特殊税務の話
上のものほど新しい記事となっています。
申告後、税務調査。修正申告。更正の請求を経て不服申立てしたが棄却になった<3>
申立てが認められなかった点は何でしょうか?
裁決書にはこう書かれています。
「審査請求人は相続開始日には刀剣はなかったから刀剣の価額はゼロであると主張するが本人は刀剣15本の価額を1500万円として修正申告している。本人の押印がある遺産分割協議書にも、刀剣15本と記載がある。これらから請求人は修正申告の時点で刀剣の存在を認識していた。更正の請求時に提出された証拠や、審判所の調査でも刀剣がないとの事実は確認できない。従って修正申告によって納付する税額が過大であるとは認められず、本件、更正の請求は「国税通則法23条第1項第1号に規定する更正の請求ができる場合」に該当しない。
ポイント
二つあります。
1、「無いこと」の主張は困難であること。
2、よほど強力な証拠が出ない限り修正申告が上書きされた事実になる。
どうすれば良かったか
・調査官の調査結果リストを吟味することなく、根拠も尋ねないで、慌ててあるいは気おされて、圧に負けたのか、速やかに修正申告書提出の勧奨に応じたのが間違いです。弟さんやお母さんに聞く時間を取らないと間違った修正申告をしてしまいます。
・税務署は直ぐ修正申告書を出しなさい、とは言いません。調査結果を吟味する時間はあるのです。
・人間はイヤなことが目の前に起こったら、早くイヤなことが無くなってほしい、と本能的に思いがちです。いったんゆっくり深呼吸する間(マ)が必要です。間がないと「〇抜け」になりかねません。どんな賢いかたでも慣れない相続税の調査では、よくあることです。権威に弱い国民性であることも自覚してそうならないようにしましょう。
・岸田さんは修正申告に応じてから税理士に相談されています。修正申告される前に税理士に相談したらよかったのです。
・税理士に相談しなくても担当の調査官に納得がゆかない場合は尋ねることです。調査官は話を聞いてくれます。これは事実の確認や解釈などが納得できない時の話です。
・刀剣が有るか,ないかの場合は単純ですから却って一旦修正申告したら覆すことは難しいのです。
申告後、税務調査。修正申告を経て更正の請求をしたが、、<2>
更正の請求の結果
更正の請求はどうなりましたでしょうか。
結果は:「更正をすべき理由がない」という処分通知が来ました。
課税処分がなされましたから、次のステップとして不服申立てができることになります。不服申立てには再調査請求と審査請求の二つがあります。岸田さんは国税不服審判所に審査請求をしました。
審査請求の結果:棄却でした。
ここで言葉の再確認をしましょう。似た用語に却下があります。
両者はどう異なるのでしょうか。
却下:要件から外れている場合、中味を審査しないで門前払いされることになり ます。これが却下です。
例えば、期限遅れや申し立てをする資格がない、申立ての利益がない、など の場合です。
棄却:受理されて審判官が中身を審理した結果、申立ての主張に理由がないので 認められない場合です。
では岸田さんのケースではどのような点が認められなかったのでしょうか。
此の点の掘り下げは次回に致します。
ダメ元でも言うだけは言ってみたが、、、<1>
申告後、税務調査。修正申告したが納得できなかった事例。
税目:相続税
流れ:岸田さんはお父さんが亡くなられたので相続税の申告をしました。
その後、税務調査があり2名の調査官が調査を行った結果、お父さんが刀 剣15本を所有していたのでこの刀剣につき修正申告していただきたい、と
指摘されました。
その指摘に応じて岸田さんは修正申告書を提出しました。
新発見:その後のことですが岸田さんは弟さんから「刀は自宅の金庫の保管して いたが盗難に遇って自宅に刀はないと親父に聞いたぜ。今自宅にある刀は
3本だ。全部、母が保管しているものだ。15本はおかしいぜ。それに1本 100万円との根拠は何だ?」
行動:それを聞いて岸田さんは税理士に相談しました。修正申告に応じ たから更正の請求はできないと思ったからです。税理士は「『更正の請求』 はできます。できないのは『不服申立』です。不服申立は課税当局の処分 があって初めてできるものです。修正申告はご自分の意志でされたもので すから、それに対して不服申立をすることは、ご自身の行為に不服を申し 立てることになり矛盾しますね。でも更正の請求は可能です。」
そこで岸田さんは税理士に依頼して税務署に「更正の請求」を行いました。
参考裁決:令05-06-23裁決を題材に簡潔化しました。
次回予告
無いものは無い、と岸田さんは更正の請求の結果を楽観しています。
どうなりましたでしょうか。
1,「特殊税務」とは何が特殊なのですか?
はじめのご案内
「税務」は普通は申告がスタートです。申告の必要があるかの検討も含め、その先には申告書の作成→税務署などへの提出が基本の流れです。
基本の流れの例外が特殊税務です。
基本の流れと例外・・・「更正の請求」「修正申告」
その後で、税務署の調査があり、申告額の過不足があれば、過納なら、多く納めた部分を返してもらう手続きが生じます。調査にならなくても自分でシマッタ!納め過ぎた!という場合もあるでしょう→「更正の請求」をして取り戻します。
逆に、売上が洩れていたことを申告してから自分で発見した場合や、税務調査で指摘される場合もあります。納税額に不足があるのです→「修正申告」をして追加納付します。
これらの更正の請求、修正申告が「基本の流れ」の外にある特殊税務の2大手続きです。
でも実際は、調査官の説明にその時は納得して修正申告したが、後で再確認してみたら納税洩れではなかったように思われる。こんなことは多いのです。
「不服申立」とは
修正申告を良く納得しないで、早まって行った、こんな場合はどうすれば良いのでしょうか。この時には、更正の請求ができますが、不服申立てはできません。
なぜでしょうか。修正申告は自分が納得して行った行為ですからその行為に対して不服申し立てをすることは矛盾になります。課税当局の処分に対しては不服申立てができます。ここは誤りやすい点です。
このように不服申立ては税務署の処分があってから登場する手続きです。では税務署の処分とは典型的なのが「更正」です。税務調査で100万円不足が指摘された場合、ハイ分かりましたと修正申告するのでなく、言い分があって対立した場合、税務署は更正処分をすることができます。このような時に用いるのが「不服申立」です。
不服申立には二つある:再調査の請求か、審査請求か
両者の違いは
再調査の請求→処分をした税務署に対し行う
審査請求→国税不服審判所に対して行う
以上のように「更正の請求」「修正申告」「再調査の請求」「審査請求」が特殊税務の柱です。もちろんその前段階での調査の立ち合い段階での税務代理も含まれます。
以後は実際の実例でご案内させていただきます。