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納税者と税理士の紛争事例から学ぶ

第61回 譲渡所得:現実の動きを知らされず原則論を回答しただけで修正申告分の賠償を求められた例

2019年7月17日

(ストーリー)

 既にH9年分の譲渡所得がある依頼者は先祖伝来の土地の譲渡時期を10年度にしたい気持ちがありました。9年に売買契約し10年1月に最終決済と引渡しをする売買契約を結びました。

 買い手の都合で所有権移転登記は9年にする話が持ち上がり税理士に10年分の譲渡になるか確認したところ、税理士は、引き渡しと最終支払が10年であれば10年の譲渡になると原則論で答えました。

 ところが契約書では最終引渡しは翌年1月になっているものの、9年11月の中間金支払い時に所有権移転登記をするだけでなくこの日以降売主は担保責任を負わないこと、危険負担は買手に移転すること、公租公課も売主は負担しないことが明記されていました。税理士は蚊帳の外で、申告時期までは売買契約書を見ることはありませんでした。

 実際には9年12月に買主はこの土地を隣地の所有者に転売し直ちに盛土をして造成に着手しました。これらの動きも税理士には知らされませんでした。

 11年3月に税理士はこの土地の譲渡所得申告と特定事業用資産買換の申請をしましたが税務署からこの土地の譲渡所得発生時期は9年であるから修正申告を求められました。依頼者は税務署に異議申立をしましたがされ棄却され、税理士に損害賠償を求めました。

 

(双方の主張)

依頼者:税理士と顧問契約を締結していた。譲渡の契約内容について点検する義務が顧問税理士としてある。義務違反である。

税理士:顧問契約は締結していない。申告手続きのみである。義務はない。

 

(結 末)

譲渡の日は所得税基本通達36-12にいう「支配の移転の事実」によるから中間金受領日である9年11月である。

売買契約の草案を税理士に送った事実は認められないし、履行状況の報告もしていない。これらのことから売買契約の内容を点検

 する事務委任の事実はない。よって請求を棄却する。

 

(ポイント)

 依頼者との間にヒトを介在させないことが濡れ衣をかぶせられることを防ぎ、被害を避けるために重要であるが、本件は買主であるとともに仲介業者でもある人物が介在したためストレートな情報が税理士に伝わらなかった。

 この人物は成果を焦ったのか譲渡される土地上の建物賃借人に売主の了解をえないまま勝手に立退き交渉までしている。このことは勿論税理士には知らせていない。それどころかこの人物は自社が損害賠償されないためにか税理士に売買契約の中味を読み聞かせたと証言したが、この証言は自社と自己の利益を防衛するためのフェイクと認定され「採用しがたい」との結果になっている。

 別に依頼者の妻は税理士の発言時に録音隠し撮りをしており反訳書を提出したが認められていない。税理士は油断もスキもない環境にある。

 

参考:tains Z999-0109

第62回 杜撰な経理や優遇税制の情報が伝わらなかったのは依頼社、会計事務所のどちらが原因か

2019年7月18日

(ストーリー)

 公認会計士は初めに簡単な打ち合わせを依頼社の代表者とした後は申告期限の10日乃至20日前に担当者に1年分の帳簿資料を受取りに来させるだけでした。依頼社は会計ソフトを用いて自社で会計処理を行っていました。争いは平素からの会計資料の遣り取りや指導がスムースでないところへ会計処理の不備(仕入勘定に固定資産が混入など)とリース税額控除の優遇措置を受けられなかったことから無用な税負担をさせられたとして依頼者は会計士を訴えました。

 

(双方の主張)

依頼社

・担当者は決算結果の損益計算書(なんでも雑費勘定に計上され雑費が膨大な金額になり分析不可能)

 を示すだけで預かった資料精査することはなかった。払った顧問料は値打ちがない。不当利得

 還請求をする。

税額控除についても知らされずパソコン機器販売会社の営業担当者から知らされた。適切な助言を怠

 った。債務不履行がある。

 

税理士

・再三請求しても会計資料は出てこなかった。雑費勘定が膨大なのは良くないから是正指導したが改ま

 らなかった。残高証明を求め

 ても「当社の担当事務員がしっかりチェックしているので必要ない」との回答であった。報酬請求に

 は明確な根拠がある。

税額控除についても資料を交付して説明し、優遇税制適用のための資料を求めたが全く提供はされな

 かった。税額控除が適用されなかったのは依頼社が原因であり、当方に義務違反はない。

 

(結 末)

・会計士は依頼社の費用勘定につき裏づける客観的資料がない限り経費として控除の対象にならないことを認識していながら漫然と依頼社代表者が計上した額で申告し修正申告を余儀なくさせたのであるから注意義務違反の債務不履行がある。専門家であるなら依頼社の言うことを客観的に確認する必要があったのに怠った。

 

・会計事務所担当者は依頼社代表者に対し「優遇税制の適用ができるものがあれば資料を出してください」というだけで具体的にどの設備が該当するから資料が必要と言っていない。専門家でない依頼社代表者にとっては優遇税制一般の説明を聞いただけでどのような資料を出せばよいのかの判断をすることは困難であるからリース契約書の提出を求めるべきところそれをしなかったことは注意義務違反である。

 

(ポイント)

 雑費を始め経費勘定に経費にならないものが入っているのは(会計資料の是正を強く拒否するなどの)遣り取りから見て依頼社の意図ではないかと考えられる。

 補助者はあまりにもおとなしすぎ依頼社の代表者の言いなりで何も反論できない。このような腰のない対応では説得力を欠き海千山千の経営者相手にとてもではないが適正な申告はできないと思われる。補助者と会計士の間のコミュニケーション不足も考えられるうえ依頼社からナメられてしまっている。これでは仕事はできない。

 

参考:tains Z999-0113

第63回 税賠保険:書類添付失念に保険免責条項は適用されるか

2019年7月19日

(ストーリー)

 農業相続人である依頼者から相続税の納税猶予の適用を受けるために租税特別措置法に定める必要書類の添付を忘れたためこの特例を受けられないことになり依頼者らはやむなく修正申告して相続税を納付しました。その後、依頼者らは税理士に損害賠償を求めました。

 税理士は、損保会社に対し税理士職業賠償責任保険の保険金を請求したところ、この保険の特別約款第5条2項によって申告書を期限内に提出しなかったこと等の理由によって過少申告をした場合の償いの金額は補填しないとの規定があるという理由で損保会社から支払いを拒否されました。

 税理士はこの金額の支払いを求めて損保会社を訴えました。

 

(損保会社の主張)

・修正申告で納付する税額は補償しない。そうしないと過少申告又は無税の申告をしておいて後日保険金で不足税額を埋め合わせる不正な違法行為を助長する。依頼社と税理士が共謀して賠償保険制度を悪用することにもなりかねない。意図して必要書類の添付を失念したように装い保険金を請求する不正行為が想定される。本件はこの状況に当てはまるから保険金は支払えない。

 

(税理士の主張)

本件は過少申告や無申告のケースではなく添付書類を付して申告すれば納税猶予が働いて納税額が零になるものであり「本来納付すべき税額」は想定されないケースであり特別約款で定める不納付や過少申告とは異なる性質であり免責条項の趣旨に反するものではない。

 

(結 末)

・「本来納付すべき税額」とは「税理士の過誤に関係なく納税者として納付すべき税額をいう」のでこの税額を保険では補填しないが税理士の過誤により納付する必要がなかった税額を納付しなければならない場合は賠償責任保険の趣旨から補填すべきである。補填したから不正を助長する事態が発生するものでもない。

 

参考:tains Z999-0091

第64回 依頼者と税理士間の争い事例:まとめに代えて

2019年8月13日

 3月18日から7月19日まで税理士と依頼者(社)との争いの事例を掲載してきました。お読みいただきありがとうございました。

 

 争われた税目は相続税と消費税が多く損害の請求額も税額(本税と加算税や延滞税まで)を損害賠償の対象にするため多額になっています。裁判の結果2000年6月から2017年10月までにご紹介させていただきました46例の数字が示すことは以下の通りです。

 

 ア、損害賠償請求額  総計:44億2,106万円  1事例あたり平均額  9,611万円

 イ、裁判で確定した賠償額計: 7億1,423万円  1事例あたり平均額  1,552万円

    賠償獲得率(金額比)  イ/ア=16.16%

 

 賠償額ゼロの事例数 22件 (この請求額合計)27億8,737万円)・・・27億円/44億円=61%

損害賠償で裁判を起こしても賠償金を得たのは総請求額の16.16%で、61%が賠償金を手にできていないのが現実です。

 

賠償確定額の上位5件は以下でした。

    1、買換え取得期間誤り 法人税 2億4,406万円

    2、ハワイ資産申告洩れ 相続税  7,423万円

    3、青色申告取消    所得税  6,707万円

    4、留保金課税に誤回答 法人税  4,094万円

    5、受取配当金処理失念 法人税  3,946万円

 

 以上から読み取れることは、訴えて裁判で争っても賠償金を手にできたのは16.16%で、1円の賠償金すら得られない事例が61%に達していることです。

 結果はともかく裁判のコストや機会損失を織り込んでも訴えずにはいられない依頼者の気持ちがそれだけあるということかもしれません。言葉を替えていえば税理士への不満があるのではないでしょうか。双方の思い込みや無理解、コミュニケーションの不足が共通しています。第3者に相談されることも有効かもしれません。

 

 重要なことは、争わなくて良いように契約の段階から、争いが起こることをあらかじめ視野に入れてその芽を摘んでおくことではないでしようか。その過程で税理士との「相性」が悪い場合は税理士を替えることを躊躇してはなりません。そのためには当然のことですがその税理士の資格取得の経路(組み合わせで何通りものルートがあります)を本人に尋ね、得意分野、実績、経験を聞き出すことを避けてはイケマセン。ここから契約への双方の本音の話が始まります。評判もできたら聞き合わせると良いかもしれませんが、主観や風聞からのフェイクが混じるばあいがありますから注意しなければなりません。何よりも直接の対話が重要です。裁判になって時間や費用を使うことに比べたら造作もないことでしよう。

 

 次回以降は「大廃業時代:個別企業の現実と税制」のタイトルで始めます。似たテーマでジヤーナリストや大学の先生がNetや新聞で書かれていますが、個別中小零細企業の中に入り込んで現場や財務諸表の裏と表まで見ての視点ではなく政府発表の大きな数字をもとにして刺激的に書かれています。流れを読む参考にはなりますが経営の当事者が自社の舵取りに用いることはできません。

 設例と回答の糸口を読まれる方と一緒に考える形式にしたいと思っています。設例の考案のためや調べ物に時間がかかると思いますので毎日とは行きません。不定期です。ではよろしくお願いします。

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