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しなやかな会社づくりー企業家と経理

第89回 危機管理 税務が教える会社の危機2       (危機管理:税務)

2017年9月29日

 それではもう少し具体的になるように、詳しく入ってゆきましょう。実際の企業は常にぐるぐる循環していますから、どこが起点でどこが最終ゴールかは見えにくいものです。そこで単純なかたちで起点と終点が見えるようにしてみます。

 

 企業はまず、資金を調達し、材料や商品を調達し、生産に入ります。その前に工場を建てたり、機械などの設備を用意しなければなりません。

 

 また生産工程に入るには働く人を採用して訓練することも必要です。生産が始まり、最終工程になって製品ができてきます。これらの製品は一旦は倉庫に在庫として収められます。

 

 これらの製品や商品は営業活動で販売されます。「売る」という困難な橋を渡った商品は売掛金という債権になります。しかしこのままでは次の生産に入ることは出来ません。

 

 売掛金を回収して資金にしなければ、次のステップはありません。無事に回収された資金は休む間もなく次の材料購入に回されますが、現実はこのように一周してくるまで悠長に待ってはいません。いくつものサイクルが並行してしかもものすごい速さで累積してゆきます。

 

 そして回収された資金が、初めに調達された資金より多い場合は「利益」が出たことになります。実は利益はいくつもの循環の大きな束なのです。いくつもの循環の中には「損失」が出たものもあるはずです。利益も損失もが相殺されて損益計算書に表示されます。

 

 ここで税務の話です。ご説明しました循環の、初めの段階は在庫や固定資産に関連する評価損や減価償却の規定が関係します。商品や製品が売れて売掛債権になれば貸倒れのリスクについての規定が関係します。利益が出て金融資産を持つことになればそれらに関係する規定があります。

 

 これらの中なら、危機につながるものをご紹介して説明させていただきます。ワカリヤスク、専門用語を使わないで進めたいと思います。

第90回 危機管理  税務が教える会社の危機3  (危機管理:税務)

2017年10月2日

 会社の循環の中で大きな影響が出るものに貸倒損失の発生があります。これが出ますと、折角これまで資金の調達から始まって、材料の購入、生産、納品と道のりを歩んできて最後のステップである資金の回収でつまずくことは、それまでの苦労が無に帰すことになります。

 

 この意味は、資金を通して見るとよくわかります。材料、人件費、生産設備、倉庫での保管など一連のコストがかかっています。売り上げた代金が回収できないことになりますと、収入ゼロでコストは膨大な金額になります。資金の余裕がない場合はそこで終わることになります。

 

 このように1回だけの流れに単純化しますと、貸倒れで受ける被害が分かりやすくなります。直接のコストだけではなく、販売に苦労した営業マンの人件費も無駄になってしまいます。利益が取りにくい時代ですから貸倒は致命的な損害をもたらします。

 

 法人税でも所得税でも、貸倒れがあった場合に詳細な定めを置いていますが、何よりもこのような規定を使わなくても良いようにわが社の売掛金の管理をしなくてはなりません。

 

 貸倒れの場合は社外に原因があったのですが、経営者が気づかない、しかも社内で危機のきっかけが起こりうることを税法は定めています。

 

 その一つは「不正行為があった場合の費用の損金不算入」です。仮装隠蔽が社内で行われていたことが明らかになった場合にはそれによって生じた損失は損金不算入すなわち、税金から控除できません、という規定です。売上が横にどけられていた、あるべき在庫が横流しされていて、あたかもそれがなかったかのように隠されていた場合です。

 

 他の一つは「使途秘匿金」の存在です。理由もなく大きなお金が支出され、相手方の名前もわからない、帳簿にも記載がないものを言います。

権限の委譲と共にチェック機能に注意しませんと、大きな損害が社内では発生しかねません。

第91回 危機管理   税務が教える会社の危機4    (危機管理:税務)

2017年10月3日

 社内で大きな問題が生じていて、それが表には現れず、潜在的に進行してゆき、気がついたら手遅れであった、というストーリーは病気の場合と同じですそれを見つけて、直してゆくのが社長の役目でもあります。社長が自社の処方箋を書ける主治医になっていただきたい、との提言の意図も同じです。

 

 手遅れにならないためには、早期発見ですが、その場合の社長が取るべき姿勢は重要です。結論から申しますと、懐疑的にみることです。猜疑心から見てはいけません。懐疑的と猜疑心ではともに疑ってはいるのですが、基本は違います前者は頭から疑っています。根底には妬み嫉みがあります。後者はこのままでは危うい、ハッキリさせなければ、と抑えた姿勢です。

 

 比べるなら、猜疑心のもとの、妬みや嫉みには感情が入っています。懐疑的というのは、感情を入れずに、どちらかともハッキリしないから確かめよう、との意識です。

 

 社長が会社を良くする気持ちが強いゆえに、ここはおかしいのではないかと気にされることは、感情は入っていません。会社を良くするために、このままではよくないとの気持ちからです。お医者さんが患者を診る眼も懐疑的です。猜疑心からではありません。猜疑心は理性的でもなく、科学的でもありません。

 

 会計監査の場合も、懐疑的(skepticism)であれと教育されます。疑われている対象の人物は100%正直(honest) かもしれないし、100%不正直(dishonest)かもしれないので、調べて証拠(evidence)を固めてから判断しよう、というのが懐疑的な態度です。

 

  会社の医者である経営者が猜疑心を持てば、従業員にスグ見破られてしまい、従業員の心は離れてゆきます。心しなければならない点です。しかし不正は横行しています。不動の心をもたれて、冷静に事実に迫ることで、社内での隠された不正行為や使途秘匿金の芽を摘むことができます。

 

危機管理の重要な点です。

第92回 危機管理   税務が教える会社の危機5             (危機管理:税務)

2017年10月4日

 危機には急に目の前に現れるものと、徐々に浸透して、いつか大きな問題のもとになるものとがあります。目立たないけれど、放置しておくことが良くないものを今回は取り上げます。

 

 これらの事柄は、経営上の商品開発や売上、資金なの目に見える表の部分というよりも、陰の部分ですが、目配りは大事です

どのような事柄でしょうか。

 

1、製造設備:老朽化したり陳腐化していませんか、ガタが来ていたり修理が必要なのに放置することは、いつかツケが来ます。こんなところから欠陥製品が出たりすることがあります。手直しや損害賠償のもとにならなければ良いのですが。

税法では、古い機械の除却損を認めるとともに、入換えた新しい機械設備の特別償却や税額控除の制度も用意されています。

 

2、在庫:材料が社内にあるのに、整理が雑なため、しかも注文が短納期なので、手許の在庫を確認することをしないで新たに発注することが常態になっていませんか。発注する人は管理のことまで視野に入っていない場合があります。コストのことも考えることはされなくて、その人にとっては納期に間に合わせることが一番の目標です。このようになってしまうのは会社の仕組みの問題なのです

 

 在庫処分をした場合は処分額を示す証拠を整え、購入の際の帳簿価額との差を損金にすることができます。また処分しなくても購入価額と時価の差が著しい場合に限り「評価損」として計上することもできます。そこまで行かなくても期末の時価が取得価額を下回っている場合は期末評価の際、「低価法」を採用することにより値段が落ちた部分は損失として計上できます。正確に言いますと、できますではなく、しなければなりません。さもないと水ぶくれした資産価値が決算書に計上されることになります。そして名目利益が計上され、それに課税されて税金をもって行かれます。益々資金が窮乏します。

 

 ところで、低価法を採用するときには前期末までに税務署に届出が必要です。さらに平成23年4月以降は、値下がり部分を元に戻す処理が必要です。翌期首毎に低価をつけた部分を利益に戻したうえで、期末に再び時価と取得価額を較べなければなりません。この方法を洗替低価法といいます。切下げっぱなしは、現行法ではできません。

 このように手間がかかりますが、丁寧に税務の規定を辿ることで、じっくりと成果が上がってきます。

 

 結局、材料のデッドストック、型番違い、製品、商品の型番違いのものなどが溜まってゆきます。これらのもとは資金なのです。自己資金か、借入金で調達したのかに関係なく、大切な資金がそこに寝ているのです。換金価値はないと思わなければなりません。結局、資金を使って在庫を購入しても、それらが無価値になり、また資金をロスすることになります。出血しているのと同じなのです。そのことに気づかれるとともに、期末の在庫の評価にもきめ細かい諸方法を税法は用意しています。それらを駆使して無駄な税金を抑えるとともに、健全な、危機を内包しない会社へと進むことができます。

第93回 危機管理 税務が教える会社の危機6          (危機管理:税務)

2017年10月5日

 今回は人件費関係がテーマです。私は近いうちに人件費倒産が問題になってくると考えています。労働法規を守りながらモチベーションを上げてゆくことが非常に大事になってきます。

 

 税務ではどの規定が該当するでしょうか。人件費と法定福利費、福利厚生費です。特に雇用者給与が増加した場合は増加した給与の10%~12%が税額控除されます。しかもその控除額は中小企業では法人税額の20%まで控除できますから、大いに検討の余地があります。それと賞与には上限の規制はありませんから、成果がはっきり出ている人には厚く遇することをされませんと、質のいい人材を確保できません。

 

 中退共などの退職金制度を最小限でも整備しておくことは必要です。どちらかといえば制度を、あれやこれや盛り込むことより、給与と賞与において貢献度で連動することがポイントでしょう。お金でストレートに報いるのが一番であると思います。

 

 簡単に言えば「地位」より「禄」です。地位は、成果だけではなく統率力などの別の要素が求められます。誰でもということはできません。慎重にみることです。

 

 しかし組織で運営してゆくには、若い年代の役職への昇格は必要です。更に役員への道があります。税務では従業員と役員の間に使用人兼務役員というものを設けています踊り場のようなところです。取締役営業部長などが典型です。この場合は営業部長としての働きに対して賞与を支給しますとその額は(他の取締役でない部長の賞与よりも突出しない限りは)損金になります。

 

 同じように賞与を払うとしても使える制度です。純粋の役員になりますと、このような損金になることはなく、臨時的な支払である役員賞与は全額が損金になりません。

 

 しかし、役員賞与にも「事前確定届出賞与」という便利な道が法人税法には用意されています。定時株主総会から1か月以内に税務署に「こんどの事業年度の何月何日と、何月何日に賞与をこの者に支払います」と届けておきますと、その金額と同額の賞与は損金になります。

 

 実際、これでモチベーションが上がることがありました。損金算入ですから会社の税金も減少します。役員の中で、できる人にこの制度を使うのです。このためには予算制度を設けることが運用上、有効です。

 

 以上のように従業員であれ役員であれ、濃淡をつけるのですが、会社全体として人件費が増額されることになって、会社の生命力を押さえないように「労働分配率」のバランスには気をつけることです。

第94回 危機管理   税務が教える会社の危機7  寄付金、欠損金、組織再編など  (危機管理:税務)

2017年10月6日

 今回は寄付金について説明させていただきます。普通の感覚では寄付とは、教会や慈善事業などへの寄付と思います。これらはほとんど問題なく損金になりますが、税務の場合はその範囲が広いです。

 

 会社がどのような名目であっても資産や経済的な利益を与えた場合は、その価値が通常の時価よりも低い場合は寄付金とされます。そして一定額以上は損金になりません。

 

 資産をタダ同然で提供したり、安目で贈与した場合はたいていは寄付になります。会社の資産を提供して、更にその上に税金を取られますので安易に「寄付」をする前に専門家にお聞きになることです。

 

 また過去の欠損金がある会社は(青色申告法人であれば)過去9年までさかのぼって損金に計上できます。そのためこの欠損金を持ったまま他の利益が出ている会社と合併したら、凹と凸を一緒にして合併後の会社は税金を払わない、ことを考えがちです。

しかし組織再編の場合は非常に複雑な規定がされていますので、欠損金が合併後に使えるかを事前に専門家に相談しないままで進めますと大きなロスになります。

 

 M&A専門会社などの話があった場合でも欠損金の取扱いについては良い話は鵜呑みにできません。専門家はもとよりセカンドオピニオンを取られることをお勧めします。組織再編が法律上は進んでも、税務で思うような結果にならないことがあります。

第95回 危機管理     税務が教える会社の危機8(しめくくり)   経理担当者の育成を

2017年10月10日

 このシリーズでは一貫して、社長が会社の主治医であり社長こそが処方箋を書けると言い続けてきました。しかし実際には社長の仕事はあまりにも多く、しかも肝心の売上を作ることに邁進しなければならない現実があります。

 

 その中で、急を要することでもいなく、利益に直結しない処方箋に時間をとることは、なかなかむつかしいです。余人をもって(処方箋を作ることは)できないことであっても、時間に限りがあります。たしかに会社の中味を良く把握しておく意味は大いにありますが、実行することは容易ではありません。

 

 十分なスタッフが居ればそれも可能でしょう。現実は人手不足で厳しいでしょう。

そのためには以下の二つをぜひ実行してください。不可能ではないと思います。

 

1、まず経理担当者の確保。兼務でも良いと思います。

2、その人を丁寧に指導してくれる税理士事務所をみつける。

 

 経理担当者不在では社長は動けません。直ぐ社長の思いを取り入れて実行できなくてもよろしいから、辛抱強い「復習型」の人を採用してください。復習型とは、一度教わったことをノートなどに控え、繰り返し復習して自分のものにするタイプです。

 

 税理士事務所の担当者(なるべく税理士資格を有する人が望ましいです。有資格者は責任が重いですから)がその事務員さんを訓練します。人によりますが半年もすると熱意が出てくることが多いです。指導する税理士事務所の担当者も訓練に向いた人とそうでない人がいます。不向きなら変えてもらいましょう。

 

 向き不向き以前の問題として、指導する人の知識と経験が、指導される人の10倍は必要です。この10倍から指導力が出てきます。常に勉強している人でないと指導者は務まりません。

 

 経理担当者には、徐々に会社中枢のことも伝えてゆきましょう。経営会議などへの参加も刺激になります。次に「予算」を立ててもらいましょう。この時に税務の知識、特に、こうなればこれくらいの課税がされる、などの読みが出来なければ使える「予算」は作れません。

 

 指導の工程表も税理士事務所から社長へ出してもらい、その通りに進めましょう。よく言われることですが「職人」を大事にしない会社はどこかでつまずきます。経理担当も職人の一種です。育成には時間がかかりますが、大事に育てますと、社長さんには多くの情報が集まり、問題点を見つけやすくなるはずです。

第96回 息抜きしましょう      UBERで思ったこと              (番外:よもやま話)

2017年10月11日

兄丸出羽守(この名前の由来は既往の「息抜きしましょう」をご覧ください。いつも「マニュアルでは、、」が口癖なので出羽守の名前をいただいたのと、マニュアルを誤ってアニマルといったため兄丸の名を貰ったのです)以下「兄」とします。キは木村の略称です。キ印とかの意味はありません(笑)。

 

兄:コンニチワアニキ、ご無沙汰ですね。

キ:よう来たね、元気かい。

 

兄:アメリカへ行っておられたとか、目的は何でした?

キ:UBERに乗ることや!それは冗談、本当は会計の研修参加だけれど。

 

兄:UBERとは、サンフランシスコあたりでできた白タクみたいなTAXIですか。

キ:白タクというのは表現としてはどうかな。もぐりのタクシーではない立派なビジネスやからな。

 

兄:どんな仕組みですか。

キ:スマホでUBERの電話にショートメールを送って1台お願いします、と連絡したら、5分くらいで返信がありドライバーの名前と今、あなたのいる場所から500メーターのところまで来ています、その次の連絡は「最後のステップです、間もなく到着します」とスマホに伝えてくる。

 

兄:どこからでも呼べるのですか。

キ:私は友人の息子さんの家からでその家の番地を入力したけれど、目につく建物などからも呼ぶことはできそうやね。感じのいい40才前後の運転手で、その日はたまたま日曜日だった。彼が言うにはホリデーなので自分の車で稼いでいますと言ってた。

 

兄:どんな運転でした。料金は?

キ:その家から空港近くの、泊っているホテルまで50キロくらい走ってもらった。ハイウエーばかりで渋滞無しだった。運転も丁寧。無駄口も言わん。もっとも私が英語が流暢でないと分かったから、気をきかせてくれたのかも。

 

兄:日曜で渋滞がないとしても早いですね。で料金は

キ:31$84セントや。1ドル120円としても3720円。走った距離は50キロやから、大阪市内から滋賀県の野洲あたりまでを35分で走った。割安と思ったよ。日本なら15,000円はかかると思うョ。降りるときに精算するけれどCASHでなくカード決済のみや。そのうえチップも「その気になればどうぞ」と控えめやね。

 友人の息子さんの話では、チップの有無が会社での彼の評価につながるということを聞いたから、スマホではカタチだけ1$払って、他にCASHで彼に「気持ちとして」10$渡した。えらい喜んでた。あとでメールで精算書が届く。そこにはドライバーの顔写真と名前があり、乗ってから到着までの時間が書かれてある。

 

兄:やっぱりCASHの魅力ですか。

キ:そうかもしれん。あとで送られたメールでは乗車場所から到着地までの、走行したところをラインで引いた地図や待ち時間の有無、希望などを聞いてきた。丁寧やね。

 

兄:タクシー会社を始めようとすれば今までの考えだと、営業免許のことは脇においても、車両を何台も購入して、ドライバーも2種免許を持つ人を雇用したうえ、車庫も準備せないかん。それがすべて不要で事業が始められるということですか。しかもそれゆえ料金も安くできるのですね。

 

キ:そうや、ええこと言う。そこやポイントは。スマホ時代になったら事業の考え方が変わってくるのが体験できた仕組みが一番やね。問題は、事故や、万一の保障、セキュリテイだけれど、いろんなノウハウを持つ会社と水平的協力関係でカバーされているように思ったね。訴訟社会のアメリカなので十分な措置がされているのでは。

 

兄:雇用という形をとらないで人もビジネスに参加でき、車も、今ある状態でビジネスに使っているところがすごいですね資本よりもアタマですか。それと資本がかからないから価格競争にも強いのですね。

キ:これからは、人口減もあり、人を採用するのが非常に困難な時代が来ると思っていたけれど、組合せと合わせ技で乗り切ってゆこうとする動きが出てくるのでは?

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