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しなやかな会社づくりー企業家と経理

第121回 危機管理     ケーススタデイ8       税金も大事だけれども、それよりも大事な点

2017年11月16日

 社長さんが返品伝票や売上伝票に当たってみることなど、社長のする仕事ではない、というお叱りの言葉が聞こえてきそうです。確かに社長さんは

 1、売上を作ること

 2、なし

 3、なし

 4、製品、商品の開発

というように、社長が伝票をめくるなんてとんでもない、もっと高度の経営や管理と会社の将来の青写真を社長室にこもって描かなくてはならない、とのご意見もあるでしょう。

 

経営学を学んだ方ならそう考えると思います。

 

 しかし考えてください、今の状況は、普通の状態ではなく、税務署から質問されているのです。経営学の「理論」から言えば社長がその矢面に当たることはないかもしれません。しかし経営学でも経営者の役目には「例外管理」という項目があるはずです。

 

 いまはこの例外管理をされる時なのです。ですから是非、社長さんに自らの手で調べてほしいのです。「ケイリなんかようわからんヮ」と仰る社長は多いです。社員は見ています、社長がどう対処されるかを。

 

 「ワシはよう分らんから、テキトーに返事しといてや」といって問題に近寄ろうともしない社長を従業員はどのような気持ちで見るでしょうか。いい印象ではないようですね。

 

 それよりも、この税務署の質問の背後には(最悪の場合ですが)在庫の横流しの可能性があるのです。社内にそれを実行した人物がいれば、社長の対応をじっと観察しています。これからも同じことが可能か、もっとほかにスキがないか。

 

 これらは最悪の場合ですが、それ以外にもここで社長が目に入れていただきたい事柄があります。

伝票の整備具合、一連番号に沿って、保管されているか(売上伝票に一連番号が付されていない、などは論外です)。

売上帳への記帳は間を置かずにされているか(伝票があっても相手先への債権として記されていないなら、〆日に請求できますか?)。

在庫が置かれている場所の整頓はできていて、品目ごとの区分はできていますか(商品が、ただ転がっているだけの会社もあります。これでは管理されているとは言えません)。

在庫が入ったら即、仕入れの記録になり、在庫が出た場合は売上の計上になるようにシステムが連動していますか。

 

これらを、こんな時こそ体感して問題がないか考えていただきたいのです。社長室から出られて「現場」で事実を見てください

第122回 危機管理  ケーススタデイ9    経理上の問題は、、、

2017年11月17日

 在庫の横流しの話に行ってしまいましたが、このようなことは、殆どが「出来心」からのものであると言われています。たしかに、盗みを平気でする人は昔も今もいるでしょうが、それは例外でしよう。何かの事情があって困っているところへ会社の体制がザルであることが見えてきての出来心です。そのような不幸な人を作らないことが経営者の仕事でもあります。

 

 米国公認会計士の研修では、毎年Fraud(不正行為)という科目があり、実例が生々しく報告されます。しかし国民性や文化も違うのでわが国では、それほどえげつない例はないのですが、最近は日米の差が少くなくなってきています。たまに大胆な例がわが国でも報道されています。

 

 それよりも会社内の環境が、出来心からの不正行為に引き金を引きやすい環境になっていないかの確認が必要です。疑心暗鬼のない、明るい職場の空気を維持するためにも、問題点がないかをこの際、社長が見直していただきたいのです。税務調査は、いい機会であると思います。

 

 こんな機会に社内の整備をされないで従業員さんを猜疑心で見るのは最悪です。本末転倒です。そうではなく仕組みを作ればいいのです。

 

 このことが、よりよい会社作りにつながります。考えようによっては税務調査がそのきっかけを作ってくれたのです。この機会を逃がすことほんとうに勿体ないです。

 

 顧問の会計事務所が不正行為が起こらないように平素に提言しても大多数の社長さんは、お聞きになりません。税理士の言うことは聞かないが税務署の言うことは聞く、傾向があります。

 

 却って顧問料というカネを払っている相手に、そんなことを言われるのは嫌や、というタイプが意外に多いのです。反面、権力をもった税務署の人から言われると、聞く耳を持たれます。それでもいいですから、社長が聞く耳を持たれたら改良のいいチャンスです。

 

 しかし、のど元過ぎれば、またもとに戻ってしまい、改良はされません。このことは元税務調査官をされておられた税理士さんも同じことをおしゃいます。結局、改良の手を入れる「実践」はされません。のど元過ぎたら、結局なにもしないという結果は同じですが、のど元過ぎるまでの暫くの間は「問題が起こらないようにしなければ、、、」と口では仰います

 

 会計事務所が忠告させていただいたら無反応です。この違いはお上(オカミ)や権威に極端に弱い国民性なのかもしれません。

私はこれまで何百人の経営者に接してきましたが、50人に一人くらいの割合で粘り強く実行される社長さんがおられます。そのような会社は堅実に少しづつ成長してゆきます。会社の空気も明るいです。

第123回 危機管理  ケーススタデイ10      税務署の質問への答え

2017年11月20日

 質問についてケーススタデイ7の「社長が確認すべき事柄:の1~4を実行された結果はいかがでしたでしょうか。

ここで申し上げたいことは一言です。「整理」が出来ていましたか?ということです。

 

・伝票がPCの中でスグ出てくること。

・裏づけの送り状が整然と保管されていること。

 

 以上が最小限です。この最小限さえもできていないのが現実としたら、これら最小限をはるかに超えた次元で売上げの分析をしている競争相手に勝てません。

 経理事務の水準も上がってきています。PCの中に重要な情報があるのですから、これらを活用してください。

 

 在庫はこれくらいにして次に売掛金についての税務署の質問に移りましょう。1、2,4の質問が在庫に関するものでしたが、今度は違います。

 

税務署の質問2の意味

 売り先である乙社はすでに払ったと言っています。貴社の経理記録には入金がありません。税務署の質問の背後には

<売上高自体は過少ではなく、正しい売上高です。その証拠に乙社には仕入れとして同じ金額が記録されています。決済方法は小切手でした。番号もわかっています。この小切手は誰が換金しましたか、貴社の銀行預金には入金はありませんよ>

 

ヒント:社長がポケットに入れたのではないですか?と思われています。身に覚えがないなら調べて反証しなければなりません。

 

社長はどこから手をつけますか?

第124回 危機管理   ケーススタデイ11       売掛金の集金分が行方不明に、、

2017年11月21日

 昨日のヒントでは「社長がポケットに入れたのでは?」との疑念を持たれています。

なぜこういう理屈になるのかを理解しておけば、相手の思考回路が分かります。ここを理解しようとしないで、感情的になってはイケマセン。

 

 税務署は、社長がポケットに入れたと結論づけてはいません。可能性の一つとして挙げられています。

そこにはどういう理屈があるのでしょうか

 

 こういうことです。乙社は小切手で払った、その小切手は現金になっている、現引きといって銀行の店頭で現金にすることもできます。会社以外の銀行口座で交換に回されて、その口座に小切手と同額の金額が入れられたかもしれません。

 

 それらの行為をしたのが社長であるなら、乙社から小切手を受け取った時点で売掛金は回収され<直ちに会社に入金したものとみなされ、即、社長に臨時賞与を払った、または貸付をした>というストリーになります。

 

このストーリーと事実を較べてみます。ポイントは下の3Wです。

 ・小切手を受け取ったのが誰なのか   Who

 ・小切手はどこで換金されたのか、現引きも含めて   Where

 ・換金されて何に使われたのか、または使われないままストックされているのか   What

 

  これらの行為の主人公が誰であるかによって課税関係は異なってきます。社長が、ご自分は関わっていないという場合、Whoを明らかにすることが大事です。

 

 下手をしますと得意先である乙社の信用も失います。集金担当者が多忙なためカバンに小切手を入れたままということはままあります。しかしこの例は換金されています。小切手を失ったのであれば報告されるべきで、それなら、それなりの対処ができます。

 

 実態を知るために社長が解明しなければなりません。とともに、どんな結果であれ現実を直視し、内部体制に欠陥があればこの際是正しましょう。

第125回 危機管理    ケーススタデイ12   集金された売掛金はどこへ

2017年11月22日

 3WのWhoが社長であれば、役員賞与になります。役員賞与はその性格が利益の配分であり労働支出の対価とは見られませんから損金にはなりません。法人税が課されます。とともに社長の収入になりますから当然に所得税もかかります。重加算税については隠ぺいの意図がなかったとはとても言えませんから、アウトです。小切手の金額の35%が重加算税として課税されます。

 

 社長が集金に行かれてもらった小切手を自己の預金に入金したことはウッカリしていたという弁明の余地はありません。余程、ウッカリしたことを説明できる事情があれば、役員賞与になる代わりに、会社から社長への「貸付金」という扱いになる場合もあるかもしれません。この場合は、事情がありますから隠ぺいの意図がないと認定されれば重加算税ではなく過少申告加算税で(原則)10%です。

 

 この場合は、税歴(納税の履歴書)も少しはマシになります。とはいうものの自己の利益を図って会社に損害を与えていますから「特別背任罪」といわれても仕方ありません。このようなことをされる社長には会社は自分だけのモノとの認識があるようです。これからの時代の経営者の資格は?ですね。

 

このようなことが従業員に知れ渡りますと社長の立場はありません。役に立つ従業員から退社してゆくと思われます。

 

 ではWhoが従業員の場合はどうなるでしょうか。従業員は役員ではありませんから役員賞与にはなりません。通常は従業員への「貸付金」として一旦は処理されます。法人税はの追徴課税はありません。従業員から事情聴取をしてその金額を会社の口座に返金してもらうことが最小限必要です。

 

 税務のことがテーマですから横領などの問題には触れませんが、一般的には刑事事件にする前に本人や親せきが会社へお金を返すことで収まる場合が多いようです。金額にもよりますが。そのコースをとれなくて本人が退職したなどで回収できないことが確実になった場合は貸倒として処理されます。

 

 従業員が小切手を落とした場合は事故費として処理するしかありませんが、いきさつを十分聞きだす必要があります。法律の専門家の支援を受ける必要もあります。

第126回 危機管理   ケーススタデイ13   初歩の初歩

2017年11月24日

 課税関係の前に重要な点があります。売掛金の場合、社長が税務署からの質問に答えるために社内のどこを見て回ったのでしょうか。そしてそこに何が欠けていたのでしょうか。

 

 一番に社長が確認しなければならないのは、このA 会社の領収書の保管状況です。集金に行く場合に領収書を携行してゆくのは当然ですが、問題はその控えが他の人の手で確認できるようになっているかです

 

 会社によっては、何冊もの領収書が同時発行され、書き損じなどの場合も、それをその場で破って、次のページを使用する、会社にもち帰ってもその領収書は、従業員のかばんに入ったままで、入金の報告の際にも、経理担当や総務担当が領収書綴りの「耳」(綴り込まれた残り部分)を確認しない、などが横行しています。

 

 この状態では、勝手に社判を押した領収書が乱発されかねません。それと領収書に一連番号が付されていない会社もあります。一連番号を打つのは初歩の初歩です。

 

 一連番号が付されていたら、Whoについても追跡は容易です。加えて集金の結果は必ず他の人も加わって処理されなくればなりません現金は集金した人から、現金管理者へ渡し、同時に売掛金の回収を記帳入力する係へも結果が回されなければなりません。できたら3人、少なくとも2人の分業体制は必要です。記録、保管、承認の3機能を分化させることです。

 

 これらの役割分担がはっきりと見える形でできているかを確認することが、責任者である社長の重要な仕事です。責任領域を明確にすることは従業員の一人一人が自分の立ち位置が分かり、モチベーションが上がります。

 

更に責任領域に応じて貢献度が明確化されていれば「集団無責任体制」に陥ることは避けられます。

第127回 危機管理   ケーススタデイ14     まとめ・・・何が問題なのか

2017年11月27日

 集金された売掛金が行方不明になったケースで、小切手を受取ったのが社長であった場合と従業員さんであった場合で、課税処分が異なることには触れました。

 

 このケースでの問題点は、誰が受け取った以前に、かなりずさんな内部体制にあります。領収書の管理責任が不明、領収書に一連番号もない点、役割の分担が不明確であることなどです。

 

 このようなことでは、これから先にもっと大きな問題が出かねません。今回の税務署の指摘をラッキーと考えて地道な内部体制の構築に向かわれたら良いでしょう。

 

 このように書きながら、不躾ですが大部分の中小企業は「地道な内部体制の構築」を実行されないのではないかと思っています。直ぐ利益に結び付かないことは実行されません。

 

 これまでの時代では性善説でもやってこれたかもしれません。しかし時代も人心も大きく変化しています。キャリアを積まれた社長ほど性善説に傾きがちですが、それはこれまでが良い時代であったからではないでしょうか。日本人の心情はもっと性悪に傾いているように私には見えます。

 

 しかも世の中の傾向は、すぐ利益になること、すぐ資金獲得につながること、あるいは、すぐ自分の見栄や体裁を満足させること、他人から見てよい評判を取れること(異常に他人の目を気にする傾向)、あるいは有名になることには敏感ですが、見えないところで基本の基本を手当てすることは流行りません

 

 ある意味では、目端の利いた人たちから見れば、内部の制度を整えることなどはバカのすることくらいに思われているかもしれません。

 

 しかし考えてみますと、確かに人間の世の中では「力」のあることが生き抜く唯一の条件であり、それを持たない人々は虐げられてきました。何千年もです。

 

 それゆえに人々は「力」を求めます。力は、権力、地位、カネ、出自などの姿をして光っています。中小企業や一般の働く人々はこれらのどれにも縁がないかもしれません。

 

 しかし、どれにも縁がなくても、すぐ役立たなくても、必要な努力を積み重ねることで「小積為大」にゆくことから道が開けてきます。これまで述べたことは「小」さいことですが為大に繋がることです。

第128回 危機管理       これまでのまとめ

2017年11月28日

 これまでのまとめをしてみます。

要するに利益を得にくくなってきて、競争が激しくなるなかで、安易な自己修正が行われるようになり、その場その場をしのぐことが普通になります。

 

 在庫も借入金も多いうえ売掛金も滞留しがちの中、根本の原因究明と対策に手を打たないため体質は変わりません。

結局、安易な自己修正の結果、つぎのような特徴をもったまま推移してゆきます。

 

1、借入金が借入を呼ぶ。

2、在庫の損切をしない。

3、マイナスの得意先を切らない。

4、設備の老朽化を放置する。

5、かろうじて黒字の決算結果で、低空飛行。

6、内部統制の不在。

 

 このような状態のところに税務調査があっても、税務署の指摘に反論もできないそれをきっかけに、改善に踏み切れない

現場の貢献度が見えるようになっていないし、協業と分業のシステムが出来ていない。

前例踏襲のまま、何年も過ぎてゆき、世代のみ交代するなかで活力を失うことが多い。

 

 その反面、小さいことでも改善に改善をかさねて「小積為大」の基本を身につけた新しい事業が起こってきています。

旧来の中小企業は、日本人特有の官や、権威に弱い特徴は改まりません。

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