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しなやかな会社づくりー企業家と経理

第145回 一歩先を拓くために       積水を深い渓に落とす威力を⑥  会計のエンジン

2017年12月21日

 自社の危険個所を示すことですが、社長としての感覚と会計数字を比較してみて、ずれの部分が大きいほど危険に「近い」のです。

思い込みと現実との差ですから、単なる勘違いで済まされる場合もあるでしょう。しかし、社長が認識されておられることと実際との差が大きすぎる場合は、認識の差が、他の部分に波及することが怖い点です。連鎖してゆきます。

 

 具体的にみてゆきましょう。

まず粗利益率です。個々の商品の売値を決められる際には、簡単なケースでは仕入価格+仕入付随費用の合計に、市場価格を視野に入れて利益を上乗せされて売値を決められると思います。従って粗利益率は社長が一番良く知っておられるはずです。

 

 損益計算書の粗利益率はある会計期間の在庫の増減を仕入れ価格の合計に加算または減算して売上原価を出して総売上高との差額を粗利益として算出します。計算方法が全く違います。

 

 算式としては

粗利益率÷総売上高=粗利益率になります。

この率が、社長が値付けをされたときに想定された粗利益率と異なるのはどんな原因があるのでしょうか。ここを考えなければなりません。理屈の上では、個々の商品を売った都度計算される粗利益の総額と、損益計算書上のそれは完全に合致するものです。

 

 いかがでしょうか。何か思い当たることはありますか。ヒントは現場で起こりがちのことで、社長が気づきにくい点かもしれません。2点考えられます。

 

 1、売り場での値引きが多く結果として粗利益が正価販売に比べて下がってしまうこと。

 2、期末在庫の評価をする際に、陳腐化した売れ残り商品の評価が下がったり、いろいろな原因であるべき在庫品が実はなくなっ  

   ていたため原価率が上がったため粗利益率が落ちたこと。 

 

 いろいろな原因には在庫の自然な摩耗、摩滅のほか、横流しや盗難による場合もあります。このほか使用期限切れで処分せざるを得ないばあいも原価率が上がります。これらの出来事につき社長へ報告が来ておれば良いのですが、社長が知らない場合は問題の根が深いです。

第146回 一歩先を拓くために       積水を深い渓に落とす威力を⑦  粗利益率と原価率

2017年12月22日

 社長さんや経営陣が気づきやすい粗利益と、気が付きにくい粗利益についてもう少し見てゆきます。

小さな商店などで、経営する人が売り場で売上を担当し、日々の売れ残り品を確認し、月末にも在庫を」自分の手で手に取って確認される場合などは、日々の売上の集計額から導かれる粗利益率と月次を占めた後の粗利益率には開きはありません。

 

 それは一人で何でもされておられるからです。でも実際は、複数の人が仕事を分担して行いますから、このような場合はむしろまれでしょう。

 

 複数が携わるばあい売上高が社長の想定額と実際の額と違います。差額は値引きですね。販売員の数が増えるにしたがって値引きの幅も開きます。あるところで「ともだち」が来店したのでその販売員が只にしていた場合がありました。これは極端な例ですが、粗利益は社長の想定額より上がることはなく下がって当たり前なのです。内部の連携や連絡、申合わせが大事であることを示しています。

 

 次に在庫の把握によって粗利益率が異なる仕組みを見ましょう。一つひとつの商品が売れる都度計算される差益(売上高ー仕入高)の総計の計算は単純な差引額の足し算ですが、会計の粗利益ならびに粗利益率は2段構えの計算をします。

 

 1、仕入高の期間合計+期間の初めに持っていた在庫ー期間の終わりに残っていた在庫=売上原価といいます。期間は月や年を使います。

 

 なぜこんなことをするかといいますと、毎日売り切れ御免のパン屋さんで、しかも売るパンは他のパン屋さんから朝に仕入れてくる場合は、日々の在庫は残りません。(自店でパンを作る場合は材料類がの残りますから、在庫ゼロではありません)。このような例は実際はないでしょう。日々在庫を持って商売をするのが普通です。そうしますと月末には在庫を翌月に持ち越します。しかし翌月には、前月から持ち越したものから販売するとは限りませんん。月初めに仕入れたものから即、販売することもあります。

 

 そうしますと、どの商品から販売されたかはわからないのです。従って期間の最初にあった在庫品に仕入れを加えます。この合計が「売れていった商品と思われるすべて」です。しかし期間の末に売れ残った商品があるはずですから、この部分は実際に売れてはいませんので合計から控除します。控除後の金額こそが、売れていった商品のモトの値段を示します。こうして売れたもののモトの値段を売上原価といいます。控除された部分の金額は期末在庫です。このように期末在庫の多い、少ないによって売上原価が変わるのです。

 

 2、粗利益を計算する第2ステップです。売上高ー売上原価=粗利益です。粗利益率は粗利益÷売上高で計算されます。ここで粗利益+売上原価の合計が売上高になることにお気づきでしょう。

 

 結局、粗利益率+売上原価率=100%の関係になります。粗利益率が20%でしたら、必ず原価率は80%になります。それはさておき、期末在庫の増減が売上原価とともに粗利益率に影響することをここでは理解していただきたいのです。

第147回 一歩先を拓くために       積水を深い渓に落とす威力を⑧  粗利益に潜む危険なこと

2017年12月26日

 このような計算をしますから、社長の思われておられる粗利益と会計で表示されるそれとの間には次の相違点があります。

 

1、値引額

2、実際在庫の目減り

 

 この二つは、社長が社長室に居られるばかりでは見つけることは出来ません。売り場ではPCで販売ごとの売価が分かる体制の場合は、販売員の名前と売上伝票がSETになっていますから計数的には把握できます。このような小売り以外の業種では、営業マンの日報などから値引きの実態が分かるようなシステムにしなければこの問題を解決できません。

 

 小売りの場合でも売上伝票と販売員の関連が見えないレベルでは、社長の知らないところで意外な値引きが起こることになります。「知らないのは社長だけ」に状態で、このような値引きが社風として引き継がれてゆきます。

 

 考慮の外の想定外の値引きで失われた粗利益を想定していただきますとこの問題の怖さが見えてきます。それよりももっと恐ろしいのは低い方に流れるような社風ができてしまうことです。巨大企業での不正が報道されていますが、この点では中小企業も注意しなければなりません。

 

 2の実際在庫の目減りも内部体制を完全にしておけば防ぐことは可能です。在庫管理システムを導入していても、実際に在庫に当たらうことをしなければ、システムは空回りです。その前に在庫をないがしろにしない、ことが社内で認識されていることが重要です。

 

 「積水を深い谷に落とす」ように思い切って、システムに予算を投下することと、仕組みづくりをしなければ解決しません。

社長室から現場に出られて、ここと思うポイントに資金を投下すべきと思います。

第148回 一歩先を拓くために       積水を深い渓に落とす威力を⑨ 粗利益に潜む危険なこと

2017年12月27日

 会計データを基にした、いろいろある経営指標のうち粗利益率一つを取り出しても、事実を知り現場を確認し改めるべきを是正することはなかなか大変です。

 

 このことに対処するためのヒントを申し上げます。「日本の国のような会社」になってはいけないということです。

国の政策のことを言ってるのではありません。国の運営を経営に当てはめますと分かり易いです。

 

要するに、

現場を知らないTOPである議員や官僚が国を動かすのですから、組織の仕組みで上まで現実が伝わりにくいようです。

・完全なタテ社会ですから、一定レベル以外の人には発言も許されません。

前例と慣例で動きますから、みづから変化することは期待できません。

・安定しているだけに危機感が薄いのではないかと思われます。議員さんは選挙がありますから危機感は高いですが、その危機感は選挙に通ることへの危機感ですから、危機感の意味合いは違います。

・税金を基に動きますから、資金の心配は全くいりません。お金は湧いてくる感覚でしょう。

・議員は世襲制になりつつあります。一般の人は疎外感があるだけです。

 

 中小企業の経営はまさに逆です。現場を十二分に知り(知らないと従業員にバカにされます)、他人の意見に謙虚に耳を傾け、前例通りを避けて創意工夫し、何が起こっても対処できる態度を維持し、資金の枯渇を常に警戒して、先手を打たなければなりません。また人材を抜擢して活躍の場を与えないと人が命の中小企業はやってゆけません。

 

 しかも今後、従業員のレベルはどんどん低下してゆきます。面従腹背の風土のモト、従業員のレベルを維持することは大変です。経営者がすることはいっぱいあります。いま一番に手を打たなければならないことは何か、を判断しなければなりません。

 

 「日本の国」の例えとは異なりますが、他にも中小企業経営者が注意しなければならない人たちがおられます。大学の経営学の先生です。先生方の中には現場に入って指導される方もおられるのですが、研究室から一歩も出ない、世間を渡ったこともない、外国の文献を読むことはできても企業の問題の解決には縁がないタイプの先生もおられます。(私が言うまでもなく)現場重視の社長の胸には響かないと思います。経営学と経営とは大きな距離があります。

第149回 一歩先を拓くために       積水を深い渓に落とす威力を⑩  会計のエンジン まとめ

2017年12月28日

 会計の数字を使う場合に、粗利益で触れましたように、社長の捉え方と実際の決算書で示される数字との間には開差があります。この開差には大きな溝があり、その溝を埋めるには、

 

 ・必ず社長が現場を見られて確認をすること。

 ・それが生じないためのヒト、モノ、カネを集中して、積水を深い谷に落とすような決断をすること。

 ・一過性に終わらないために、継続して体質になるまで定着させて、自社の経営風土にすることです。

 

これで初めて、一区切りといえます。

 

 会計の数字は粗利益以外に売上個数、来店客数、在庫商品の回転率、固定資産の寿命年数、労働分配率、などが有効ですが、これらの解説をすることがここの目的ではありませんので、必要な書籍を見ていただければ意味はご理解できるでしょう。

 

 ここで必要なことは、単なる数字の分析ではなく、自社の体質を変えて、強靭なものにすることですから、どの状態で、判断のためにどの指標を使えばいいのか、が重要なのです。

 

 指標が多ければ良いというものではありません。自己満足になってしまって、実際のメスが入らないと意味がありません。

もうひとつ大事なことは、経営面で現れた現象を社長が見逃さないで、しかもご自分の手で確かめ、アタマで考えて打つ手を出さなければなりません。

 

 ここは社長しかできません。責任も社長です。孤独かもしれませんが社長の腕の振るいどころです。戦略性も要ります。

もっと重要なことは、潜んでいる問題を係数を使って、見つけることです。とても大事です。

 

 *****(ご案内)******

年末休暇に入りますので今年はこれで終了させていただきます。お読みいただき、ありがとうございました。来年に続きます。

平成30年は1月9日から始めます。

第150回 危機は向こうからやってくる         バイト学生からの不満:売上に比べて時給が低い①

2018年1月9日

 今年もよろしくお願いします。年も改まりましたので形式を変えてスタートします。

改めて、このブログで私がお伝えしたい要点を整理させていただきます。

 

1、中小企業を取りまく環境が厳しくなるなかで、しなやかな強い会社づくりに役に立つこと。(良い話ばかりではありません)

2、浮かれた人が多いなかで、現実と事実をみて、現場を知り、具体的に手を打つ経営者に役立つこと。(抽象論を排します)

3、すぐ役立つ話ではなく、経営者が自分のアタマに入れて考えるヒントを心がけます。(すぐ役立つものはすぐ色あせます)

4、会計や資金、税務などの内側の話題だけではなく、これらと外側の状況との関連で書きます。(内側にはコストしかありません)

5、専門用語をできるだけ使わないで、かみ砕いたワカリヤスイ表現にします。

 

どれくらい実際にできるか分かりませんが、少しずつ進みます。

 

 例:1

 コンビニ店を3店経営しています。従業員の一人が「自分の給与は安すぎる。会社は儲けているのにこんな給与ではやってられん」と言い出しました。その不満を同僚にも言うため、社内の空気が急に悪くなり困っています。

 どうして会社が儲かっていると分かるのですか、と尋ねますと「自分がレジの番をしている間の6時間でレジの売上は20万円になった。12時間なら40万円はあるだろう。ところが自分の給与は時給1000円なので12時間働いても1万2千円しかない。40万円も利益があるのに従業員の給与は1万2千円は酷い!」利益をため込みすぎだと、まくしたてます。

 社長の私はうまく説明できません。現実には手許キャッシュは増えないばかりか、月によっては持ち出しです。この従業員は理科系の大学生でお客さんの対応が良いので長く勤めてほしいと思っています。相手にわかるように説明したいのですが。

 

ヒント

・その学生さんは売上と利益を一緒にしていますね。

・売る商品は只ではなく、貴社が仕入れたことを伝えなければなりません。

経費には人件費だけではなく店の器具類のリース料、電気代、電話代、本部へのロイヤリテイーなどが掛かるのも見えてません。

・あなたの報酬はそれらを払った後にしか取れないことも付け足してはどうですか。

 

次回に説明しましょう。

第151回 危機は向こうからやってくる         売上と時給②

2018年1月10日

 この話は損益計算書を用いれば説明は容易ですが、まず日常のお仕事に添って考えてみましょう。

一番気になる点は「社長の私はうまく説明できません」と仰るところです。

 

 二つのことをチェックされてはどうでしょうか。

 

1、その大学生はお客対応が良いので、不満をもって辞められたらマズい、とアタマが先にソコへ行ってしまったのではないでしょうか。損得を先にもってきますと冷静な判断ができにくくなります。

 

2、ご自分の日常を映画のシーンのように思い出してみましょう。商品の搬入があり、あなたはその商品の中味がオーダーと合っているか、個数は正しいかなどを確かめてから伝票にサインされたと思います。そんな日が繰返し続いたある日、その日が支払日なのであなたは銀行に行かれて何通かの請求書の金額を振り込まれました。ついでに、通帳に記帳されたそのほかの自動振替での電気代や電話代などの引き落としが正しいか確認されたと思います。

 

 冷静になって、これらを振りかえられたら、そのアルバイト大学生が言うことはオカシイのではないか、と気が付かれると思います。ご自身がされた行動ほど正しい判断をもたらしてくれるものはありません。他人はいろんなことを言ってきます。これからもです。しかしご自分のカラダで行動したことはカラダが正解を知っているのです。一番正解を知っておられるのは業務を統括して運営をされている社長のはずです。

 

 今回のことをいい機会と考えられて、ご自分のカラダでこなしておられる流れを見直されますと、十分にその大学生に「キミの言うことはおかしいですョ」と優しく説明ができるのです。

 

次回は、この流れを、貴社が税務署に申告書とともに提出された決算書に即して説明しましょう。

第152回 危機は向こうからやってくる         売上と時給③

2018年1月11日

 先に相手の言うことに反応してしまって損得が先にきて冷静さをなくしてしまうのはなぜでしょうか。このことは誰でもありがちですが、首から上(アタマ)が先に反応してしまうからです。

 

 この学生さんはある意味で正直ですから、思うとおりに言ってくれました。世間にはもっと底意地の悪い、相手の感情を逆なでするような物言いをする人が多いです。そのたびにアタマで反応していたら、ついウッカリと乗せられて、感情からのほころびのある言葉を発してしまいます。そこを狙って蜘蛛の巣のように待ち構えている相手に揚げ足を取られてしまいます。

 

 平気で嘘を言う人や揚げ足取りをすることが普通になった今どきでは、その学生は純粋な疑問を投げかけただけなのです。社長であるあなたは冷静に整然と相手の疑問に答える段階です。そのためには基本の事柄を整理してみましょう。

 

 そのためにカラダの声を聴きましょう。首から下(カラダ)の方は冷静です。いつもほぼ正解を出してくれます。現場で実務に当たっているあなたのカラダは日常の仕事の流れを、個々の仕事が相互に関連した全体でとらえています。孤立して認識していません。全体で分かっているため、その学生さんのように全体が見えてないで自分の視野にある「売上」と「時給」だけをとらえて素朴な質問をされますと、うまく説明できません。

 

しかし答えは既にお持ちです。全体の内の相互関連する各部分の接点を切り離して整理すれば良いのです。

 

売る商品は仕入れたものである。

仕入れた値段より、売る値段は常に大きい。

・仕入れたものは、売れないで翌日以降に在庫として持っている

在庫品の置かれているストックヤードは空調が行き届いている。

空調費もバカにならないし、メンテナンス契約もしなければならない。

・店の中の機器のレンタル費用もロイヤリティーと共に支払わなくてはならない。

支払いには人件費と家賃の金額が大きいな。

・税金の支払通知書がきていたなあ。

 

 このように関連する言葉を整理しますと売上高、仕入高、在庫、水道光熱費、管理費、賃借料、租税公課などになります。この流れは決算書の表示と同じなのです。

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