Try for you

木村栄昌

冬の時代を笑いで乗切るために<短編物語>読むだけで税や会計の生きた知識が不思議に身に付く

<短編物語>第10話 国境を越える若者たち その1

ご案内

今回は概要のみお知らせします。

登場人物と背景

 憲治はパリで絵本専門の小さな出版社を運営している。絵本になる画材は日本の応募者が送ってくれる。過去に、しばらくアメリカのシアトルで生活していたが、米国(白人)女性からの有色人種である自分に対しての差別の目や態度が彼のストレスになっていた。それ以前のモンタナの田舎では感じなかったのだが、、他方、米国男性は、おおらかで親切で、ナイスガイばかりであった。男女を合わせるとなんとなく気持ちのバランスが保たれていたので国替えまでは考えなかった。たまたまパリに打合せに来た時、混んだ地下鉄に足の悪いインド人の老人が乗車してきた。そのとき座席の若いフランス人男性達が競うように席を譲ろうとするのをみて、感じることがあり、その後、米国からパリに転居した。日本の両親に万一の場合、相続税がどうなるかが心配の種である。大した資産もない両親であるが、世界には相続税がない国もある中で、母国の相続税が過酷であることは周囲の人々から耳にしている。

 勝矢はストラスブールのデザイン学校(ENSAS)で、日本の企業を退社して勉強中である。ストラスブール駅発、パリ東駅行きのTGV(フランス高速列車)に乗り遅れた憲治とたまたま社内で知り合った。

 は憲治の弟である。兄よりパリが長い。シスラー(彫金師)の工房で徒弟見習中である。

 3人に共通していることは、このまま日本にいても先が描けないということであった。余裕のない生活から抜け出せる見込みなどなかった。治安もどんどん悪くなる一方である。国は世界一の借金王で通貨は安くなるばかりである。借金国なのにさらに借金を重ねて、補助金を増額し、責任ある積極財政と謳う田舎芝居には息が詰まるような感覚になってゆく。もうすでに青信号で道路を渡る子供や老人が轢逃げに遇うのが常態になっている。そう遠くないうちに夜間の一人歩きもできなくなるだろう。まともな日本語も話せない世代が増えてゆく。犯罪者は不起訴になるのが当たり前になっている。刑罰も緩いままである。

 結局、敗戦国なのだ。じわじわと戦勝国に侵食されてゆくのが、これまでは隠されていただけである。これからは隠しようがなく実態があからさまに出てくるだろう。やってられん、というところである。

 敗戦国の悪い教育のツケも目立ってきた。優秀なモノづくりの伝統を受け継ぐことができるのだろうか。

 努力、希望、忍耐 

 特に資産もなく、この3つだけが、仕事を覚え、道を切り拓いて行く彼らの武器である。母国への思いと明日への不安のはざまにいる3人である。

  国境を越えても税の問題が追いかけてくる。居住者・非居住者・租税条約・(相続税)非居住制限納税義務者がかかわってくる。