他不正の行為」の相違

 前者はペナルテイーとしての加算税の一種であり、後者は罰則規定であり違法行為や不正行為を認識の基礎にするが後者の方がその範囲は狭いと考える。

「申告所得から算出される税額より過少な税額を申告書に記載する行為」は過少申告行為であり、「偽りその他不正の行為にあたらない」との判例がある(東京高裁、平成6年11月30日)。このことから青木さんがした行為は過少申告ではある上、税理士に過少な金額の資料を提示したことが仮装隠蔽に該当するとしても「偽りその他不正の行為」に該当するかは疑問が残る。

 

 

<次回予告>

 税理士は青木さんに1回も会っていないなど税理士の姿勢の検討と、青木さんが訴訟に進んだことの検討を行ないます。

第27回 納税者・国・税理士 3者間紛争 <納税者 対 国>5

2020年2月13日

青木さんと税理士の関係の検討

 

1、一度も依頼者に会うことなく申告することのリスク

 税理士が申告をすることは責任を伴う。ミスがあれば損害賠償を請求される。このため私などは複数の税理士を雇用していた頃でも最終責任を負う立場であるため、実務の進行は他の税理士に任せることを予定していても、必ず面談し、質問し、依頼を受けるに足る人物ないし会社であるのかを確認した。 法人で規模が大きい場合は過去の申告や経理体制、帳簿組織を現地で数日をかけて確認し、最終には社長の経理及び申告に関する考えかたと、それを裏付ける申告履歴を示す書類の検討を行う。

 

 そして受けるか、お断りするかを決める。(こちらが、ご依頼を受けさせていただきますと答えても、先方が断ってくることもあった)ともあれ、相互に相手をチェックすることは必要である。

 

 本件の税理士は、補助者に先方の事務員との応対を任せ、税理士が先方の事務員と会うこともなかった。このためスキができたと考えられる。その隙が青木さんに別の気持ちを抱かせたとも考えられる。税理士を騙せば、税務署も騙せることの成功確率は高いと考える納税者はあまた居る。こちらが当て馬にされることがないか焦らず構えることである。関りができてから断ることは気まずいし、不愉快なプロセスを経なければならない。

 

2、青木さんが訴訟に進んだことについて

 税務調査で地代収入の申告洩れを明言しているのに費用をかけて訴訟に進んだことが「確定的な脱税の意図」との判決文の表現に繋がったと考える。調査官に明言した内容は、覆らない事実である。いわば「私は赤信号にもかかわらず道路を渡っていました」と警察官に明言したことを例として考えると、訴に進んだことは不可解である。

 

 しかも青木さんは裁判ではこの土地に関しては多額の支出または損失があったと主張したにも拘らず、それを裏付ける資料も出さずに敗訴した。自分の立ち位置の認識をする機会はなかったのか。

 

 いずれにしろ、事実を示すしっかりした証拠と、所得がないことを説明できるに足る説得力ある論理の裏付けがあって初めて道が開かれる。特に訴訟をしなくても更正処分の段階で収束するほうが(TAINSの記録を読む限りでは)時間的、経済的にも合理的な決着ではなかったかと思う。

 

3、仮装隠蔽について

 税務調査で申告洩れが見つかり、仮装隠蔽と処分されても、国税不服審判所で主張することによって、その処分が取消されたケースもある。そのケースを2例紹介したい。

 

・太陽光発電設備が期末である3月31日までに完成しないと認識していたにもかかわらず、請求書の欄外に「工事は同日に完成する」と記載したことは仮装隠蔽とは言えない。虚偽であっても将来の(完成)予定日のことなので仮装ではないと結論して審判所は納税者の主張を採用した。<平成28年 4月19日 東京裁決>

 

・相続税申告において生命保険金を、相続人である自分の銀行口座への振込で受取り、無申告であった。税務署からは仮装隠蔽とされたが、税務調査にてこの預金通帳を調査官に逡巡なく提示し、無申告の発見を困難にさせる行動はしなかったことや、遅滞なく修正申告に応じたことなどの事実から故意で生命保険金を除外したとは認められず、審判所の裁決は逆転し、納税者の仮装隠蔽に該当しないとの結果になった。<平成28年 5月20日 東京裁決>

 

青木さんの例は少しの対応の差で、まずい結果になったように感じる。

 

<次回予告>

 依頼者と税理士が合意の上で架空経費を計上した場合や、依頼者に知らせずに税理士が架空経費を計上して申告した場合の検討をします。

第28回 納税者・国・税理士 3者間紛争 虚偽の申告とその顛末

2020年2月14日

1、納税者と税理士間の不正行為

 

 納税者と税理士の間ではいろいろなケースがある。多くの税理士はキチンとした申告を心がけている。人間であるからウッカリして、故意ではなくミスを犯すことはあるかもしれないが以下のような意図をもって誤りの申告を作成し提出するケースも耳にする。

 

 それらは税理士の口からではなく、異業種のパーテイなどで私が税理士とは知らない経営者自身の口から聞く場合もある、お酒が入った場では、つい本音が出ることもある。近くの席やカウンターに居合わせる私が税理士であることは分からない中で大きな声での正直な話もある。また事務員の採用面接では、以前勤務していた税理士事務所での仕事のやり方を聞くことは、その人の採否にも関係するから具体的な申告までの過程について聞きだすことも多い。

 

 このような街の話から不正計算に税理士が関わっている場合があることは現実のことである。

 経営者いわく「税理士さんがテキトウに気を利かして経費を突っ込んでくれたから、税金の負担が減って助かった」とか、裏金を作っていることを税理士さんは「気づいているようだが見て見ぬふりをしてもらっている」とか、事務員面接者の「ウチの先生は納税額から逆算する方法を取られていました、、」などがそれらの例である。あくまでも例外のことと思いたいが。

 

2、事例で検討してみる

 これらのことが事実として「偽りその他不正の行為」すなわち逋脱犯条項の適用についてみてみたい。

 

ケース1申告を任せた税理士が虚偽の申告を行ない、納税者がそれに気付いたにもかかわらず、法定申告期限までに修正申告せずに放置した場合

 

 納税者本人には逋脱犯が成立する、脱税である。税理士には戒告、税理士業務の停止並びに禁止、さらに税理士法58条以下の罰則規定により罰金に処せられる。共同正犯が成立しうる可能性もある。(参考:租税法1054頁)

 

ケース2納税者が誤った申告資料を税理士に提示し、税理士を騙そうとしたケース

 

 納税者は逋脱犯に該当し、税理士は適正な申告をするために調べ、質問したことを証明できない場合に限り処分を受ける。

 

ケース3:納税者と税理士が共謀して虚偽の申告書を作成した場合。

 

共同正犯として刑事責任を免れない。(以上、租税法1054頁参考)

 

 この事象を逆手にとって税理士に対し近年、下記の二つの憂うべき提案が学者からなされている。

・適正申告を除き「発生した加算税を税理士に賦課する制度」の提案

・「税理士による不正事実通報制度」の創設提案

 

 これらは税理士と納税者の信頼関係を破壊し、双方が協力して適正申告をすることに障害になるばかりか税理士法第1条の「独立した公正な立場において、、」との制度の根幹をゆがめることになりかねない。

 

<次回予告>

 今回で納税者 対 国のシリーズはひとまず終了し、次回は税理士 対 国の例を取上げます。

第29回 納税者・国・税理士 3者間紛争 <税理士 対 国>1

2020年2月17日

 税理士が、自分の申告につき、過大申告であったことに気づいて

  第1段階:税務署への更正の請求

  第2段階:税務署への異議申し立て(現在の再調査の請求)

  第3段階:国税不服審判所への審査請求

をしたが得心が行かないため最後の道として国を訴えたケースである。

 

訴えの争点は下記2点である。

審査請求(国税不服審判所)段階でコンピュータの廃棄損を認めないで、別のコンピュータの廃棄損を認めた。この過程で税理士に主張する機会を与えなかった点は手続き上違法である。

税務署から不服審判所に提出した答弁書、意見書をはじめ審判所審判官が職権によって収集した帳簿書類など関連するものは全て審査請求人である税理士に閲覧させる義務があるのに、それをしなかったことは手続き上違法がある。

 

 この例は、第1段階では、自分の払う税金が過大であったことを是正する目的から始まったものの、3段階目の国税不服審判所での「手続きの適正性」が争いの目的に入れ替わっている。

 

 本例は、今後において税務署の課税処分などについて争う場合、申立人である納税者(本例はたまたま税理士が申立人であった)が確認できる証拠・資料の範囲がどこまでなのか、についてキッチリとした答えが出された点が役に立つため検討する。

 

(あらすじ)

 井上税理士は数台のコンピュータを有し、盛大に事務所を運営してきた。自分の所得税と消費税の申告で次の点が申告書に反映されていないので、所得税の総所得金額ならびに消費税課税標準が約2000万円過大であるとして約1000万円の税額を返せと税務署に「更正の請求」をした。

 

過大申告である理由

1、消費税の追加納税分の計上不足

2、未払給与があったこと

3、事業税の追加納付分があったこと

4、未収金の貸倒があったこと

5、売上の二重計上があったことが判明

 

 対応した税務署は、申告所得が2000万円過大との請求に対し、その内の1200万円を認めた。税額の払戻しは18万円に留まった。

 井上税理士は承服しないで、第2段階:異議申し立て(現在の再調査の請求)に進んだが、税務署は、内容を検討の結果請求を「棄却」した。

棄却とは内容を審査した結果であり、形式的不備ゆえの、いわゆる門前払いである「却下」とは異なる>

 

 次に、3段階の国税不服審判所への審査請求に進んだが、審査請求の一部が認められたものの、その他は「棄却」された。不服審判所で主張ができなかった点や資料の閲覧が制限されたことに不満が残るため、手続きの適法性について裁判所にて争うことになった。

 

<次回予告>

 争いの内容につき、井上税理士の言い分、被告である国(国税不服審判所)の言い分を較べながら検討したい。

第30回 納税者・国・税理士 3者間紛争 <税理士 対 国>2

2020年2月18日

 前回では井上税理士は国税不服審判所での審査請求において主張する機会が制限された点と、審判所審判官が職権によって収集した資料を閲覧できなかった点の2点を求めて訴えた。

 

 これらの争点は、その後改められ、平成26年、28年の国税通則法改正によって改正された。改正後の現行ルールを整理し、その上で改正前のルールでの、井上税理士と国税不服審判との争いをたどることで、過去の有り様や問題点がより浮き彫りになると考える。

 

現在の(改正後の)不服審査請求(以下、審査請求という)の流れ。

1、審査請求人(この場合は井上税理士)は、国税不服審判所に審査請求書を提出する

2、審査請求書に不備がある場合は不備を補正することを請求人に求める(請求人が不備を補正しない時は却下される

3、元の処分をした税務署に答弁書を提出させる。

 

4、答弁書が不服審判所に出されたら、その副本を審査請求人に送付する。

5、審査請求人は、答弁書に対する反論書又は証拠書類若しくは証拠物を一定期限までに提出する。

 

6、審査請求人の反論書に対し、税務署は意見書を提出してくる

7、この意見書に対する反論書を審査請求人が出してくることもあり、意見書、反論書の遣り取りが繰り返される。

 

8、この後、不服審判官から審査請求人に対して「争点の確認表」が送付される。ここには双方の主張が書かれている。

9、ここで審査請求人にはその内容について確認の機会が与えられる。誤りがあれば訂正できる。

  審査請求人から申立てがあれば口頭で意見を述べる機会が得られる。実際にはこの場に処分をした税務署担当官も同席させ

  審判官が双方に主張を求める「同席主張説明」も実施されている。

 

10、審判官は必要があれば職権によって関係人に質問したり帳簿書類その他を検査することができる。

 

11、以上が出そろってから担当審判官や参加審判官が合議して裁決が行われる。

12、裁決内容は裁決書謄本の送達により通知される。

 

 以上が現行の国税通則法に定めるルールである。

このことから読み取れることは、納税者である審査請求人には十二分に意見を言うことができる環境が整えられている。国家権力を持つ税務署に対し納税者である審査請求人に悉くの機会が与えられている。納税者の立場に立つ税理士にも使い勝手の良い制度になっている。

 

(参考:TAINS:Z261-11844)

 

<次回予告>

 井上税理士は当時の(国税通則法改正前)ルールのうえで、どの点が裁判に訴えるほどに辛抱できなかったのかにつき検討したい。当事者の気持ちになって見てみたい。

第31回 納税者・国・税理士 3者間紛争 <税理士 対 国>3

2020年2月19日

 井上税理士が審査請求人になった本件では、税務署から答弁書2通、意見書1通が出され、審査請求人である井上税理士からは反論書が6通出された。これらの事実を見る限りでは双方の、とりわけ井上税理士からは6通の反論書にて言い分は出し尽くされたようにも見える。

 

 その後、井上税理士は税務署から審判所に出された更正処分の理由を述べた書類の閲覧の請求をしたところ、審判所はこの請求を許可し井上税理士はその書類を閲覧した。

 

 ここまでは良かったが、貸倒に関係する売上請求の個別明細について税務署が行った質問について井上税理士が閲覧請求をしたところ、審判所はその請求を拒否した。その根拠は当時の国税通則法96条の2項に定める範囲ではないとの理由であった。

 

 この点が紛争の発火点になったと考える。

以下に井上税理士の言い分を要約する。

1、審査請求で井上税理士は、コンピュータDの廃棄損を税務署が必要経費への算入を否認したことを違法であると主張したにも拘らず、不服審判所は、税務署と同様に必要経費算入を否認したうえ、税務署も否認しなかったコンピュータの減価償却費の計上も否認した。このことは税務署もしなかった減価償却費を違法として取り消したもので適正ではない。要するに「やりすぎ」である。

 

2、逆に井上税理士が主張してもいないコンピュータHの廃棄損を不服審判所は、井上税理士に主張、立証する機会すら与えないで認めた。このことは井上に主張の機会を与えないで行ったことである。主張の機会があれば井上はより多額の廃棄損を主張したのにその機会を与えなかったのは「やりなさすぎ」である。攻撃防御の機会を与えるべきである。

 

3、審判官が職権で収集した帳簿書類等を閲覧させる義務が審判官にはあるのにそれをしていない。

4、未収入金について資料の開示や釈明を求めるべきであるのに開示などをさせなかった。

 

以上が審査請求人であった井上税理士の言い分である。

 

(参考:TAINS Z261-11844)

 

<次回予告>

次回はこれらの主張に対する不服審判所の言い分について取り上げた上、争点を確かめたい。

第32回 納税者・国・税理士 3者間紛争 <税理士 対 国>4

2020年2月20日

井上税理士の主張に対する不服審判所の主張

 

1、コンピュータ廃棄損の計上について

 どのコンピュータが廃棄されたかについては、税務署の答弁書でも疑問を呈されていた。実際にどのコンピュータが廃棄されたかについて事実関係をハッキリさせる必要があるうえ、事実関係次第ではコンピュータの減価償却費の計上の当否にも影響が及ぶことになる。

 審査請求人である井上税理士には、コンピュータの取得時期などを旧国税通則法97条1項にて審査請求人の質問を受けたうえ、主張する機会は与えられていた。審判所は、この過程で事実を確認するために廃棄損の有無や減価償却費に関して調査して適切な判断をしたのであるから、手続きに関して瑕疵はない。

 

2、改正前(以下、旧法という)国税通則法では審査請求人に主張の機会を与える定めはない。

 

3、国税不服審判官が収集した帳簿書類を審査請求人に閲覧させる規定はない。

 帳簿書類は96条2項の閲覧範囲外である。そもそも審査請求人は(旧法)国税通則法96条2項で税務署から提出された書類の閲覧を求めることはできるにとどまり、資料開示の義務は定められてはいない。97条1項でも審判官は、審査請求人や処分した税務署ならびに関係人に質問し、資料の提出を求めることは定められているが閲覧は許していない。

 

4、未収入金に関する資料開示や求釈明ができる法令の規定はない。

 

 以上のように国税不服審判所は、旧国税通則法の条項を示して、不服審判所には手続き上の開示義務はないから手続きは適正であると主張した。

 

<次回予告>

双方の主張が出そろったので裁判所の判断が示された。この内容を検討する

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