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会計と税の見かた、考え方ーむつかしい時代を乗切るために

←『しなやかな会社づくりー企業家と経理』より改題

第1回 会計と税務は別の世界・・・・「会計」からの本音を聞いてみましょう

2018年2月21日

 今回は会計を擬人化して、言葉を喋ってもらいましょう

「私は会計です。国によって言葉が違いますので私の表現法は異なりますが、原理は同じです。いまを遡る13世紀にイタリアのヴェニスで生まれました。

 

 ヴェニスの商家に家庭教師として僧院から赴いたパーチョリという神父さんが、商家の膨大な帳簿類を目にして流れを分析していて数学の原理が当てはまることを発見し「数学概論」という本の一章にしたためたことから始まりました。

 

 我国にはアメリカの商業教科書を「帳合の法」として福沢諭吉先生が訳されたものが明治6年6月に慶應義塾出版局から出版されました。初篇には「筆端能く一世を経緯し、努力以て天下を冨実す」としたためられ、帳簿で全体を掴むことで天下に富をもたらす、ととれる言葉が書かれていました。

 

 当時の人々は熱心に勉強したようです。実学として役立ったことが事実ですが、その後、商業学校や商科大学までできて会計の「単位」は取るものの、世の中に出てからも使い続ける人は少ないのが現実です。事業をする人も会計を軽視し、法律を用いるお役人は計理ごときが、、との風潮で今に至っています。

 

 あの当時から早や150年経ちますが、本当に私を大事な道具として可愛がってくれる人は少数派です。議員さんは会計を誤魔化して政務活動費をポケットにいれて平気です。大会社はスキあらばと、粉飾を繰り返します。行政の会計は相変わらず福沢先生が嘆かれた大福帳式です。

 

 会計を検証する「監査」も大正時代に帝国義会(国会)で、会社だけではなく神社仏閣、公益事業に及ぶ会計監査の提案について議論されたものの、いつの間にか立ち消えになりました。「監査」が始まったのは戦後のアメリカの政策からです。

 こんな風土の影響からか、誰も会計の数字を重視したり信用もしません。ニーチェやマルクスが会計を大発見といったものの、折角の道具もゴマカシとセットで色眼鏡で見られます。自分の経営の鏡としてよりも、税務署への申告のために会計を使う人が多いのが事実です。

 

 案外、名もない中小企業や商売人さんが私を使って経営に役立ててくれます。そんなところは大きくはならなくても地道に経営をされていますので役立った気持ちがします。

 

 起業家の人も先のことが忙しいのかその日の収支もほったらかしです。気が先に行って、売上を取らなければと思われるのでしょうが、日々の結果を自分で記録するガッツもなくて事業ができるのか、首をかしげます。

 

 この国の人の特徴は無原則性で気が変わりやすく何事も一過性で乗りやすく冷めやすいですから、浮かれた人たちが多いです。会計軽視はこれからも続くのでしょうが、せめて少数で良いですから私を使って経営に役立ててほしいものです。」

 

 会計にモノを言ってもらうとすれば、こんなところでしょう。税務と違って会計は自由に拘束なく事業体の姿を示すことができる世界です。利益が多いとか赤字であるとかに関係なく、会計(人)相も歪まないで、良い会計相とは何かを、次回も続けてゆきます。

 

***考えるところがあり、今回からタイトルを「しなやかな会社づくりー企業家と経理」から「会計と税の見かた、考え方ーむつかしい時代を乗切るために」変えました*****

                                 これからも宜しくお願いします。

第2回 会計と税務は別の世界・・・・「会計」の示す姿

2018年2月22日

 それでは会計が示すその「事業の姿」といいますか「相」について続けます。

今回は固定資産を例にとってみましょう。土地以外の固定資産は使ってゆくほどに目減りします。この目減り分を減価償却費といいます。(時々、原価償却と書かれる方がおられますが、目減り分を表しますから減価です)ワタシの師匠は「ちび賃」と簡潔に表現されてました。

 

 税法で耐用年数が決まっていますから、通常はこの年数に従って決められた償却率を乗じて計算します。細かい計算方法がいくつもありますので、あまり詳しく書きますと枝葉にいってしまって、却って分かりにくくなりますので簡潔に表現します。

 

 1000万円でトラックを購入した例で説明します。トラックの耐用年数は5年と定められています。1000万円はひとまず貸借対照表の車両運搬具という勘定科目に計上します。そして5年に亘り毎年5分の一ずつを摩耗分(ちび賃)として減価償却してゆきます。減価償却費200万円は損益計算書に計上されます。そして同額が貸借対照表から減額されます。

 

 1年目の決算が終わって、減価償却を計上した後の貸借対照表の車両運搬具の残高は800万円になります。このようにして毎年200万円を損益計算書に費用として計上すれば5年後の貸借対照表の車両運搬具の残高はいくらになっているのでしょうか?

 

 答えはゼロです。帳簿上はそのトラックは存在しないことになります。(実際にそのトラックがまだ元気に働いている場合は実務では1円をつけます。廃車した時にこの1円を損益計算書に落とします)

 

 ここで問題です。

1、社長A:トラックの法定耐用年数5年らしいが、ウチは手入れを良くして10年は働いてもらいます。このような場合は、10年で減価償却しても良いのでしょうか?

 

2、社長B:ウチはトラックを酷使するので1年しか持ちませーん、1年でオシャカ(成仏する意味です)になります。5分の一などトンデモナイ。

 

 余談ですが、タクシーに乗ったとき運転手さんと四方山話をすることがあります。「お客さん、この車今で、走行距離は何キロと思います?とか何年使っているとかの話になります。もちろん手入れが行き届いているのですが、私がお聞きしたハナシの平均は45万キロ、15年~20年使っておられるようです。手入れ次第なのですね。私は平均10年しか乗らなかったので、手放したクルマに気の毒なことをしたと思いました。まだまだ余命が有るのに。

 

次回に会計の自由さと税務のかかわりについてお話しします。

第3回 会計と税務は別の世界・・・・「会計」の示す姿:前回の問題の答え

2018年2月23日

 では答えです。

 会計の世界では1も2も正解です。問題はありません。

たしかに社長Aのように長くゆっくりとトラックを使う場合は、法定耐用年数で5年が過ぎたら財産目録でもあるA社の貸借対照表にトラックが載っていないのはかえって不自然ですから、A社長の方針で10年で減価償却されても「会計上は」良いのです。資産に対する方針ですから。

 

 

 またB社長のように1年で全部の取得価額を、減価償却費として損益計算書に計上するのも、実態に即した会計です。「会計上は」これはこれで良いのです。

 

「会計上で」という括弧があるのは、外部へ公表しない場合において、という意味です。社内で自社の検討をする際の叩き台として、または社長が一人で自社の現状を考えられる時の資料としては実態に沿っているからワカリヤスイのでです。

 

 ところが決算書を社外へ出す場合は事情が違ってきます。たとえば銀行に決算書を出す場合、これまで書いてきましたような減価償却では、基準がないため銀行もその決算書を見て、よくわからないので説明してください、といわれるでしょう。

 

 さらに税務署に申告するときにはA社の例では利益が多い目に計上されていますから、課税上は問題はありませんが、B社は5年で償却するものを1年で落としていますから5年の減価償却に比べて、利益が過少に計上されています。指摘され追徴税額を取られます。

 

 このように外部に出す際には二つの関門を通らなければなりませんので、数字の修正が必要です。

1は会計基準が定められています。ここでは「相当の償却」として決められています。会計基準は法律ではありませんから違反に対し罰金などは掛かりませんが、会計基準に沿わない決算書を出すことは会社の品位を落とします。

 

2は税法です。これは法律ですからペナルテイ―がかかります。

 

 大事なことは、初めから会計基準や税法のルールに縛られずに実態の把握のために親しみやすい会計数字になじむことが重要です。そして外部に出す時に専門家のアドバイスで組み替えれば良いのです。

第4回 会計と税務は別の世界・・・・「会計」 前回の問題の答え 2

2018年2月26日

 それと、付け加えますが、たとえ社内での検討資料に使う場合でも、同じ会社で年度によって、ある年はトラックを10年で償却し、翌年には1年で償却してしまいますと、年度ごとの比較ができなくなってしまいます。

 

 ちょうどA社とB社が年度ごとに入れ替わるようなことになり、数字の傾向すら読めないことになります。しかもその背後には、

・利益が出たから、1年で償却しよう。

・損失なので減価償却費を少なく計上して、利益を計上するように見せかけよう。

など「恣意」でプラスの利益を減価償却費を多い目に計上して利益を少なく表示したり、その逆をしますと、「減価償却費」勘定に利益の調節弁の役割をさせることになります。

 

 これでは自社の本当の姿を見るためというよりも、自社の姿を歪めるための道具に会計を使うことになり一番良くない状態です。

例え社内であっても一貫した基準を定めないと、周りが振り回されます。

 

 会社は利害が対立する場ですから、社長と従業員(資本家と労働者)、社長と役員(同じ立場のように見えても委任の関係ですから限界があります)の間での揉めごとの種になります。

 

 このようなことは減価償却費だけではなく、引当金の計上や資産の評価のさいに評価益を出したり評価損を計上することで数字が変わってきます。

 これらの項目に共通する性質は「内部取引」であるということです。外部取引、その典型である売上は必ず資金の入金があって完結します。仕入れは支払いをして完了です。資金というフイルターを通しますからごまかしはできません。計上時期を早くしたり遅くしたりくらいは可能ですが、損益計算への影響は少ないです。

 

 殆どの取引は外部取引ですから、自社の内部で検討資料とされる場合は「内部取引」の計上を最小限にして、これらは期末処理として会計基準や税法の基準に沿って計上されるほうが良い意味で「単純」で透明性が保たれるでしょう。

第5回 会計と税務は別の世界・・・・問題のまとめ:内部取引と外部取引

2018年2月27日

 結局のところ会計で表される取引は、内部取引と外部取引に分かれます。主流は外部取引です。内部取引は会計に求められる評価機能とコストの期間配分の必要のため制度と慣習から生まれました。しかし人の判断で数字がぶれることは既に説明済です。

 

 外部取引は最終的には貨幣で決済され、取引先という反射鏡がありますから取引先との資金の遣り取りを通じて会社の姿を示します。

このことから、

 内部取引=ぶれやすい

 外部取引=事実を反映している

と考えて誤りではありません。

 

 自社の姿を反映するための会計から極力内部取引の影響を最小限に抑えることが、会社の事実を把握するために重要です。

では外部取引が記録された決算書のどこを見て我が社の良し悪しを判断すれば良いのでしょうか。

 

 資産、負債の回転の速さが今の時代では極めて重要です。

回転の速さとは別の表現をしますと、消化されない資産、負債が、いつまでも滞っていることが少ないことが回転の速さを意味します。

 

 逆にいますと貪重な決算書は、行き足が遅く、時代の速い変化から置き去りにされてゆくことを意味します。旧態依然に早く気づいて手を打たなければなりません。

 

 どこに目をつければ良いのでしょうか。次回はこの話です。

第6回 会計と税務は別の世界・・・・鈍重な決算書とは

2018年2月28日

 鈍重な決算書とは古いものが層のように集積していることを言います。

なにが集積しているのでしょうか。

 

売掛金回収速度が遅い。その理由はマイナスの得意先を切らないから、前例踏襲で先方にヨイショした取引条件で漫然と、旧来の取引を続けているからです。我が社の商品やサービスも旧態依然であることが多いです。それだから新しい条件を提示して一歩も引かない交渉が出来ません。そこを相手先に見透かされているので、先方は条件の変更ができないと踏んでいます。

 

在庫:売掛金の回収速度が遅いことと自社の製品・商品・サービスが斬新なものではないことがリンクしますむしろ原因は商品開発やサービスの改良に後れを取るからこそ、売っても資金になるまでが遅くなります。何よりも研究開発や業務改善に力を入れないと旧態依然という病に入ります。

 

 

固定資産:我々は必ず工場に入って機械の稼働状態を自分の目で見ます。一緒にメンテナンスが行き届いているかにも目が行きます。

古いものを大事にすることは良いことですが、新しい機械でなくては遅れるような工程では生産のスピードが違ってきますから致命傷になりかねません。最新式の装備が工程のどこに投入されているかです。固定資産を更新すれば貸借対照表の固定資産の金額は大きくなります。

 

 逆に古い装備のままでは減価償却が耐用年数に達して残存価額しか残っていない場合には、当然、固定資産勘定が少額化します。少額化することが斬新ではなく、固定資産勘定の残高が大きくても中身が最新であれば鈍重ではありません。ここは金額だけでは判断できません。金額という数量だけでなく性質(定性的)も見なければなりません。

第7回 会計と税務は別の世界・・・・鈍重な決算書を最速の内容に変える

2018年3月1日

 それでは減価償却を例にとって、古い機械を悠長に何年もかけて減価償却してゆきますと、ほとんど会社の生産に役に立っていないのにその機械の帳簿価額は貸借対象表の上では大きな比重を占めたままになります。

 

 このような鈍重な決算書を最速の内容に変えようとしますと、役に立ってない機械装置の帳簿残高を殆どゼロに引き下げることをしなければなりません。そうすれば貸借対照表の機械装置の部は大きく減額されます。

 

 このことは自社内では可能です。しかしいずれは決算書は社外に公表したり税務署に申告する際に申告書の基礎になるものです。大きく減額された部分の金額は外部へ公表される場合はどうなるのでしょうか。

 

 会計基準では「固定資産の耐用年数や残存価額はその資産の性質、用途、使用状況等に応じて合理的に決定する」と書かれています。更に「技術革新等の機能的原因又は使用による物理的原因等により著しく不合理となった場合等には、耐用年数又は残存価額を修正」することをします。

 

 外部へ公表される決算書には注記表という一種の補足注釈書が作成されます。必ず作成しなければなりません。ここの重要な会計方針や会計方針の変更の項目に、耐用年数や残存価額を変えた事実を記載します。

 

 大事なことは会計には継続性の原則という重要な一般原則があります。どういうことかといいますと、毎期ごとに異なる基準で耐用年数や残存価額を変えることは会計基準を逸脱しますので、勝手な変更ではなく、著しく不合理な場合にのみ変更できるのです。

 

 会計の世界では

・社内での検討資料

・外部へ公表するもの

のうち、前者は殆ど自由ですが、後者は会計基準の制限が入ってきます。しかし、税務からの影響はありません。なぜなら会計は納税とは直接関係しないからです。

 

次回は税務との関連についてお話しします。

第8回 会計と税務は別の世界・・・・鈍重な決算書を最速の内容に変える 2

2018年3月2日

税務では耐用年数が決まっていますので、償却限度額も法律で決められています。このため旧式の機械であっても法定のf減価償却限度額を超えて減価償却計算をすることは出来ません。

 

 それをしますと事業の利益を少なくしたことになり更正されます。そのうえ加算税がかけられます。しかし税務が減価償却の上限を決めているからといって旧式の機械などの帳簿価額を最速にするため減額して、減価償却費を多めに計上することまでも税法は禁じていません。(多めに計上する「行為」は禁じていませんが「多めの部分」には課税をします。税法は行為を規制することはしませんが、課税は厳しく定めています)

 

 したがいまして会計基準で許される範囲の原因がある旧式機械に関しては帳簿価額を減額して実態に合わせば良いのです。

では損益計算書では法定限度以上の減価償却費が計上されていますがこの限度超過額は税務では許されて課税はされないのでしようか。

 

 許されません。きっちりと課税されます。それを許しますと、税金を少なくしたいという動機で多くの減価償却費を計上することがおこなわれてしまいます。

 そこで会計の減価償却費が税務の減価償却限度額をオーバーした分は申告書にて加算することで課税の公平を保つようになっています。

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